アルミ
で(秘)人間乾電池
第907回 2007年11月11日
1807年に金よりも高かったという美しい金属
アルミニウム
が発見されて、今年は200周年です。今回は、今では私達にとても身近な金属となったアルミニウムを科学します。
矢野さんはアルミニウムの
作り方には大きな特徴がある
ということを聞き、日本で唯一アルミニウムを作っている日本軽金属の清水工場を訪ねました。そこで見たものは、赤土の山。実は、これがアルミニウムの原料である
ボーキサイト
でした。
このボーキサイトは
アルミニウムが約25%含まれている土のような鉱石
です。日本では採れず、全て海外から輸入されています。アルミを取り出すにはまず苛性ソーダと混ぜ加熱します。次に不純物を取り除くため超巨大な釜に入れて1200℃で焼きあげていきます。しかしまだこの状態は酸化アルミニウムと呼び、ここからまたアルミを取り出す必要があります。そして、アルミを取り出す工場へ移ると、なんと
時計を見ると時間が止まっていた
のです!大きな時計で試してもやはり秒針は止まってしまいました。実は、アルミニウムを作るときには55,000アンペアという
非常に大きな電流を流しているので、時計を止めるほどの強い磁場が発生していた
のです。その磁場を生み出しているのが
電解炉
です。この電解炉に酸化アルミニウムを投入し、大量の電気を流すと、酸化アルミニウムは酸素と切り離されアルミニウムが出来るのです。そしてようやく私達の見慣れた銀色になります。このように最後は大量の電気を使って不純物を取り除くためアルミニウムは
「電気の缶詰」
と呼ばれるほど変わった金属だったのです。
アルミニウムは大量の電気を使って作る変わった金属!そのため工場に近づくと強い磁場が発生して時計が止まってしまうのだ!
ところで、
アルミを噛むとキーンと嫌な感じになりますよね
。試しに、町行く人にアルミを噛んでもらいました。その結果、
大人は30人中25人が嫌な感じになる
という結果に対して、
子供は30人中5人しか嫌がりません
でした。そこで歯科医に聞いてみると、この嫌な感じは虫歯の治療後の詰めた金属に原因があるといいます。実は、アルミニウムを口に入れると
虫歯の治療に使う金属と反応し、電子を出しながら溶けて微細な電気が発生
します。これを
ガルバーニ電流
といいます。そこで実際にアルミ箔と銀歯に電極を付けて電圧を測ってみると、なんと約0.8Vの電気が流れていました。だから、
歯の治療をしていない銀歯のない子供は嫌な感じにならなかった
のです。ならばこの
銀歯とアルミ箔を電極でつないで電子オルゴールは鳴るのか実験
してみました。17人の銀歯のあるママさんコーラス隊に協力してもらいました。電極の片方を銀歯にあてアルミ箔を口に入れます。すると新婚の佐藤さんのために用意した「ウェディングマーチ」の曲が流れ、
見事実験成功
でした。
今回17人のコーラス隊の皆さんで造ることが出来た電気は3Vで、これは乾電池2本分に相当します。計算上では330人集まると扇風機を回すことが出来ます。ちなみに実験のように口の中で発生した電流を外に逃がすと、「キーン!」という嫌な感覚はしないのだそうです。
さて、アルミニウムの最大の特徴は
軽い
ということ。実際に、アルミは
鉄の約3分の1の重さ
なのです。さらにアルミは
柔らかく加工がしやすい
のも特徴です。そして、
アルミは錆びません
。では
なぜ、アルミは錆びずにいつもピカピカなのでしょうか?
そこで鉄の板とアルミの板を用意し、そこに水をかけ2週間放置してみました。すると、鉄は錆びてしまったのに対しアルミはピカピカして錆びないようでした。しかし、専門家に聞くと、
アルミは元々錆びている
と言うのです。実は
アルミのサビは薄くて透明なので通常はキラキラしたようにしか見えない
のです。サビは金属によってその色は様々です。例えば主に鉄にできる赤錆や銀にできる黒いサビ、銅には緑青という緑のサビも出来ます。そこで透明なサビが出来ているというアルミを、バーナーで1300度まで熱し溶かしてみました。すると、表面に透明な薄い錆があるため、溶けたアルミが波打ったのです。断面をみてみると
酸化皮膜
という
薄さ10万分の1ミリ
ほどのサビがあり、これが非常に薄いため透明で見えなかったのです。しかも酸化皮膜は硬く均一にアルミを包み、水や酸素を跳ね返すためこれ以上中のアルミは錆びません。一方、一般的な鉄のサビは、厚く大きさもまばらなのでどんどんサビが成長して、ぼろぼろになってしまいます。
アルミニウムは透明な薄いサビを身にまとうことで、これ以上錆びない金属なのです
。ただし、サビがとても長い年月をかけて進行すると、白いサビの膜ができます。
アルミニウムは元々、酸化皮膜という薄いサビに包まれているので、これ以上錆びず、いつもピカピカなのだ。
続いて、
アルミと同じ成分の宝石
があると聞いて銀座の宝石店を訪ねました。それはなんと
ルビーとサファイア
だったのです。実は
ルビーやサファイアは土の中の酸化したアルミニウムが地熱や圧力により結晶化して出来た宝石
なのです。ルビーはアルミニウムとクロムが混ざったもので、サファイアはアルミニウムに鉄とチタンが混ざって出来たものなのです。
ということは、
アルミ缶からルビーを作ることができるのでは?
ということで、筑波の産業技術研究所でルビー作りに挑戦しました。まずはアルミ缶を短冊状に細くきって結晶化マシーンにセットします。この機械はハロゲンランプを使って2000度の超高温でアルミ缶を熱し、地中の状況を作り出すことができるのです。実験開始から約2時間でルビーの赤色の元、クロムを近づけた瞬間結晶化を始めました。さらに2時間後、
見事アルミルビーの完成
です。しかしルビーのような赤い色ではなく、赤黒い仕上がりになってしまいました。アルミ缶には不純物が多いため、輝いてはいても赤黒くなってしまうそうです。