牛
が選ぶ!?快適な寝具
第949回 2008年9月7日
来年の秋、めでたく放送1000回を迎える目がテン。そこでお祝いするケーキを一から作るために「
目がテン牧場
」を立ち上げ、科学の力で、材料となるバターや小麦、卵を作ろうというチャレンジです。今回は、その第3弾です!
目がテン牧場の2頭の子牛、その名も白元と黒元は、カーフハッチという小屋の中で、毎日ミルクと干し草を食べてスクスクと成長しています。大きくなった2頭は次に「
放牧
」という新たなステージを迎えることになりました。放牧は、適度な運動と栄養たっぷりの牧草を与え、将来美味しいお乳を出してもらうために行います。しかし、柵がないとウシが逃げ出し、車やバイクと事故を起こす心配があるので、まずは廃線となった線路の枕木で、周囲200mの敷地を囲み、柵を完成させました。あとは種子をまいておいた牧草の成長を待ち、いよいよ放牧開始と思いきや…、なんと牧草のチモシーは、シロザやヨモギなどの雑草の半分も成長していなかったのです。協力して下さる隣の牧場の方は、雑草と一緒に牧草を刈り取ればいいと言います。矢野さんは言われたとおりに牧草を雑草と共に刈ってしまいましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?そこで、
チモシーとシロザとヨモギを牧場で草刈りしたように、同じ高さで切り取り、一週間観察してみました。
すると
牧草だけが上へ伸びた
のです。専門家に聞いてみると、植物の成長点が違うのだそうです。実は、
雑草の成長点は茎の先端にあるのに対し、牧草の成長点は先端にはなく根元に近い部分にある
のです。つまり、同じ高さで草を刈れば、牧草だけがその後伸びていくのです。実は矢野さんが行った作業は
「掃除刈り」
と言い、良い牧草地を作る大切な作業だったのです。さらに、ウシは根本から草を食べるヤギとは違い、牧草の成長点を残し、上の部分だけを引きちぎって食べるので、牧草はその後も伸び続けます。つまりウシは、とても放牧に向いた家畜だったのです。
さて、牧草が育ったところで、いよいよ放牧のスタートです。しかし2頭ははしゃぎまわるものの、一向に牧草を食べようとしません。一体なぜでしょう?隣の牧場の方に伺うと、暑さに原因があるのだそうです。そこで、エサを食べる前と後のウシの胃をサーモグラフィーで比較してみると、食べた後の方がお腹の辺りの温度が上がっていたのです。実は、ウシが牧草を食べると胃の中にいる微生物により発酵が始まり、発酵熱と言う熱が発生し胃が熱くなります。
ウシは暑い夏の日中は体温も上がっているため、胃の発酵熱を逃がすことが難しく、エサを食べないのです。
2頭を引き続き観察してみると、
夕方気温が下がり涼しくなったころからなんと明け方まで牧草を食べ続けていました。
そもそもオランダやドイツなど寒冷な地域原産のホルスタインは暑さに弱いため、日本の牧場は北海道や高原などの涼しい場所にあるのです。
ウシは、エサを食べると胃の温度が熱くなってしまうので、夏の日中は胃を休め、涼しくなる夕方から朝にかけて牧草を食べていた!
次に、矢野さんは学生の方に手伝ってもらい、暑さや陽射しを避けるための牛舎作りに挑戦しました。今回作る牛舎は、安価で丈夫なケンネル式と呼ばれるイギリス流の牛舎です。まずは牛舎を建てる場所を決定し、そこに穴を掘り、水はけを良くするために砂利を埋めて土台を作ります。次に別の場所で作った建物の骨組みを土台の上に運び、その骨組みに板を打ち付け壁を作ります。この時、風通しを良くするためにわざと壁をスカスカにします。さらに、屋根になるトタンを白く塗り、熱が反射し暑くなりにくくします。そして、いよいよ寝床を残すのみですが、専門家の方が、
ウシは寝床にとってもこだわるため、快適な寝床作りが必要
だと言うのです。そこで、ウシはどんな寝床が好きなのか
「フローリング」「畳」「布団」「スプリング式のベッドマット」を用意し、上にワラを敷き、ウシの寝床に仕立て、どれが好みか実験しました。
すると2頭はいろんな寝床を足で踏み、感触を確かめ、やがて
白元が布団の上に寝転がった
のです。黒元も布団に興味があるようなので、
もう一枚布団を増やしてみると、黒元も布団の上に寝転がりました。
しかし、ウシ達はなぜ布団を寝床に選んだのでしょうか?そこで、一定の高さから重りを落としてその柔らかさを機械で測定してみると、布団は610N(ニュートン)でした。実は、ウシがよく寝ている牧草地の柔らかさを測ってみると平均はおよそ600Nでした。4つのうち、
布団だけが牧草地の柔らかさに近い値を示した
のです。だから2頭は布団を選んだようです。
ウシが寝床に選んだ布団は、普段いる牧草地と同じような柔らかさを持っているのだ!
そんな布団好きの白元と黒元のために、佐藤アナが布団屋さんで古くなって処分する予定の布団を分けてもらい、目がテン牧場へ差し入れにやってきました。汚れないように特製カバーをして寝床に敷いてやったところ、白元と黒元は大喜びですっかりくつろいだようです。こうして立派な牛舎が完成!目がテン牧場はさらに牧場らしくなってきました。