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幻の超熟成10年 チーズ
第908回 2007年11月18日


 ワインの美味しい秋ですがそんな時ワインのお供に欠かせないのがチーズ。今回は、とても身近だけど知れば知るほど奥が深い食べ物チーズを科学します。

 チーズ料理はたくさんありますが、チーズにはナチュラルチーズとプロセスチーズの2種類しかありません。カマンベールやモッツァレッラなどはナチュラルチーズといい、動物のミルクに乳酸菌を入れて作る自然のままのチーズです。一方、6Pチーズやスライスチーズはプロセスチーズと言われ、いくつかのナチュラルチーズを溶かして混ぜ合わせたものです。ナチュラルチーズはミルクに入れた乳酸菌がまだ生きて活動しているため、時間が経つと成分が変化しますが、プロセスチーズは加熱殺菌することで、品質が安定し長期保存が可能になります。最近はワインブームに伴い、より風味豊かなナチュラルチーズの人気が高まっているようです。
 そんな、人気のナチュラルチーズの作り方を見に矢野さんは長野県のチーズ工房を訪ねました。まずは搾りたての牛乳を低温で殺菌します。その後、殺菌を終えた牛乳に「乳酸菌」を入れます。乳酸菌を入れると牛乳の中に含まれる乳糖と呼ばれる糖分が乳酸に分解され、牛乳が酸性になり、他の悪い菌の侵入を防いでくれるのです。そして透明な謎の液体が投入されると、牛乳はみるみる固まっていったのです。この謎の液体の正体は、なんと子牛の胃から採取したレンネットと呼ばれる酵素でした。その後、余分な水分を抜かれたチーズは型枠に入れられて上から圧力をかけられ、一晩かけてさらに水分が抜かれます。翌日、この圧搾を終えると、見た目は立派なチーズが出来ます。レンネットが、タンパク質を固まりやすい状態に変えてくれて、牛乳はチーズになるのでした。ということは、母親のミルクを飲んだ子牛の胃の中では自然とチーズが出来ているのでは?ということで、超音波を使って子牛の胃の中を見てみることに。子牛に搾りたてのミルクを与えて見ると、胃に流れたミルクの様子が見られ、60分後には先程のミルクが大きな固まりになっていました。やはりミルクは、胃の中でチーズのような物に変化していました。しかし、なんのためにチーズになるのでしょう?実は、ミルクは液体のため胃の中に留まる時間がとても短く、子牛は栄養を充分に吸収できません。そこでレンネットの働きで一度固形にすることでゆっくり確実に栄養を吸収しているのです。つまり、チーズとは子牛がミルクを消化する仕組みを利用した、驚くべき食べ物だったのです。そしてなんと、人間の赤ちゃんもレンネットの代わりに胃酸でミルクを固めゆっくりと栄養を吸収していたのです。

所さんのポイント
ポイント1
チーズとは、子牛がミルクの栄養をゆっくり吸収するためにレンネットと呼ばれる酵素で固める仕組みを利用した驚きの食物だった!

 さて、圧搾を終えたチーズは二晩塩漬けにされますが、ここではまだ本来の濃厚な味がしません。チーズはこの後温度と湿度を管理して一定期間熟成させる熟成室へと運び寝かされます。実は、最初に入れた乳酸菌はチーズが完成した後も生きて活動を続けています。この乳酸菌が、タンパク質を分解し、チーズの味の元になるアミノ酸を作り出しているのです。実際にアミノ酸の量を測定してみると3ヶ月の熟成でアミノ酸の量はおよそ3倍に増えていたのです。熟成されると美味しさが増すチーズ。ならば、長期間熟成させたチーズはさぞかし美味しいのでは?ということで、日本チーズ協会の会長さんを訪ね、10年じっくり熟成させた貴重なチーズを少し分けて頂きました。10年熟成チーズを試食した所さんは、濃厚でとても美味しいと感動していました。

 ところで、トムとジェリーなどのアニメにも出てくるように、ネズミはチーズが好きというイメージが思い浮かびますよね。そこで、本当にネズミはチーズが大好物なのか、5匹のハツカネズミに、5gずつの牛肉、キャベツ、お米、リンゴ、チーズを食べさせる実験をしてみました。実験が開始されると、ネズミたちは5匹揃って他のエサには見向きもせず、ひたすらお米を食べ続け、次にキャベツを食べ始めました。お米とキャベツを食べきると次にリンゴへ移り、チーズはほんの少し齧る程度でした。そしてネズミがお腹一杯になって何も食べなくなって終了。結果、お米とキャベツは5gを完食し、リンゴは半分くらい、チーズと牛肉はほとんど減っていませんでした。これは、ネズミは体が小さく活発なため、すぐエネルギーにしやすい糖分を好んだと考えられます。エメンタールチーズそこで先程の食べ物の糖分を調べると、お米が77%、リンゴは14%、キャベツには5%の糖分が含まれていました。一方、ネズミが好まないチーズには1%、牛肉は0.3%しか糖分が含まれていないので積極的に食べなかったのです。チーズに糖分が少ないのは、圧搾で抜かれた水分のほうに糖分が含まれるからだそうです。そして、アニメでよく見る穴の開いたチーズは、エメンタールチーズといい、穴の正体は、ネズミのかじった跡ではなく、このチーズを作る菌が発酵するときに大量の炭酸ガスを発生し気泡が出来るためだったのです。

所さんのポイント
ポイント2
小さな体で活発的なネズミは、すぐエネルギーにしやすい糖分が多いお米を好む。ネズミはチーズではなくご飯党だったのだ!

 チーズの中でも特に人気なのはブルーチーズやカマンベールチーズなどのカビを使ったチーズです。しかし、なぜカビを使うのでしょうか?そこでカビを吹き付けたチーズと吹き付けないチーズを並べて2週間置き、アミノ酸の量を比較してみました。すると、カビなしチーズは58mgなのに対し、カビを吹き付けたチーズは139mgと、アミノ酸の量が2倍以上も増えていました。実は、カビには乳酸菌と同じように牛乳のタンパク質を分解してアミノ酸を作り出す働きがあります。つまりカビを使うことでチーズの熟成が促進するのです。そこで身近なカビを集めてチーズを作ることができるのか実験してみました。部屋からパンのカビやシャワーカーテンのカビや布団の裏のカビを採取。このカビをチーズ工房で作ってもらおうとしましたが、これらのカビは毒性があり食べらないとのこと。目がテン特製! コウジカビチーズチーズに使われるカビは2つあり、カマンベールに使われるぺニシリウム・カマンベルティ、通称白カビと、ゴルゴンゾーラなどに使われるぺニシリウム・ロックフォルティー、通称青カビです。チーズに使われるのは長年に渡り、安全性が実証された選び抜かれたカビだけなのです。そこで日本が誇る安全なカビ、味噌に使われるコウジカビを使ってコウジカビチーズ作りに挑戦しました。チーズにコウジカビを吹き付け熟成させること2週間、その味はブルーチーズに似て、所さんにも大好評。コウジカビチーズ作りは大成功でした。



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