オオカミ
に学ぶ犬の謎
第813回 2006年1月8日
2006年の干支は戌(いぬ)
。最近のペットブームでは、人間同様にオシャレやエクササイズをするワンちゃん達もよく見られます。しかし、
犬を飼う方達にも、色々な悩みがある
のだとか。
実は、その
犬達の問題行動を解決するには、ある生き物を知ると良い
というのです。その生き物とは…犬のご先祖様、
オオカミ
。そこで2006年1回目は、今年の干支・犬のご先祖様、オオカミを科学しました。
まず、犬を飼っている方に多い悩みが
「家の中でオシッコしちゃう」
ということ。
なぜ犬はオシッコを色々なところにしてしまう
のでしょう?
そこで矢野さんが、北海道のオオカミを飼育・研究する施設を訪ねて、じっくりオオカミを観察してみました。すると、なんと
1匹のオスオオカミが犬と同じように足をあげて木にオシッコすることを発見
。さらによく観察してみると、どうやら
足をあげてオシッコをするのは、「パック」と呼ばれる群れのリーダーだけ
なのです。一方、
残りのオオカミは、みんな座ってオシッコ
をしていました。これは、一体どういうことなのでしょう?
実は、オオカミのリーダーには縄張りを主張する役目があります。実は、オオカミや犬はオシッコするときに、オシッコだけでなく尾の付け根あたりにある肛門の中の
肛門腺という所から臭いの強い分泌液を出している
のです。リーダーだけ足をあげてオシッコするのは、高い位置にある木などにオシッコとこの分泌液をかけ、高らかに縄張りを主張しているのです。
飼い犬が足を上げてオシッコをするのは、
飼い主を除いて自分が群れのリーダーだと思っている
から。そのため、マーキングの本能が満たされないと、家の中でオシッコをしてしまうので、
他の人に迷惑のかからない家の外で、その本能を満たしてやることが重要
だったのです。
犬がオシッコをするのは、自分が縄張りを主張するべき群れのリーダーだと思い込んでいるためだった!
続いて、犬を飼っている人に多いのが
「犬が言うことを聞かない」
という悩み。実は、
飼い主が飼い犬にどう思われているか、犬の尾を見ると分かる
というのです。一体、どういうことなのでしょう?
矢野さんがオオカミを観察していると、オオカミの群れの中に尾を上げているオオカミと、尾を下げているオオカミがいることを発見しました。実は、
尾を上げているオオカミは、尾を下げているオオカミよりも群れの中で順位が上
なのです。というのも、
尾を下げるということは肛門腺から出る自分の臭いを抑え、服従をあらわす行動になる
のだそうなのです。
そこで、ペットショップで
「犬が店員さんをどう思っているか?」
検証実験。すると新人の店員さんが犬を叱った場合、その犬は尾をプラプラさせて言うことを全くききませんでした。しかし、ベテランの店長さんが叱ると、犬は尾をピッタリ下につけておとなしくなってしまったのです。つまり、
犬は新人の店員さんを同等かそれ以下に見ていて、店長さんを自分より上位と見ていた
のです。
では、もしあなたが飼い犬を叱っても犬が尾をあげたままだったら、どうしたらいいのでしょうか?実は
オオカミは、他のオオカミの上に乗って自分が上位であることをアピールするマウンティングという行動をとります
。これと同じように犬を上から押さえつけることで、飼い主の方が上位だと教えることができるそうです。さらにオオカミは、
リーダーが他のオスの鼻面を噛んで上下関係をアピールします
。実はこの性質を利用して、
鼻面をつかむことでムダ吠えなどをやめさせることが出来る
のだそうです。これを
「マズルコントロール」
と言います。
犬が尾を下げている時は服従している証拠。これには肛門線から出る自分の匂いを隠す意味があった!
そして、さらに多かった悩みが
「家の中を爪でガリガリしてしまう」
ということ。なぜ犬はこんな行動をとるのでしょう?
そこで、オオカミたちが普段過ごしている小屋の中を観察していると、
オオカミもガリガリ穴を掘り始めた
のです。実は、これは
オオカミの寝床
だったのです。なんとオオカミは、昼間掘った穴に入って眠ります。それは、
この穴が風よけになり体温を逃がしにくくする効果があるから
なのです。つまりオオカミが穴を掘って眠るのは寒さ対策の知恵だったのです。
実は、犬がガリガリしてしまうのはこの習性のなごり。そういう理由から、犬が眠る場所に何か他に柔らかく掘りやすいものを用意してやれば、犬はそこを掘って眠るので、家の中をガリガリすることはなくなるそうです。