苦味
ダメ!?若者に異変
第971回 2009年2月8日
大人にはおいしく感じる
苦い食べ物
。しかし最近の若者は苦味を嫌う傾向にあるといいます。そこで今回は、人間と苦い食べ物との不思議な関係を科学します!
おばあちゃんの原宿、東京・巣鴨で年配の方30人に濃い目の抹茶を飲んでもらったところ、全員が「おいしい!」と飲み干してくれました。次に、池袋で若者に同じ抹茶を飲んでもらったところ、大不評で9割以上が飲みきれませんでした。しかも、
最近の若者はお茶だけではなく、ゴーヤー、ピーマン、ビールといった、苦い食べ物を嫌い、若者向けに苦味を押さえた商品も発売されているほど。
この事実は生き物として大丈夫なのか?ということで、動物にも苦い食べ物を食べさせてみました。まずは肉食獣代表のホワイトタイガーに苦い抹茶の粉をまぶした馬肉を与えてみると、すぐに吐き出してしまいました。次は草食動物の代表ゾウに、抹茶をまぶしたバナナを与えてみます。すると…食べるどころか鼻で遠くに放り投げてしまいました。その他チンパンジーやクマにも与えましたが食べませんでした。専門家によると、
実は苦味のある物質は本来人間に必要な栄養素ではないというのです。
生きるために必要な炭水化物・たんぱく質・脂肪の三大栄養素は、味覚でいうと甘味であって、苦味のある物質は、極力摂らなくても問題ないものばかりなのです。つまり
苦味を好まない若者たち、それは生物として正しい反応だったのです。
しかし、なぜ人間は苦いものを求めるのでしょうか?そこで日本一苦いというコップ一杯のせんぶり茶を3人の若者達に飲み干してもらうと、全員その苦さに悶絶!しかし、同じ3人に
1時間単純な割り算の問題を解き続けてもらい、ストレスを与えた後に、再び飲んでもらうと、1回目に飲んだおよそ半分の時間であっさり飲みきり、中にはおかわりする人も!
一体なぜこんな違いが?そこで、彼らの唾液を分析するとストレスを与えた後の唾液には特殊なたんぱく質が増えていることがわかりました。実は、
この特殊なたんぱく質は、舌の苦味を感知する細胞の入口にフタをするため、一時的に苦味を感じなくなると考えられているのです。
例えば、覚醒作用を持つカフェインなど、薬と毒は紙一重。だから人間はストレス時に苦味を感じにくくすることで、苦い食べ物の薬理作用を得ようとしているという説があるのです。
人はストレスを与えられると、唾液中に特殊なたんぱく質が出て、この働きで一時的に苦味を感じなくなるのだ!
1杯目のビールって、おいしいですよね。なぜ夏に苦いビールは格別なのか?そこで実験です。夏を再現するために4人の若者に5分間サウナに入ってもらった後、
喉が渇いた状態で、甘い水、しょっぱい水、酸っぱい水、苦い水をそれぞれ喉の渇きが癒されたところまで飲んでもらいました。
すると飲まれた量が最も少なかったのは苦い水でした。
さらに飲む水を変え、3回実験を行っても結果は同じでした。なぜ苦い水は渇きを癒すのでしょうか?実は、人間は水分を摂ると、喉にある水を感じる神経が刺激され、脳に信号が送られることで渇きが癒されます。ビールの苦味は、この神経により強い刺激を与えると考えられているのです。
1杯目のビールは苦味で喉の渇きを早く癒してくれるから美味しかったのですね。
ところで、苦い食べ物は大人になると食べられるようになるのはなぜなんでしょうか?そこで、普通の甘い綿菓子と、目がテンオリジナル、日本一苦いせんぶり茶を入れた特製綿菓子を使って実験です!矢野さんはまず巣鴨で綿菓子屋を開店。年配の方に食べ比べてもらいました。すると、なんと
せんぶり茶入り綿菓子は大好評!「味が濃くてコクがある」と、甘い綿菓子より美味しいというのです。
一体なぜ苦味を入れた方が好まれたのでしょうか?実はチョコレートや抹茶アイスに苦味を加えた食品がありますが、これらは少量の苦味によって甘味が引き立ちコクが出るように作られているのです。つまり、
苦味は食生活に欠かせない隠し味だったのです!
次に矢野さんは幼稚園へ向かい、所さんも大絶賛したせんぶり茶入りの綿菓子を食べてもらいました。すると、苦い、まずいの大合唱!どちらがおいしいか選んでもらうと全員が甘い綿菓子を選びました。一体なぜなのでしょうか?そこで9歳の子供と54歳の大人、それぞれが甘い綿菓子、苦い綿菓子を食べた時の脳の状態を見てみることに。まず子供に甘い綿菓子を食べてもらったところ、目立った動きはほとんどありません。ところが、苦い綿菓子を食べると脳の全体が目まぐるしく動きました。
子供は苦味の刺激を危険な毒と感じ、マズイと反応したのです。
次に大人ですが、甘い方を食べてもらうとすこしだけ反応し、苦い綿菓子ではなんと、おいしいと感じているはずなのに、激しい動きが見られました。つまり、苦い味が美味しいと感じる年配の方でも、子供と同様に苦味を危険な毒と感じていたのです。しかし、
大人の場合は、苦味に驚いているものの、それまでの経験で安全だとわかっているため受け入れていると考えられます。
つまり、苦味は人間だけが経験によって楽しめるようになった究極の味なのです。
本来、脳には危険な毒と判断される苦味。しかし人間にとって苦味は、経験によって楽しめるようになった究極の味なのだ!