世界最大の
コスモス
!
第802回 2005年10月16日
日本の秋を彩る風物詩
といえば、
コスモス
。別名、
秋桜(アキザクラ)
とも言います。この季節、公園や道ばたでも見られるうす紅色の可憐な花なのに、意外や
コスモスの花をちゃんと絵に描ける人は少ない
のです。
コスモスの花を詳しく見てみると、一般的なコスモスの
花びらの数は全部で8枚
。ちなみに春に咲くサクラの花びらは5枚です。さらに特徴的なのは、
花びらの先にギザギザの切れ込みがある
こと。そして、
花の中央には黄色いつぶつぶが集まった部分がある
のです。しかし、この花の中央にある黄色いつぶつぶは、一体何なのでしょう?
そこで
目がテン恒例、数えてみよう
のコーナー!矢野さんが目をこすりつつ作業をすること20分、一輪の花には103個の黄色い粒があることがわかりました。
なんと、この
小さな粒の一つ一つこそがコスモスの花だった
のです。この花は
「筒状花」(とうじょうか)
といって、ちゃんと5枚の花びらやめしべ・おしべを持っていて、受粉できるようになっています。一方、ピンク色をした花びらと思っていた部分も、実は
「舌状花」(せつじょうか)
というめしべやおしべがない花。
この舌状花は、もともと筒状花だったものが、大きく伸びてピンク色に進化した
ものなのだそうです。筒状花の5枚の花びらが進化した名残で、コスモスの舌状花には、切れ込みがあるのです。
一つの大きな花に見えるコスモスは、たくさんの花が集まってできた「頭状花序」と呼ばれる
ものだったのです。
では、なぜコスモスは、わざわざ筒状花を舌状花に発達させたのでしょうか?その理由は、コスモスの
花粉を運んでくれるハチによく見えるように
というのです。そこで、ハチと同じように、
紫外線の波長あたりがよく見えるカメラで色々な花を見てみると、確かにコスモスが特に目立って見えました
。さらに、
ピンク色の舌状花の部分をとってしまって、筒状花の部分だけにしてみると、今度は全く見えなくなってしまった
のです。つまり、コスモスは花粉を運んでくれる虫に強くアピールして生き残るために、ピンク色の筒状花を発達させていたのです。
コスモスの花は、たくさんの小さな花(筒状花と舌状花)が集まったものだった!さらにピンクの色の舌状花は、生き残るための虫に対するアピールだった!
さらに、
コスモスは他の植物に比べて葉がすごく細い
のです。同じキク科のキクと比べてみても一目瞭然。そのため、コスモスは風の影響を受けにくく台風が来ても倒れないんだとか。
そこで実際に、
コスモスとキクを台車に乗せて同じ強さの風を当て、どこまで動くかを計測した
ところ、キクが8m12cmも飛ばされたのに対して、コスモスはわずかに3m94cmでした。確かに、
葉の細いコスモスの方が風に飛ばされにくかった
のです。
さらに、
葉1枚の表面積が小さいコスモスは、水分が蒸発していく気孔の数が少なく、乾燥にも強い
ことがわかりました。しかし、なぜコスモスの葉は、そんなに風や乾燥に強いつくりになっているのでしょうか?
実はコスモスの
原産地は中南米のメキシコ
。山脈にはさまれた平均標高1700mの高原で、メキシコ湾側から吹く風速10mの乾燥した強風にさらされる土地だったのです。つまり、
コスモスは葉を細く小さくすることで、原産地メキシコの乾燥と強風から身を守っていた
のです。
なんと、
日本には世界一大きなコスモスが咲いている
というのです。その高さ、なんと
3m48cm!
花も通常の大きさの1.5倍で、直径12cmという驚くべきサイズ。実は、
ギネスブックにも掲載されている
のだそうです。しかし、一体どういう風に育てたら、こんなに大きく成長するのでしょうか?
そこで、育てている方に大きく育てる方法を聞いてみると、なんと
「普通に育てること」
だと言うのです。唯一、手を加えているのは、横に伸びる茎を落とすことと、まっすぐ伸びるように添え木をしていることなのだとか。
実はコスモスは、先ほど紹介したように
メキシコのやせた土壌が原産地なので、日本の豊かな土壌で育てると、とてつもなく大きく育つ花だった
のです。
コスモスはメキシコ原産。乾燥と強風から身を守るために葉が細くなった。しかし、日本の豊かな環境で普通に育てるととても大きく成長するのだ!