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駄ジャレで爆笑!? 落語
第940回 2008年6月29日


 今、一大ブームになっているお笑い。中でも一人で活動するピン芸人が大人気!その元祖とされるのが、江戸の頃からの歴史を誇る落語家。そこで今回は、日本伝統の話芸、落語の面白さの秘密に科学で迫ります。

 現在、落語家は東西合わせて600人以上もいるそうで、名門寄席の新宿末廣亭は週末ともなると、行列が出来るほどの人気ぶり。しかし、「寿限無」や「饅頭こわい」など、およそ400年前に作られた定番のストーリーにも関わらず現代人が笑ってしまうのはなぜでしょうか?まずは、落語家の「人を笑わせる力」を調べるため芸歴22年の桂平治師匠に協力していただきました。師匠にはスーツに着替えてもらい、身分を隠し「魚を三枚におろす方法」を10〜50代の10人の前で説明してもらいました。すると、一切面白い要素のない話にも関わらず、師匠が話し始めた途端に全員に笑顔がこぼれ、中には吹き出してしまう人までいたのです。比較のため事前に同じ内容を一般男性に話してもらったところ、当然のように誰も笑わなかったのに、この違いは一体どこにあるのでしょう?師匠に伺うと、客層に合わせて話すテンポを変えているのだそうです。そこで、音響学の専門家に機械で分析してもらうと、一般の男性の発音は、1分間に約90回テンポを刻んでいたのに対し、師匠の発音は平均して1分間に約60回というゆっくりなテンポでした。実はこのテンポの違いに、笑いを生む秘密があったのです。なんと人間は、自分の心拍数より、遅いテンポを聴くと話に集中出来るというのです。そこで、実験に協力して頂いた方の心拍数を計測してみたところ、平均は約72でした。一般男性の話のテンポは、それを上回る90だったのに対し、師匠の話は60と下回っていました。しかし、本当にテンポが遅いだけで、話に引きこむことができるのでしょうか?そこで、本能のままに動く、幼い保育園児達に、同じ内容でテンポが違う「吟詠」(ぎんえい)のCDを聞かせてみます。詠むのは松尾芭蕉の「奥の細道」で、当然子供達は話の中身はわかりません。子供達の平均心拍数は92と成人より早めでした。まずは心拍数より早い120のテンポで聞いてもらうと、子供達は全く興味を示しませんでした。ところが、次に75のテンポで聞かせてみると、なぜか大爆笑!さらにCDプレーヤーの前に集まり、中には聞き入る子供まで現れたのです。師匠は本題に入る前の「まくら」でご年配が多い日は遅め、お子さんが多い日は早くするなど、意図的にテンポを変えているのだそうです。

所さんのポイント
ポイント1
人を話で笑わせるには、人間が集中して聞くことが出来る、心拍数より遅いテンポで話すことが重要なのだ!

花魁を演じる師匠  さて、師匠の「魚のおろし方」の説明を見ていると、ジェスチャーが多いことに気がつきました。これは落語でいうところの「仕草」で、落語家は扇子と手ぬぐいという二つの小道具だけを使い、さらに体や顔の表情、声色を使い分け一人であらゆる人物を演じ分けます。では、仕草による演じ分けには、どれほどの効果があるのでしょうか?そこで落語のことをよく知らない外国人に、師匠が演じる町人、侍、住職の3つの仕草のVTRを見せて、何を演じているか当ててもらいます。すると、雰囲気が伝わったようで、13人中6人が正解しました。仕草は落語のバーチャルリアリティーであり、話をさらに色付けし、客をより深く話に引き込む効果があるのです。

 ところで、師匠の話を聞いて笑った人の、笑う直前の顔を見てみると、一瞬こわばった表情をしていました。心理学の教授によると、師匠の大きな声で緊張し、この緊張状態を緩めるために、息を吐いたりリラックスしたりという自然な反応が笑いという行動につながったというのです。また、意図的に、話に「間」をつくることにより、意識を緊張させることもあり、一瞬で緊張が緩むことで笑ってしまうのです。ならば、相手に緊張させれば、矢野さんの寒いギャグでも笑わせることができるのでしょうか?そこで遊園地のお化け屋敷の中で幅広い年代の10人の方に強制的に緊張してもらい、その状態で突然矢野さんの寒いギャグを見せてみました。そのギャグとは、片手を上げてもう一方の手を下げ「はにわ」と言うだけ。緊張してない人に見てもらったところ、ほとんどの人が冷たい視線のままで、笑った人は37組中9組でした。暗闇で女性にギャグを見せる矢野さんそして、参加者の方には内容を伝えずに実験開始です!緊張して恐る恐る進む女性は、目の前に矢野さんが登場し絶叫!しかし、矢野さんがギャグを見せると、なんと恐怖に歪んでいた顔が、段々と笑顔になったのです。結果、10人中8人が矢野さんの寒いギャグでも笑ったのでした。しかし、なぜ笑ってしまったのでしょう?実は、脳は緊張状態になると、緊張の刺激をやわらげるために、酸素をより多く取り入れようとします。そして、横隔膜を使うほどの「大笑い」の場合は、通常の4倍、深呼吸の2倍もの酸素を取り入れることができるのだそうです。そのため、脳が緊張し酸素を多く取り入れようとしている状態で、急に緊張を解かれると、生理的な反応で笑ってしまうのです。

所さんのポイント
ポイント2
脳は緊張状態になると、酸素を多く取り入れようとするので、急に緊張を解かれると寒〜いギャグでも笑ってしまうのだ!




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