天然染料で
ヘア
カラー
第927回 2008年3月30日
新生活を迎え、学校や職場など新しい環境に合わせて
髪型
を変える人も多い季節ですよね。そこで今回は坊主頭からアフロまで色々な髪型を科学します。
日本人の髪といえば、一般的に黒くてまっすぐな髪の毛。これに対し、欧米人は金髪や赤毛など鮮やかな色で少しウェーブがかかっています。一方、アフリカ系の人は黒髪で強いウェーブが特徴です。
人種によって違う髪の毛ですが、この中でどの髪が一番強いのでしょうか?
そこで、日本人、アメリカ人、エチオピア人の女性の髪の毛を5本ずつ束ねて、10センチ測り、毛先にコップを付けます。そこに1個5グラムのパチンコ玉を入れてどこまで耐えられるか実験しました。最初に54個でエチオピア人の髪の毛が耐えられず脱落。次に57個でアメリカ人が脱落。そして、
日本人の髪の毛はなんと405グラムとなる81個まで耐えることができました
。
この強さの違いはどこにあるのでしょう?それぞれの髪の毛を電子顕微鏡で見てみると、
日本人の毛の断面は太くてキレイな円形
をしていました。金髪のアメリカ人の毛はやや細く潰れた形をしていて、エチオピア人は楕円の形をしていました。他の2つに比べて
直毛の日本人の髪は断面積が大きく強い
のです。
そもそも、
髪の毛がウェーブをしているかいないかの違いは毛根の形の違い
にあります。日本人の毛根はまっすぐで、欧米人はやや曲がっていて、アフリカ系は激しくカーブしています。このまっすぐな毛根の形が日本人の髪の強さを生んでいるのです。
さて、夏の日差しや冬の寒さを防ぐ役割がある髪ですが、
どんな髪型が一番機能的なのでしょうか?
そこで髪型選手権を行いました。
坊主頭、ロングヘア、七三分け、アフロヘア、日本伝統のマゲの髪型をした5人それぞれの頭の中央に温度センサーをセットし、氷点下20度の人工気候室に入ってもらいます
。そして座ってから3分間の頭皮の温度変化を計測します。その結果、坊主頭の頭皮は3.5度下がり、ロングヘアは3.3度、七三分けも3.5度、マゲは2.2度、アフロヘアはわずか2.1度しか下がりませんでした。なんと
一番寒さに強かったのはアフロヘア
でした。そして、5人には次に夏の暑さを再現した気温46.5度の部屋に入ってもらい、同じく3分間の上昇温度を計測します。すると坊主頭が上昇した温度は10.1度、ロングヘアは10.0度、七三分けは8.6度、マゲは9.5度でした。そして、夏はキツそうなアフロヘアの結果は8.5度でした。なんと
アフロヘアは夏も冬も温度変化が少ない髪型だった
のです。実は、アフロヘアの強いパーマは、髪と頭皮の間に空気の層を形成し、この層が断熱効果を生んでいたのです。
夏の暑さと冬の寒さに一番強い髪型はアフロヘア!アフロの強いパーマの髪と頭皮の間にある空気の層が断熱効果を生むのだ!
ところで、
テレビでお馴染みの爆風によるパーマは本当に出来るのでしょうか?
そこで実際に人毛のかつらをつけたマネキンの近くで火薬を爆発させ、
高温の熱風を頭に吹き付けて爆発パーマの再現にチャレンジ
します。強烈な爆発後、なんとマネキンの髪には全体的に緩やかなパーマがかかっていました。
ならばと今度はパーマ用のロッドを巻いて本格的なパーマに挑戦です。そして再び爆破!ロッドをとると、
見事にきれいなパーマスタイルが完成し、実験は大成功
でした。そもそも、昔のパーマは髪の結合を100度以上の熱で切り、その後冷める時に再結合する髪の性質を利用していました。だから、爆風による高温の熱によってパーマがかかったのです。しかし、熱を利用するパーマは髪のダメージも大きく、やけどなどの事故も多かったため、現在は薬剤で熱を使わずにパーマがかけられるようになりました。さらには薬剤と低温の熱と空気を使った吸引でパーマをかけるエアウェーブが開発されるなど、パーマの技術は日々進化しているのです。
さて、最近では黒髪の日本人も老若男女問わず様々なカラーを楽しむようになりました。一時的に髪に色をつけられるカラースプレーもあれば、長期間もたせるヘアマニキュアなどの
酸性カラー
、そしてヘアカラーなどの
アルカリカラー
もあります。この酸性カラーとアルカリカラーの違いはどこにあるのでしょうか?
酸性カラーは髪に吸着しやすい染料を用いて、髪の表面に染料を結合
させます。しかし内側の黒い髪は黒色のままなので、色がわかりにくいのです。そのため、
白髪染めやわずかに色を変えたい人に使います
。一方
アルカリカラーは髪の毛の内部まで染料が浸透し、髪の毛の黒い色素、メラニンを分解します
。
そのため黒髪を明るい色にするのに適しています
。ただしアルカリカラーは内部まで染料が入り込むためどうしても髪が傷みやすくなってしまいます。そこで、
天然染料で髪に優しい特製ヘアカラーに挑戦
してみました。タクアンなどを染める
ウコン
、着物の染料
ベニバナ
、ヨーロッパで衣服を染める
セイヨウアカネ
、そしてインドで化粧などに用いられてきた
シコウカ
4つの自然染料を用意しました。それぞれ粉にしたものをお湯でといて、色がわかりやすいよう、人毛の白髪が混じったマネキンに塗ります。結果、ウコン、セイヨウアカネ、ベニバナは染料の分子が大きく中まで入り込むことができず、洗うだけで色落ちしてしまいました。それに比べて
シコウカは、中に含まれるローソンという色素が、髪の成分と非常に結びやすい性質を持っているためキレイに染まりました
。シコウカはヘンナと呼ばれ最近見かけるヘナカラーにも使われています。
天然素材は髪の内部まで浸透せず染まりにくいが、へナカラーに使われるシコウカの色素は髪の成分と結びつきやすく、キレイに染まる!