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水族館
裏側に潜入
第784回 2005年6月5日
この春、東京・品川に新しい水族館「品川アクアスタジアム」がオープンしました。これで、品川だけでも水族館は2軒め。実は、
日本は世界で一番水族館の多い国
なのです。最近、大型水槽やトンネル水槽などかなり進化した
水族館のウラ側を、「目がテン!」が科学の目で覗いちゃいました
。
水族館の海水は人工海水なのでしょうか?それとも本物の海水なのでしょうか?そこで矢野さんが、「品川アクアスタジアム」の海水のルートを追跡することにしました。
まず、水族館の裏に大型トラックがやってきました。どうやら
どこからか海水を持ってきている
ようです。トラックについていってみると、止まった先は
東京湾の芝浦ふ頭
。ということは、水族館の海水は芝浦ふ頭から汲んでいる…と思ったら、実は、そのトラックは
貨物船から海水を受け取っていました
。なんと、もっと遠いところから、この海水は運ばれて来ているようなのです。さらに貨物船の追跡を続けていくと、着いた先は
八丈島付近の海
。実は、
品川アクアスタジアムの海水は、品川からおよそ250キロも離れた海から運んできていた
のです。
でもどうして、こんなに遠くの海水を使うのでしょうか?そこで、
八丈島沖の海水と東京湾の海水をそれぞれ水槽に入れて、2m先の金魚が見えるかどうか実験してみました
。すると、
東京湾の海水は50cm先の金魚しか見えなかった
のに対して、
八丈島の海水は2m離れていてもくっきり見ることができた
のです。なんと
八丈島の海水は、不純物がほとんどない水道水と同じくらいの透明度だった
のです。
どうしてこんなに八丈島沖の海水は、きれいなのでしょう?それは、この付近を流れている
日本海流(黒潮)
が、陸地から離れた太平洋の沖合を流れているため、
陸地からプランクトンのエサになるリンや窒素が流れ込まず、濁りの原因となるプランクトンが繁殖できないから
なのです。
水族館の海水は、天然の成分が豊富で透明度が高くないといけないので、わざわざ遠くの海から運んできているのだ!
最近の水族館で目を引くのは、やはり
巨大水槽
。しかし、
大きい水槽であればあるほど、水槽には大きな水の圧力がかかり壊れやすくなります
。一体、巨大水槽は何で出来ているのでしょう?
実は、巨大水槽の素材は
アクリル樹脂
。アクリル樹脂とは、石油から作られるプラスチックの一種です。
巨大水槽の壁は、アクリル板を何枚も重ねていき、大きな水圧に耐えられる極厚アクリル板でできている
のです。しかもアクリル板は、
重ねて厚くしても何にも無いみたいに透明
。ギネスブックにも載った、沖縄の美ら海水族館の巨大水槽の厚さは、なんと60センチもあるのだそうです。
でも、なぜガラスでは巨大水槽は作られないのでしょうか?実は
ガラスの場合、厚くしていくと次第に緑がかって見えてしまう
からなのです。その理由は、ガラスの中を光が通るとき、
ガラスの中に混じっている鉄分などの不純物が、緑色の波長の光を散乱させてしまうため、ガラスは緑色に見えてしまう
のです。
一方、アクリルは不純物がないため光がそのまま通ることができます。
また、
比較的低い温度で加工できる
のもアクリルの特徴。ガラスを変形させるには720℃もの高温が必要なのですが、アクリルを変形させるには120℃の温度で大丈夫なのです。つまり、
円形やトンネル型などの水槽が可能になったのもアクリルのおかげ
なのです。
しかし優れものアクリルにも弱点があり、
アクリルはガラスに比べて傷がつきやすいので、爪や牙で壁に傷をつけるアザラシやセイウチなどの水槽にはアクリルではなく、固い強化ガラスが使われることが多い
そうなのです。
最近、水族館に巨大な水槽や様々な形の水槽が登場しだしたのは、アクリル樹脂のおかげだった!
水族館って、
水槽の中は明るいのに外の通路は暗い
ですよね。一体どうしてでしょうか?その理由に、矢野さんが水槽の中を掃除しているときに気が付きました。実は、
水槽の中から外を見ると、壁に自分の姿が映っていて、外のお客さんの姿はほとんど見えなかった
のです。一方、お客さん側からは水槽の中ははっきり見えています。
これは、通路側よりも水槽側を明るくすることで、
透過光と呼ばれる光が水槽の中から通路側に抜け、外からは中の魚がよく見える
ようになります。また、
水槽の中からは、反射光と呼ばれる光が魚自身の姿を反射させ、中からは外のお客の姿を見えづらくなる
のです。水族館の照明は、魚たちには自分たちの姿しか見せずに、外のお客さんには魚たちがよく見えるように工夫されていたのです。