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音で勝つ モーグル 秘策
第1021回 2010年2月13日


 いよいよ開幕したバンクーバーオリンピック!そこで今回は、注目競技の一つ、トリノからの4年で劇的に変わったモーグルを科学します!

エア4種  モーグルの華といえば、豪快なエア!競技では第1エアと第2エアと2回のエアがあり、それぞれ違う技で飛ばなければなりません。代表的なエアは、難易度0.77、立ち技の王道「コサック」、難易度1.20、横回転の「ヘリコプター」、同じ難易度の後ろ回転「バックフリップ」、そして難易度1.43、斜め回転系の「3Dエアー」の4種類。それぞれの難易度にエアの完成度を掛けたものが得点として加算されます。
 しかし、最近の大会を調べてみると、なんと81%の女子選手が第1エアではヘリコプター、第2エアではバックフリップという比較的簡単なエアの組み合わせを選択していたのです。理由をプロのコーチに伺うと、モーグルは高難度のエアを決めただけでは勝てず、さらに、エアによってスピードが変わるというのです。真相を確かめるため、矢野さんは福島県のスキー場へ。コースのスタート地点から10m下にエア台を設置し、一流のモーグル選手にヘリコプター、バックフリップ、3Dエアーの3種類飛んでもらい、着地後のスピードを比較しました。結果、2回飛んだ平均時速は、ヘリコプターは37.5km、バックフリップは41.1km、3Dエアーは39.1kmでした。さらに踏切りの瞬間をスローで見ると、最速のバックフリップが一番に空中に飛び出し、スキー板も進行方向に真っ直ぐ入っていました。それに比べ、板を斜めにずらして踏み切る3Dエアーと、ハの字で踏み切るヘリコプターは減速。さらにこの2つは、空中で複雑な姿勢をとらなければならず、どうしても速度が落ちてしまうのです。実は、モーグルの審査は、ターン50%、スピード25%、エア25%の三大要素の総合点で勝敗が決まるため、エアで大技を決めるだけでは勝てない競技なのです。そして、ヘリコプターが第1エアで多く選ばれる理由は、スピードが遅い分、先に続くコブの手前で安定した姿勢で着地でき、滑りが整うためだそうです。

所さんのポイント
ポイント1
モーグルの採点では、エアによるポイントはわずか25%。豪快なエアを決めるだけでは勝てないのだ!

 さて、エアと同じく25%を占める「スピード」。真っ直ぐ滑れば一番速いはずですよね。そこで、番組ADが最大傾斜34度のモーグルコースにソリで挑戦!すると…コブに突入した途端、弾かれ転倒。コブは深さ90cmもあり、真っ直ぐ滑れないのです。でも、スピードスキーのプロなら速く滑れるはず。そこで男子アルペン選手と、女子モーグル選手に協力してもらい、30個のコブがある150mのモーグルコースでスピード対決!その結果は…16秒88でモーグル選手が5秒差をつけ圧倒的勝利。2人の滑りをVTRで検証してみると、モーグル選手はアルペン選手に比べ、細かいターンをすることでほとんど頭がぶれず、無駄なく直線的に滑っていました。コーチによると、モーグル選手が持つこの能力は、不安定な場所でこそ真価を発揮するといいます。そこで、モーグル選手、新体操選手、馬術選手、社交ダンサー、バランス自慢の4種目の一流選手を集めアミューズメントパークの猛牛ロデオマシーンでバランス力対決です。猛牛に足を置くあぶみを設置し、頭の上に乗せた皿にピンポン球を6つ入れ、全てが落ちるまでのタイムを競います。ロデオマシーンのモーグル選手(記録01:02)すると、新体操選手は4秒、馬術選手は6秒、社交ダンサーは9秒でした。そして、本命のモーグル選手はなんと驚異の1分2秒を記録!2回目も59秒という結果で、実力を証明。本人は、頭を動かさずに下半身で吸収する動作がモーグルと似ているので、楽勝だとけろり。ちなみに、アルペン選手にも挑戦してもらうと、結果は25秒でモーグル選手には及ばず。モーグル選手は上手くヒザや足首を使って超人的な吸収動作ができるため、コブのコースを直線的に滑ることができるんです!美しいターンはスピードにも結びつくので、この技術が勝敗を大きく左右するのです。

所さんのポイント
ポイント2
モーグル選手は、下半身の柔軟性や筋力を活かした超人的な吸収動作で、大きなコブがあるコースを直線的に滑れるのだ!

 モーグルの競技中に、大会側が観客を盛り上げるために流している音楽。この音楽は、選手に影響を与えるのでしょうか?そこで、現役のモーグル選手4名にコブが50個ある230mのコースを、様々な音楽をバックに滑ってもらいます。用意したのは、TMレボリューションの「ホワイトブレス」、ゲレンデ曲の定番「ゲレンデがとけるほど恋したい」、冬の名曲「なごり雪」 です。まずは女子選手に、無音で滑ってもらうと、タイムは33秒45。そして「なごり雪」をかけると、タイムは無音より遅い34秒16。続いて「ゲレンデ…」では、なんと31秒10の好記録!さらにアップテンポの「ホワイトブレス」では…まさかの転倒、さらにコースアウトし、記録は1分9秒。他の3選手の平均でも、なぜか「ゲレンデ…」のタイムが一番でした。選手に感想を聞くと、「ゲレンデ…」のテンポとコブのリズムがピッタリだったと言います。音楽は、無意識にターンのリズムを取る要素になっているようです。ちなみに、4選手の1分間のターン数の平均は111・4回。「ゲレンデ…」の一分間のリズムは126bpm。競技中の音楽は、ターンよりやや速いテンポの曲が理想なのかもしれません。



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