発見 踊る
テントウムシ
第875回 2007年3月25日
春は野原に草花が咲き乱れ、生き物たちが元気に活動を始める季節。そこで今回の目がテンは、春を代表する昆虫「
テントウムシ
」を科学しました。
テントウムシ科の仲間は、世界には約5000種、日本には約180種
もいます。そしてテントウムシの名前には、背中の水玉模様を作る“星の数”が関係しているものが多く、星が2つのフタホシテントウから始まり、日本で一番多いものは、なんとニジュウヤホシテントウという、その名の通り28個もの星があるテントウムシがいるのです。
ちなみに、ナミテントウという種類は、両親の星の模様が重なった部分がそのまま子供に受け継がれるため、星の数は決まっていません。
さて、
春によく見かけるテントウムシは、冬の間はどこにいるのでしょう?
そこで矢野さんが2月の寒い日にテントウムシを公園で探してみました。昆虫写真家の方にポイントを教わりながら捜索を続けると、なんと木の名前が書かれた
看板の裏で、身を寄せ合っている集団のテントウムシを発見
したのです。
ところが、看板の裏で発見したテントウムシは、全然動いていません。しかし、しばらく太陽の光を当ててみると、テントウムシは動き出しました。どうやら
テントウムシの活動には温度がかかわっている
ようなのです。
そこで、
テントウムシは何度で活動するのかを実験で見極めることに
。まずは、テントウムシを入れた容器の周りに氷を敷き温度を下げていきます。すると、9℃を下回ったあたりでテントウムシたちは動かなくなりました。
続いて、お湯を入れて温度を上げていくと、25℃あたりで動きが活発になってきましたが、35℃に近づくと再び動かなくなりました。実験の結果、
テントウムシはおよそ10℃以上から35℃以下なら活動できることがわかりました
。
実はテントウムシは、暑い夏の7月から9月の間あたりと、寒い冬の1月から3月あたりは、
体温を上げ下げして無駄なエネルギーを消耗しないように「休眠」を取る性質を持っていたのです
。
テントウムシは、暑い夏と寒い冬の時期には無駄なエネルギーを消耗しないように休眠していた!これがテントウムシの生きる知恵!
皆さんご存知、ウエディングソングの定番「てんとう虫のサンバ」。なんと、タイトルの通り、テントウムシは本当にサンバを踊るというのです。
そこで、
休眠を終えるこの時期、サンバを踊るテントウムシが見られる
というので、早速、矢野さんは野原で捜索することに。そして、ついに、本当にサンバのように揺れ動くテントウムシを発見したのです。
実はこれ、テントウムシの
交尾行動
。よく見ると
サンバを踊っていたのはオスで、その下にメスのテントウムシがいました
。サンバに見えたのはオスのテントウムシが行うボディーシェイキングという特殊な行動だったのです。
メスの生殖口にオスが交尾器を挿入し、体を左右に動かしながら精子を受け渡すこの行動は、一回当たり2時間、一日に何度も繰り返して行われる次世代を残すための大切な行動なのです。
オスのテントウムシがサンバを踊っているように見えるのは次世代へ子孫を残す大切な愛の営み、交尾行動だった!
テントウムシを観察中、
どのテントウムシを見ても上へ上へと登っていく
ことに気が付いた矢野さん。
これは一体なぜでしょう?
そこで、
一本の透明な筒にテントウムシを入れてみました
。すると、やはりテントウムシは上へと登っていきました。途中で、
筒の上下をひっくり返しても結果は同じで、方向転換をして上に登っていきます
。上を見てみると天井の蛍光灯の光がありました。そこで
部屋を暗闇にして下からライトを当てると、テントウムシはライトに向かって下へと降りてきました
。
実は
走光性と呼ばれる光に向って進む本能が、テントウムシの名前の由来
。
テントウムシのテントウはお天道様、つまり太陽に向かって上へ上へと登っていくその姿から名付けられた
そうです。
それではテントウムシは、一体どのぐらいの高さまで登ることができるのか?
高さ21メートルものバンジージャンプ台を使って、テントウムシを透明の長い筒に入れてどこまで登るのかという大実験
を開始。
正午からスタートし、順調に登っていくテントウムシ。しかし、日没とともに動きが止まってしまいました。そこで太陽の代わりに上からライトを照らし、筒を使い捨てカイロで温めてテントウムシをバックアップ。そして
実験開始から10時間後、ついにテントウムシは最上部に到着
し、そこから飛び立っていきました。