春
キャベツ
驚き保存法
第883回 2007年5月20日
春から初夏にかけては野菜が美味しい季節ですが、
キャベツ
も今が美味しい時期。そこで今回はキャベツのおいしさの秘密に迫ります。
早速矢野さんが太田市場でキャベツを探したところ、冬にとれる平べったい形の「
寒玉
」と、春にとれるまん丸の
春キャベツ
という2種類のキャベツがありました。この2つの
葉の数を数えてみると、寒玉は54枚
。
一方の春キャベツは39枚
でした。
中がびっちりと詰まった寒玉に比べ、枚数が少ない春キャベツの葉は薄く、フワフワしています。つまり、サラダなど生で食べるのに最適な、
やわらかい食感の春キャベツが出回るこの季節が、キャベツが一年で最も美味しい
と言われているのです。一方寒玉は、ロールキャベツや、歯ごたえを楽しむ千切りに適しています。実はこの二つは品種が違い、キャベツにはこの他にも様々な種類があります。
ところで、キャベツの葉はどうして丸まっているのでしょうか?そもそもキャベツは地面に這う様に広がった「
外葉
」と、その内側の丸まった「
結球
」という部分に分けられます。
私たちはこの結球の部分だけを切り取って食べています
。最初に生えた葉は外に広がり外葉になり、そして
一枚が丸く巻くと、新しい葉は広がることが出来ないため、折り重なって丸くなっていき、茎をとじ込めるように結球を作る
のです。
さて、キャベツの葉を全部取ると、
中心に残った茎の先端には芽がありました
。これを放っておくとキャベツ自身が大きくなり。その後花になると言います。
何重もの葉に囲まれた状態でどうやって花を咲かせるのでしょうか?
そこでキャベツ畑にカメラを設置し、収穫せずに観察し続けました。すると、
黄色い花が結球を突き破って現れる
という豪快な咲き方をしたのです。しかし何故
花の芽は厳重に葉に包まれているのでしょうか?
実は、キャベツの真ん中にある、
成長点となる芽を温度差から保護している
と考えられているからなのです。
ならば、
キャベツがどこまで気温の変化に耐えられるのか
実験です。まずはキャベツの芯をくり抜き、その穴に氷を入れ、芯でしっかりフタをして、
花の芽と同じ位置に氷をセットし、温度95℃のサウナへ入れてみました
。20分後、キャベツを取り出し中の氷の様子を見てみると、なんと95℃の温度でも
氷はほとんど溶けずに残っていました
。今度は水を入れた風船をキャベツの中にセットし、
マイナス21℃の冷凍庫に入れます
。そして45分後、
キャベツの中の風船は、なんと全く凍っておらず水のまま
でした。キャベツはマイナス21℃から95℃の気温差およそ120℃でも中心部の温度を変えない、凄まじい
断熱力
を持っていました。
もともとキャベツの原種は葉が開いていましたが、原産地である地中海地域の温度差が激しかったので、これに対抗し突然変異で丸まり、その結果、温度変化に強い性質になったといわれています。
キャベツは中心の芽を温度変化から守るために、折り重なった葉で空気の層を作り、優れた断熱構造を生み出しているのだ!
さて、よくスーパーで見る半分に切られた半玉キャベツ。しかしこの
便利な半玉キャベツには意外な落とし穴があったのです
。そこでひと玉と、この半玉キャベツを常温のまま放置して、それぞれどんな変化が起こるか調べました。3日後、
半玉キャベツは切り口が黒ずみカビてしまいました
。一方
ひと玉キャベツ
も表面は黄色く変色していましたが、一枚葉を剥してみると、まだまだフレッシュでさらに
中は全く痛んでいる様子もありません
でした。
野菜が
元気な状態はそれぞれの細胞がしっかり呼吸をしている時
です。痛むと、細胞が死に呼吸量が減ります。そこで、
二酸化炭素の濃度を測ることができる装置で呼吸量を測定
してみました。結果、半玉のキャベツに比べ、ひと玉キャベツの呼吸量はほとんど減っていませんでした。つまり痛みが少なく、見た目の通り長持ちしていたのです。
切り口の大きい半玉キャベツは雑菌が入り痛みやすい
上に、半分に切ることで芽を傷つけ生命力も衰えさせていたのです。ということで、
キャベツを長持ちさせる保存方法は、玉を半分に切らず、使いたい分だけ葉を一枚一枚外側からむいていき、残った玉はラップをして冷蔵庫へ入れる
と、一ヶ月は痛まないそうです。このように使うと最後まで元気なキャベツ。その証拠にある実験をしてみました。園芸用の液体肥料に葉を全て取ったキャベツの芯だけ浸けて、10日間置いたところ、芯から再びキャベツが育ちました。その後もおよそ1年かけて、再び、ひと玉収獲できるまでになったのです。
キャベツを長期保存するには、玉を切らずに、使う分だけ葉を一枚一枚外側からはがしていき、残りはラップに包み冷蔵庫へ入れるべし!
ところで、
キャベツといえば甘い
ですよね。実際に糖度計で測っても
葉野菜の中で一番甘い
のです。この甘さに目をつけた矢野さんがキャベツと関係の深いシュークリームを作ることに。実はシュークリームの「シュー」とはフランス語でキャベツという意味。キャベツと形が似ていることから名付けられました。そこで、
一切砂糖を使わずキャベツの甘さだけで中のクリームを作りました
。茹でたキャベツに牛乳とコンスターチを加え、正真正銘のシュークリームが完成。糖度はブドウ、メロンなどと同じ18度もありました。しかし、スタジオで食べた所さんには、思わず笑って伏せてしまうほどの大不評。
甘く感じられなかった原因は、甘味と共にキャベツの香りも凝縮されて、青臭さが出てしまったためのようです。