実はお酒!万能
みりん
第785回 2005年6月12日
肉じゃが
や
魚の煮付け、ブリの照り焼き
など
日本料理には欠かせないみりん
。しかし、今一つみりんの効果ってわかりませんよね。そこで、今回はみりんを徹底解明。実は
みりんは一人何役もこなす魔法の調味料
だったのです。
番組が主婦の皆さんに調査したところ、みりんを使う代表的な料理といえば、
肉じゃが
という答えが1番でした。しかしその理由まで聞いてみると、主婦の皆さんも、
なぜ肉じゃがにみりんを入れるのかよく分かっていなかった
のです。
そこで老舗料理屋の方に伺ったところ、なんと
肉じゃがにみりんを使うと荷崩れしない
というのです。実際に、みりんを使った肉じゃがとみりんを使わなかった肉じゃがを作って比べてみると、確かに
みりんを使った方のジャガイモは角が立っていて煮崩れしておらず、みりんを使わなかった方は煮崩れして角が丸くなっていた
のです。
しかし、
なぜみりんを入れると煮崩れしないのでしょうか?
その秘密は、
みりんに含まれるアルコール
にありました。ジャガイモなどの植物の細胞壁は
ペクチン
という物質でできています。この
ペクチンは熱に弱く長時間熱が加わると溶けてしまう
ため、ジャガイモが煮崩れを起こしてしまうのです。ところが、
アルコールがペクチンに浸透するとペクチン同士の結びつきが強くなり、熱が加わっても溶けにくくなる
のです。つまり、肉じゃがにみりんを使う理由はアルコールによる煮崩れ防止のためだったのです。
そもそも、
みりんはどうやって造られるのでしょう
。料理をなさる方はご存知だと思いますが、
みりんはれっきとしたお酒
。造っている場所も、お酒顔負けの立派な酒蔵でした。
みりん造りの特徴は、
原料にもち米を使う
こと。その理由は、甘さを出すためなのです。もち米のデンプンは100%
アミロペクチン
という物質できており、日本酒などで使われるうるちは、75%がアミロペクチンで残りの25%は
アミロース
というデンプンで出来ています。
実は、この
2種類のデンプンのうちアミロペクチンの方が糖に分解されやすい
のです。つまり、
みりんはアミロペクチンが多く含まれているもち米を使うので、分解されて出てくる糖が多く、他のお酒よりも甘くなる
のです。
みりん造りのもう一つの特徴は、糖をアルコール発酵させるのではなく
焼酎を入れる
こと。みりん造りでは甘みを残すため、せっかく出来た
糖を酵母がアルコールに変えないように焼酎を入れて酵母の働きを抑えている
のです。
こうやって造られたみりんには、分かっているだけでも
9種類の糖が含まれています
。その中でもコージビオースという糖は1g90万円、ニゲロースという糖は1g120万円するのです。
みりんはもち米から作る、れっきとしたお酒だった。
ただしアルコール分は、焼酎を加えて作られていた!
調べてみると、
一人当たりのみりん消費量は、都市部を抑えて香川県が1位
。これは、
うどんのつゆにみりんが使われている
からなのです。
実は、うどんのつゆには大量にカツオ節などの魚の節を入れるので、魚の生臭いにおいがします。ところが、
みりんを入れると魚の生臭さが消えてしまう
のです。分析してみると、みりんを入れる前と入れた後では、約半分にまで魚の臭み成分は減っていました。
その理由は、
みりんに含まれる9種類の糖が魚のアミノ酸と結合しメラノイジンという物質を生む
から。そのメラノイジンが魚の臭み成分を臭みがしないものに変えてしまっていたのです。
また、もう一つみりんを使う料理をいえば
ブリの照り焼き
。しかし、
なぜみりんを入れるとテリがでるのでしょうか?
そこで、みりんのテリとツヤの正体を見る実験。表面がザラザラしたタイルを用意し、そこに水とみりんを塗ります。そして30分間乾燥機に入れてみると、
水を塗ったタイルは水分が蒸発し元のザラザラの状態に戻っていましたが、なんとみりんを塗ったタイルは表面に水分が残っていてつるつるのままだった
のです。
実は、その原因はみりんに含まれている9種類の糖。
糖は水分子と結合しやすく、みりんの色々な種類の糖が水と結合しているので、保水効果が高まっている
そうなのです。まさにみりんは、目にも欠かせない隠し味だったのです。
みりんは、煮崩れ防止、消臭効果、テリ・ツヤを出すなど一つで何役もこなす、すごい調味料だった!