牧場
で作れ真っ黒砂糖
第941回 2008年7月6日
来年の秋、目がテンはめでたく放送1000回を迎えます。その日をお祝いするため、ケーキを作ることに!しかも、科学の力を使いケーキの材料をイチから作ろうと北海道に
目がテン牧場
を立ち上げました。今回はその第2弾です。
前回はバターの原料となる牛乳を手に入れるため、二頭の子牛をもらい受け、雑草だらけの土地を耕し、牧草の種をまきました。所さんが命名した黒元と白元は、毎日母牛のお乳をたっぷり飲んでスクスクと成長し、誕生から一週間が経過。矢野さんが母牛のお乳を搾るため、お世話になっている三浦牧場を訪れると、その日から、バターを作った後に残る脱脂粉乳に、安価な植物油を加えた
代用乳
と呼ばれる、子牛用の粉ミルクを与えるというのです。実は、母牛のミルクは売り物になるため、子牛には安く作れて栄養価の劣らない代用乳が与えられるのです。
さらに三浦さんは早くも牧草を与えてもいいといいます。子牛の口の中を見てみると、確かに人間の前歯にあたる切歯と、奥歯にあたる臼歯が生えていました。
生まれながらに子牛には乳歯が生えている
のです。しかも
与えるのは生の牧草ではなく干し草で、これを与えないと子牛の胃が育たない
そうなのです。一体どういうことでしょう?そこで、最新のレントゲンを使って、子牛の体の中を徹底調査しました。
そもそも、
牛は4つの胃を持っています
。成長した牛は、まず、1番目の胃でエサとなる草を微生物の力を借り分解、栄養に変えます。第2胃が第1胃を補助する役割、第3胃は分解された物の水分をこしとり、そして第4胃でそれらを消化する仕組みになっています。お乳だけしか飲んでいない子牛の胃は第4胃だけが発達していて他の胃はまだ発達していませんでした。しかし、
干し草を与えて1ヶ月の牛の胃を見てみると、なんと第1胃が大きくなっていた
のです。
実は、
硬い干し草を食べることで、第1胃の筋肉が刺激され、胃がすぐに大きくなり、いち早く栄養を消化吸収出来るようになります。
つまり、子牛をより早く成長させるために、生の牧草よりも、固く刺激のある干し草を食べさせるのです。さらに干し草に棲む微生物が、胃に棲み着き、エサを分解してくれるようにもなるのです。
牧場では子牛を早く育てるために、生の牧草より先に固い干し草を与え、第1の胃を大きくするのだ!
そして、干し草を順調に食べていた黒元ですが、喉を詰まらせ何かを吐き出すような素振りを見せました。実はこれは
反芻(はんすう)
と言い、一度胃の中に入った物を再び口の中に戻して、さらに歯で細かくすりつぶし、微生物がエサを分解しやすくするものです。反芻というのは胃が出来てきた証拠だったのです。
さて、続いてはケーキに欠かせない砂糖作りにも挑戦します。北海道には、砂糖を生み出す
甜菜(テンサイ)
という植物があると言います。矢野さんが研究所でその葉っぱをかじってみると、苦いだけで少しも甘くありません。そこで、鉢から抜いてみると、甘い部分である白いダイコンのような根が現れました。テンサイはその見た目から、別名「
砂糖大根
」とも呼ばれています。実は
日本の砂糖の生産量の約20%がサトウキビで、80%はテンサイから作られている
のです。
では、テンサイはどれくらい甘いのでしょう?その糖度を測定してみるとなんと18.6%もあり、14.7%の夕張メロン、16.6%のサトウキビよりも断然甘かったのです。この甘さの秘密は寒さにあるというので、こんな実験です。2枚のタオルをそれぞれ水と砂糖水に浸し、氷点下20℃の冷凍庫の中で10秒間振り回してみました。すると、
水に浸したタオルは凍りましたが、砂糖水に浸したタオルは凍らなかった
のです。実は
テンサイは、根に糖分を送り込み甘くすることで、秋に気温が下がった時、根の細胞が凍ってダメージを受けないようにしていた
のです。この生き残り戦略こそが人類に砂糖をもたらしていたのです。そのため、テンサイは北海道など寒い地域で栽培され、なんと北緯60度のフィンランドでも栽培されています。
テンサイは、寒い地域で生き残るために、糖分で根の細胞が凍るのを防いでいるのでとても甘いのだ!
スタジオでは、テンサイを搾った100%テンサイジュースが登場!酸化して黒ずんだジュースを飲んだ所さんはその甘さに絶句!さらに雑味も多く、美味しくなかったようです。砂糖は、このジュースを煮詰めて取り出されるのです。
さて、実はテンサイ作りは今年の4月から始まっていました。寒い時期が長い北海道では、ビニールハウスで苗を育て、春先に畑へ植え替えます。まずは苗床を作ります。細かく区切られた紙のポットに土を詰め込み、防虫剤をコーティングしたテンサイの種子をまきます。1週間後、テンサイは元気に芽をだし、1ヵ月後には、いよいよ目がテン牧場に苗を植え替える時期を迎えました。土の中で分解する紙で作られたポットを一株ずつわけ、そのまま畑に植えます。およそ2000株を植え替えるという重労働をこなした矢野さん。これで今年の秋には甘〜い砂糖ができるはずです。少しずつ完成予想図のイメージに近付いてきた目がテン牧場!今後が楽しみになってきました。