熱帯の密林追え
巨大猿
第997回 2009年8月8日
目がテン夏休み恒例、海外スペシャル!今回は、野生の
オランウータン
に会いに、東京から南へおよそ4000km、赤道直下の
ボルネオ島
へGO!!
オランウータンとはマレー語で「森の人」という意味。しかし近年、森林の伐採により、この15年ほどで生息数が半減し、今では野生の姿が見られるのはボルネオ島とスマトラ島のたった2ヶ所だけなんです。矢野さんは、そんな野生のオランウータンに会いた〜い!と、東京から13時間かけてボルネオ島のダナン・バレー自然保護区へ到着。早速、ガイドさんとともに熱帯雨林へ足を踏み入れると、巨大な樹木や珍しい昆虫など、大自然の驚異に圧倒されっぱなし。
そして、
野生のオランウータン探しの手がかりとなるという写真には、木の上に、なにやら枝が重なり合った塊のような物が写っていました。
捜索を開始すると、森のあちこちで写真と同じような物が。そして夕方…ついに木の上で作業をしているオランウータンを発見!実は謎の物体は、
オランウータンの寝床。
オランウータンはエサを求めて移動しているので、毎日夕方になると使い捨ての寝床を作るのです。矢野さんは、地上25mの高さに作られた直径1mほどの寝床を2つ発見しましたが、オランウータンが寝てしまったため、この日は捜索終了です。
翌朝、まだ暗いうちに、昨日見つけた寝床で観察していると、オスと赤ちゃんを背負ったメスのオランウータン3頭が目覚め、移動を開始しました。そこで、矢野さんはオランウータンの一日を追跡してみることに。さすがは森の人というだけあって、見事な身のこなしで、木から木へ移動を続けるオランウータン。時には自分の体重で木をしならせて木をつなぎながら器用に渡っていきます。
でも、その姿をもっと近くで見たいと、矢野さんはオランウータンのショーが行われている現地の動物園を訪れました。そして、ショーのメインである綱渡りを見ていると、とても人間には真似できない角度で後ろ足を上げていることに気がつきました。専門家に伺うと、なんと
オランウータンの股関節には、大腿骨と骨盤を繋ぐじん帯がないのだそうです。
いわばオランウータンの股関節はいつも脱臼寸前の状態。この特殊な進化によって、オランウータンは自由に関節を動かすことができ、自在に木の上を移動することができるのです。
オランウータンは、股関節にじん帯がないので、木の上をすごい体勢で自由自在に動けるのだ!
さて、その姿を見失いかけながらも追跡を続行していると、オランウータンは移動をやめ、木の上で食事を始めました。食べていたのは
モモタマナ
という東南アジアに多い木の果実。矢野さんも味見をしてみると、スモモのような甘酸っぱい味でした。さらに観察していると、柔らかい葉っぱを食べていました。他にも、オランウータンは大好物の果物類が見つからない時は、木をガムのようにかじって樹液を飲み栄養源にしているそうです。エサの少ない森ではいつ食料にありつけるか分からないので、食べられる時にはとにかく食べるのだそうで、オランウータンは2時間以上も食事を続け、とうとう日が暮れてしまいました。結局オランウータンは一度も地上に降りてこなかったのです。
実は、オランウータンはほぼ完全な樹上生活。出産も木の上で行い、一生を木の上だけで過ごすのです。
でも、一体なぜ樹上生活を送っているのでしょう?その秘密を探るため、矢野さんは木の上の方に行ってみると、そこは太陽が降り注ぐ明るい世界。そして、大きな木の幹や枝には、
着生植物
と呼ばれる別の種類の植物がくっついていました。着生植物は自ら落ち葉を溜め込んでそこから栄養を得たり、アリに住まいを与える代わりにアリの排泄物から養分をもらったりしています。そして、オランウータンのエサとなる果物もほとんどが木の上で実をつけていました。
オランウータンが生活の場に選んだ熱帯雨林の樹上は、そこだけで暮らせるほど、とても豊かな場所だったのです!
逆に、熱帯雨林の地面近くは、上に葉が生い茂っているため太陽の光がほとんど届かず、オランウータンが食べる木の実や葉は育ちません。しかし、地表には、シロアリやミミズなどが落ち葉を分解し木を育てる栄養分を作り出すという役目があるのです。熱帯雨林にはこんな驚きの仕組みが隠されていたんですね。
熱帯雨林は、太陽の当たる木の上に豊かな世界が広がっているので、オランウータンは一生を木の上だけで過ごすのだ!