手作り
小麦
で珍ケーキ
第996回 2009年8月1日
9月で放送1000回を迎える所さんの目がテン。番組では、北海道に
目がテン牧場
を立ち上げお祝いのケーキに必要な材料を一から作ってきました。畑で栽培したテンサイから砂糖を取り、卵から育てたニワトリから卵をゲット。バターの原料となるミルクを出してくれる牛、白元と黒元も順調に成長中。残るはスポンジとなる、
小麦粉作り
です。
去年10月にスタートした小麦粉作り。土地を耕し、種子をまくと、わずか一週間で芽を出しました。小麦はその後も順調に育っていましたが、大雪に見舞われ、80cmもの雪に覆われてしまいました。しかし、雪を堀ってみると、小麦は枯れずに青いままの元気な姿でした。そこで、周りの雪の温度を測ってみると0.3℃なのに、葉の下は2.5℃もありました。実は、
小麦は葉を地面にべったりとくっつけることで、地面の温度を逃さないようにしているため、深い雪の下でも枯れないのです。
そして3月下旬、矢野さんは牧場に向かう道すがら、奇妙な光景に遭遇!なんと
畑一面が黒っぽい雪に覆われているのです。
近寄ってみると、雪に黒い小さな粒が混ざっていました。農家の方に伺うと、その
正体は木炭の粒で、この時期、雪が覆う小麦畑の上にまく必要があるといいます。
一体何のためでしょう?そこで実験。雪の上に2つの囲いを作り、一方だけに炭をまき、観察してみると…炭をまいた雪はみるみる溶け始め、地面が現れました。実は、炭の黒い色は太陽の光を良く吸収し、温まる色。実際に黒い板と白い板を太陽に当て温度を計測してみると、わずか30分で15℃も差が出たのです。
炭をまくのは小麦が長く太陽に当たるように、一足早く雪を溶かすためだったのです。
早速目がテン牧場でも炭まきをしました。ちなみに、小麦の幼い株を踏むことで強く成長させる麦踏みは、北海道では行われません。雪の重みが刺激になり、麦踏みの代わりを果たしてくれるのです。
黒色は太陽の光を吸収し温まる色。だから雪の上に黒い炭の粒を撒くことで、早く雪を溶かし、植物の成長を早めることができるのだ!
6月下旬。スクスク育つ小麦の葉の間から、麦の穂が顔を出しました。そして2週間後、穂の間から何やら黄色いものが出てきました。実は、これは小麦のおしべで、
小麦の花
と呼ばれるもの。しかし、めしべは穂の奥にあり、外には出てきません。実は、
小麦はおしべが外に出る際にめしべに触れ受粉を済ませる、自家受粉を行っているのです。つまりこの黄色い花が現れれば受粉を終えた証なのです。
そして7月下旬、小麦は黄金色になり、いよいよ刈り入れの日がやって来ました。大切に刈り取った小麦は、天日で5日乾燥させた後、足踏み脱穀機を使って、穂から小麦を外します。さらに唐箕(とうみ)という器具で空の籾殻を取り除いて実だけを取り出し、無事、目がテン牧場産の小麦が収穫できました!
矢野さんは、その小麦を石臼で皮ごとすり潰して粉にし、ふるいにかけて、小麦粉を取り出しました。
小麦の粒は外皮と中の胚乳が癒着しているため、外皮を取り外そうとすると、中身が粉々になってしまいます。だから、挽いて小麦粉にするしかないのです。
まずは味見のため、ケーキの土台、スポンジを作ってみることに。市販のバター、砂糖、卵と混ぜ、見た目はバッチリのスポンジケーキが焼き上がりました。しかし、スタジオで所さんに試食してもらうと…パサパサして美味しくないとの感想。専門家によると、なんと
牧場産の小麦はケーキには向かないというのです。
そもそも小麦粉はデンプンと、グルテンといわれるタンパク質で出来ています。
小麦粉はグルテンの量が少ない方から、薄力粉、中力粉、強力粉に分かれ、グルテンの量で料理の向き不向きが決まります。
そこで、美味しいスポンジを作るのに最適なグルテンの量を探るため、佐藤アナが、
人工的に作ったグルテン99%の小麦粉と、グルテン1%の小麦粉でスポンジケーキを作りました。所さんに食べ比べてもらうと、99%のスポンジは硬すぎ、1%のスポンジは柔らかすぎるとの判定。
グルテンは言わばケーキの骨格のようなもので、骨格があまりにしっかりしていると硬くなり、骨が少なければ柔らかくなるのです。そして、調べた結果、
ケーキのスポンジを作るのに最適なグルテン量は約6%でした。つまり薄力粉。
ちなみに牧場の小麦粉は約10%のグルテンを含む中力粉で、うどんなどに使われるそうです。
小麦粉はグルテンの量が少ない順に薄力粉、中力粉、強力粉に分かれる。ケーキのスポンジに向いているのは薄力粉なのだ!
しかし、
牧場の小麦からケーキにぴったりの小麦粉を作る方法がありました。
使うのはデンプン。
グルテン10%の牧場の小麦に、グルテン以外の成分であるデンプンを足すことでグルテンを6%まで薄めればいいのです。
早速、牧場産の小麦に水を入れ、デンプンを溶かし出し、その水を遠心分離器にかけ、水とデンプンに分けます。さらに、それを天日で乾燥させること3日間。出来上がったデンプンを適量牧場の小麦に混ぜ、ついに1000回を記念するケーキ用の小麦粉が完成!いよいよ材料は揃いました!果たして美味しいケーキは出来上がるのでしょうか?