父親は鬼役厳禁(秘)
節分
第970回 2009年2月1日
2月3日は「鬼は外、福は内」の掛け声で豆まきが行われる
節分
。そこで今回は節分の本当の姿に科学で迫ります。
そもそも節分に豆をまく理由は、「豆=魔(マ)を滅(メ)する」という語呂合わせから来ているそうです。そして豆まきの後は、自分の年齢に1つ足した数の福豆を食べて1年の無病息災を願います。でも、なぜ年の数だけなのでしょうか?そこで、
男性6人に、節分の炒り豆を30秒に1粒のペースでお腹いっぱいになるまで食べてもらうと、平均269個も食べることができました。
そこで今度は大豆の水煮を同じ人たちにお腹いっぱいになるまで食べてもらいました。すると、なんと
煮豆は炒り豆に比べ平均で35個以上も多く食べられた
のです。一体なぜでしょうか?そこで、すり潰した炒り豆と煮豆を37℃の消化酵素に浸し、1時間揺らし続けます。これはまさに人の胃の中と同じ状態。そして消化分解されてできるトリプトンという物質の量を比較してみると、炒り豆の方が消化分解されにくかったのです。
年の数だけという制限は、消化の悪い炒り豆を食べ過ぎないための戒めなのかもしれません。
矢野さんは福豆を作っている豆屋さんを訪ね、その工程を見せてもらいました。作り方は、水に浸した大豆をいったん乾燥させた後、専用の機械で1時間ほど炒るだけ。これだけ簡単ならば、他の豆でも福豆が作れるのでは?ということで、小豆と落花生で目がテン特製福豆を作ってもらいました。スタジオで試食した所さんには、小豆福豆は硬くて不評でしたが、落花生福豆の味は大絶賛でした。
昨年の大晦日に、矢野さんはこの落花生福豆で豆まきをしようと、節分の元となる行事を行っているという、浅草・浅草寺を訪れました。この行事は
追儺(ついな)
といい五穀豊穣を祈る祈祷をした後、鬼の面を持ったお坊さんを、もう一人のお坊さんが棒を手に追いかけます。しかし、行事は豆をまかないまま終わってしまいました。実は
追儺では、豆でなく、柳の棒で床を叩いて音を出し、さらにお堂の裏で鉦(かね)や太鼓を鳴らして鬼を払っていたのです。
ではなぜ大きな音が豆まきに変わったのでしょうか?実は、
豆を炒る音と、豆まきの音が魔除けになると考えられていた
のです。確かに炒った時、大豆だけが中のパチパチと大きな音を出していました。実は、
大豆は水分が熱で膨張し、硬い皮が破れる時に音が出るのです。
小豆は水分を吸わないので炒っても弾けず、落花生は、皮が薄い渋皮のため音は出ないのです。だから、大豆が節分に使われるようになったのです。
節分に大豆が使われるようになったのは、炒った時にでる音と豆まきの音が魔除けになると考えられてきたからなのだ!
さて、節分の豆まきは子供の成長にとって大きな意味がある行事だと言います。そこで、豆まきを初めて行う家庭を訪ね、初豆まきを観察することに。プロの神楽師が演じる本格的な鬼の登場に、泣き叫ぶ子供。そこで
お父さんが一人で豆をまき鬼を退治すると、なんと子供は「世界一強いのはお父さん」と答え、お父さんの評価がぐっと上がったのです。
さらに各家庭を巡って実験してみました。まず世界で一番強い人の絵を描いてもらい、豆まき終了後に、もう一度世界で一番強い人の絵を描いてもらうと、以前はお相撲さんやお化けなどでしたが、豆まき後は5人中4人が世界一強い人をお父さんと答えたのです。
そこで、豆まき前後での子供達の脳波を比較してみました。まずは、お父さんに抱かれた状態で最初に怖いお化けを見ると脳の前頭葉部分が赤く活性化し、怖がっていることを示す状態になりました。しかし、豆まきでお父さんが鬼を払った後、再びお化けが出ても、脳には赤い部分が少なく落ち着いていたのです。つまり、
豆まきはお父さんが鬼を払うことで、親子の絆を強める大切な行事でもあったのです。
実際にも、昔から豆をまくのは家長の役目でした。本来、お父さんが節分で鬼役をやるのはNGなのです。
豆まきは、お父さんが豆をまき鬼を払うことで、子供からお父さんへの信頼感が上がり、親子の絆を強める大切な行事でもあった!
節分で食べるものと言えば、最近では恵方巻きですが、それより
はるか昔から、鬼が嫌うと言われているイワシを焼いて食べる風習があったのです。
一体鬼はどうしてイワシを焼くのを嫌うのでしょうか?そこで魚屋さんに江戸時代節分の時期にとれたイワシ、マダイ、サワラ、サヨリを同じ重さに揃えて焼いてみました。すると、
焼き始めてすぐイワシだけからもうもうと煙が上がったのです。
今度はイワシだけを密閉された部屋で焼いてみると、あっという間に部屋中に煙が充満し、わずか10分後に火災警報器が作動!矢野さんもたまらず脱出。専門家によると、煙は病気や害虫も追い払うといいます。ならばと、アクリルボックスの中でイワシを焼き、米を食い荒らす害虫、
コクゾウムシ20匹を米の中に入れ、イワシの煙でいぶり出せるか実験してみました。
すると煙が充満するにつれ、虫は米から這い出て、煙が薄い下の方へ逃げていきました。
30分後、お米の中には、虫は1匹も残っていませんでした。
昔の人は害獣や害虫退治に煙を用いたことから、煙の象徴として、節分にイワシを焼いていたのです。節分は、昔からの伝統が今も受け継がれている大事な行事なのですね。