人肌で温め
ヒヨコ
誕生
第982回 2009年4月25日
今年の秋、放送1000回を迎える目がテン。この日を祝うケーキの材料を、科学の力で1から作るため北海道に立ち上げた
目がテン牧場
。今回はその第7弾、
卵からヒヨコをかえし、ニワトリを育て、卵を産んでもらおうという計画です。
卵をもらおうと養鶏場を訪れた矢野さん。しかし、一般的な養鶏場で採れるのはメスだけでも産まれる
「無精卵」
で、ヒヨコにはならないとのこと。確かに、ここにいるのはメスのニワトリだけでした。そこで、矢野さんは教えてもらった
種鶏場
へ行き、オスとメスが交尾してできた、温めるとちゃんとヒヨコがかえる
「有精卵」
を手に入れました。早速親鳥の巣箱に有精卵を置いて、温めかたの見本を見せてもらおうとすると…なんとニワトリは卵を踏みつけたり、口ばしでつついたりと、まるで育児放棄。全く温める気配を見せないのです。実は、本来ニワトリは卵を温めている間、次の卵を産みません。そのため、ここにいるのは卵を温めないように品種改良された
採卵鶏
という種類だったのです。しかし、工場長は
品種改良されていない、ペット用のチャボだったら温めてくれるといいます。
そこで矢野さんはすでに自分の卵を温めている最中のチャボのお腹の下に、持ち込んだ卵を混ぜ、温める様子を観察してみました。すると、チャボは体をゴソゴソ動かし始めたのです。透明なケースに入れ、下から観察してみると、お腹や足を使い、さらには頭を潜り込ませて卵の向きや場所を変えているようです。実はこれ、
転卵
といって卵をふ化させる上でとても大事な作業。
卵黄は卵白より軽いので、放っておくと上に上がり卵殻膜に癒着してしまいます。こうなるとヒヨコはかえらなくなってしまうので、卵はこまめに回転させる必要があるのです。
さらにチャボのお腹の下の温度を測ってみると、37.2℃でした。このことを踏まえ、体温の高い矢野さんは10個の有精卵を腹巻きに入れて、こまめに転卵しながら温めることに。
ニワトリの有精卵をかえすには、卵の向きを変えながら37℃前後で温め続けることが必要なのだ!
ところが、卵を壊さないように抱いたままでは思うように牧場作業もできず、就寝時には寝返りも打てません。約20日間温め続けるのは矢野さん一人の力では限界があります。そこで、心配になった佐藤アナは、一定の温度で卵を温め続け、自動で転卵も行ってくれるふ卵器を用意。夜はこのふ卵器のお世話になり、日中は女性スタッフがお腹で温めるように指示しました。そして、スタッフが慎重に牧場作業を行いながら卵を温め、一週間が経過。卵の中のヒヨコは無事に育っているのでしょうか?矢野さんは卵の成長具合を調べる方法があると聞き、種鶏場へ。すると、暗い部屋の中で行われていたのは
検卵
という作業。
卵に光を当てて、中に血管が浮かび上がっていれば卵が成長している証拠
だそうです。矢野さんが持ち込んだ10個の卵を検卵してみると、残念ながら5個だけしか成長していないことが分かりました。その原因は、作業中に卵に傷をつけてしまったことにあるようです。スタッフはこれ以降、なるべく動かないように卵を温め続けました。
そして21日目の夜…卵の中からピヨピヨとヒナの鳴く声が!そして3時間後、ヒナはクチバシで卵の殻を割り始め、時間をかけて殻を破り、ついに
目がテン牧場に3羽のヒヨコが誕生しました!
さて、卵を手に入れるためには、肝心なのがヒヨコの性別。矢野さんは種鶏場に3羽のヒヨコを連れていき、オスかメスかを判別してもらいました。なんと、ヒヨコの
オスとメスは羽毛の長さで判別されているそうです。
ヒヨコの翼の先端を見比べてみると、
長い毛だけしか生えていないのがオス。一方、長い毛の中に短い毛が混じっているのがメスです。
実はこの誰にでも簡単に見分けられる判別法は、最近の品種改良で可能になった方法。それまでは、肛門の見た目の違いで判別していました。
肛門鑑別は専門的な技術と経験が必要で、初生ひな鑑別師というという国家資格もあるほどなのです。
さて、目がテン牧場で生まれたヒヨコの羽を見てみると…メスが2羽、オスが1羽だとわかりました!
所さんはこの3羽に「ヒヨ子」、「ヒヨ世」、「ヒヨ夫」と命名。無事に育って卵を産んでくれるといいですね。
ヒヨコの雌雄判別法は、難しい肛門鑑別だったが、最近の品種改良により、羽毛の長さで簡単に見分けられるようになったのだ!