900回記念手作り
農園
第884回 2007年5月27日
今年の秋で900回を迎える目がテン。この記念すべき日をお祝いするため今年1月、沖縄の
目がテン農園
でお赤飯を科学の力で一から作ろうという長期企画がスタートしました。果たして現在農園はどうなっているのでしょう?
前回、荒れ地の開墾からスタートした目がテン農園。畑作りをし、そこへアズキの種子をまきました。1週間後、芽を出したアズキは成長し、3月始めに黄色い花が咲いた後、小さなさやができていました。しかし4月中旬、矢野さんが畑に行ってみると、アズキは成長しておらず、さやの中の実も小さいままだったのです。なんとアズキは、花の咲く時期に最高気温が18℃以下の日が何日か続くと、受粉できず上手く実が育たなくなる
低温障害
という病気にかかっていたのです。しかし、幸いにも沖縄は温暖な気候のため、
今から再びアズキを撒いても収穫できる
というのです。目がテン農園の再スタートです。
米作りのプロ、川上さんに協力していただき、もち米作りのために目がテン農園の半分を水田にしていきます。トラクターで土を耕した後、水田の縁の土を盛り上げ、畔(あぜ)と呼ばれる水を溜めるための囲いを作りました。続いては種もみ選びです。川上さんに、沖縄の気候に適したヒヨクモチと言う種類の種もみを分けて頂き、早速田んぼに蒔こうとした矢野さんですが、なぜかポリタンクを渡されました。すると川上さんは近所の海岸で汲んだ
海水をタライに移し、卵を入れました
。そこに塩を入れかき混ぜ始め、
卵が浮いてくると今度は種もみを塩水の中へ
。
すると浮かぶ種もみと沈む種もみに分かれた
のです。その違いを確かめるため、それぞれ皮を剥いてみると、浮かんだ種もみは中身が黄色っぽく小さいのに対し、
沈んだ種もみは中身が白くて大きかった
のです。白いのは
胚乳
と呼ばれる成長のための栄養を蓄えている部分で、これが大きいとよく育つ種もみなのです。これは「
塩水選
」と言って塩水の濃度で浮き沈みを見分ける伝統的な方法だそうです。選ばれた種もみを水に浸けておくと、5日後に無事芽を出しました。これでいよいよ種まきができます。
続いては種まきです。日本では田植えを行う5月はまだ気温が低いので、
ビニールハウスなどの温かい場所で苗箱を使い、苗まで育てる
必要があります。苗箱に土を敷き、箱一面に種を均等に撒いていた後、保温のために苗箱を重ねてさらに上からビニールシートをかけ、これを2晩置いてまた一枚ずつ広げます。なぜなら、2晩もすればこの重ねた
苗箱が芽の力でひっくり返ってしまう
からだそうです。
そこで、もち米の
発芽の力
を試す実験です。
200箱の苗箱を用意し、25段の高さに積み上げて、現・世界記録を超える270Lのバーベルが持ち上がるか挑戦
してみました。すると、
6日後にはバーベルが見事に持ち上がり、世界新記録達成
です。一番盛り上がった部分はなんと13.5cmでした。
さて、目がテン農園の水田に植える苗も成長し、高さは15cmと田植えに最適な長さになりました。種もみ選びから3週間、いよいよ田植えの準備ができました。
水田に水を入れ、いよいよ水田の完成と思いきや、川上さんは
再びトラクターで耕し始めました
。土を混ぜないと水が染みこんで無くなってしまうというのです。そこで、別の水田を使い、
水を満タンにして耕さないとどうなるか観察
してみました。すると水が次第に減っていき2日後にはほとんどもれて無くなってしまったのです。水田の中で一体何が起きているのでしょうか?田んぼの土が入ったビーカーに水を入れて、棒を使ってかき混ぜてみると、10分後、
土に2つの層が出来ました
。つまり、
水が入った状態で土を耕すと、同じ大きさの土の粒が集まって層を作るので、土の目が詰まり水がもれにくくなる
のです。
水田をトラクターで耕す“代かき”という作業は、水田から水をもれないようにするために、土の目を詰める欠かせない作業だった!
いよいよ水田作りも終盤。今度は苗が植えやすいように水田を平らにならしていきます。仕上げに畔を補強してようやく田植えの準備ができました。
実は
水田には色々なメリットがあります
。水によって
イネが寒さや風から守られ、病原菌も繁殖しにくくなり、肥料の効果も大きくなります
。これだけのメリットがあれば、
他の作物も水田で育てれば良いのでは?
ということで、コムギの苗を水田に植えてみました。しかし
1週間後、コムギの苗は枯れてしまいました
。そもそもコムギは畑に植える作物で、畑の土の中にある豊富な酸素を使って呼吸していたのです。では
なぜイネは大丈夫なのでしょうか?
根の断面を見ると
イネの根はスカスカ
で、
空気の通り道
が放射状に広がっているのです。イネは、
葉から取り込んだ空気を根に送る
ことで酸素が少ない水田の土の中でも根が枯れないのです。
イネは、土に酸素がなくても葉から取り込んだ酸素を根に送るので、水田に適した作物だったのだ!
さて、いよいよ田植えです。前回手伝ってくれた子供たちに、佐藤アナも駆けつけてくれました。もち米の苗の他に赤米という古代米の苗も用意。この苗がつける赤い穂を利用して水田に「900」という文字を作る計画です。そして残り半分の農地には黒ゴマとアズキの種を撒いていきます。再び動き出した目がテン農園。9月にはちゃんと全ての作物が収獲できるはずです。