ホテル
が乾燥し暗い訳
第1080回 2011年4月30日
旅行で誰もがお世話になる、
ホテル
。しかし、街ではホテルに対する色々な不満が聞かれました。そこで今回はホテルにまつわる疑問を科学で解明します!
①ホテルのベッドは寝づらい!?
街で多かった、ホテルのベッドはシーツがぴったりしているから寝づらいという不満。では、シーツを2枚重ねてマットの下に挟み込む、ホテル流のベッドメイクはどれほど寝づらいのか実験です。いびきをかきやすいという男性2人に、まずは上のシーツが挟まっていない状態で寝てもらいます。すると、夜11時に消灯した途端、それぞれわずか4分と10分でいびきをかき始め、朝までぐっすり眠り続けました。そして翌日の夜、同じ2人に、今度は
上のシーツをマットに挟んだままの状態で眠ってもらいます。すると…2人とも、いびきをかき始めるまで、それぞれ28分と44分もかかってしまいました。
実際に、睡眠中の脳波を比較すると、シーツを引っ張り出した初日の方が、寝入りも早く、その後も起きることはありませんでした。では、なぜわざわざシーツを下に挟むんでしょう?専門家に伺うと…
欧米式に土足で部屋に入るホテルは、衛生面から、上のシーツが寝る前にずれ落ちて、床に触れるのを防ぐために挟んでいるそうです。つまり、寝る時は上のシーツを引っ張り出すのが正解。
では、上のシーツはなぜ必要なのでしょう?専門家に伺うと…欧米人は裸で寝る習慣があるためだとか。実際に欧米人の方々に聞いてみたところ、20人中6人が常に裸で寝るとの答え。
そこで、こんな実験!同じ男性に、ホテルのベッドに裸とパジャマ着用で一晩ずつ眠ってもらい、それぞれ上のシーツを回収し、汗や皮脂に反応する薬品をかけてみました。すると…
パジャマで寝たシーツは一部しか汚れていなかったのに、裸で寝た時のシーツは、身体の形がわかるほど汚れが広がっていたのです!つまり、上のシーツは、この汚れから掛け布団を守るために必要だったのです。
ホテルのベッドに上のシーツがある理由は、裸で寝る欧米の習慣に合わせたもので、掛け布団の汚れを防ぐ役目を果たしていた!
②ホテルは暗い!?
さて、街では、ホテルが暗いという不満も多く聞かれました。そこで、どれほど暗いのか調査です。まずは比較のために、3軒の旅館の室内にある机の上で明るさを測定した結果、平均はおよそ280ルクスでした。
一方のホテルは、5軒で明るさを測定した結果、平均でおよそ120ルクスと、旅館の半分以下だったのです。
これだけ暗いと、不便そうですよね?そこで、こんな実験です。男性2名に、まずは旅館の平均的な280ルクスに設定した机の上で、30分間で300問の計算問題をできるだけ解いてもらいます。そして日を改め、机の上をホテルの平均的な明るさの120ルクスに設定して全く同じ計算問題を解いてもらいます。すると…2度目なのに、2人とも前回よりも点数がダウン。やはり、暗い照明では作業効率が悪いようです。では、なぜホテルは暗いんでしょう?専門家に伺うと…部屋の明るさが睡眠に影響するとのこと。一体どういうことなのか、こんな実験です!2人の男性に、旅館の枕元の平均、250ルクスに設定した部屋で、夜10時から1時間ベッドの上でくつろいでもらいます。その後消灯し、ベッドに入って寝入るまでの時間を脳波計で確認します。すると…それぞれ10分後と、22分後に眠りにつきました。そして後日、今度はホテルの枕元の平均、60ルクスに設定した部屋で、同じ条件で再び眠るまでの時間を測定します。すると…なんと1人はわずか1分で眠り、もう1人も5分で夢の中へ。2人ともホテルの明るさで過ごした方が早く寝入ったのです。実は、これこそがホテルの部屋が暗い理由。
ホテルでは仕事をするためではなく、より眠りやすくなる環境を作っているのです。専門家によると、暗い場所で過ごすと、眠りを誘うホルモン・メラトニンが分泌されやすく、身体が眠る準備を整えるそうです。一方、旅館が明るい理由は、客室が、食事をする居間の役割も持っているためなのです。
③ホテルは乾燥している!?
ホテルの悩みで多いのが、女性の大敵、乾燥。実際に、ホテルは乾燥しているのか、
外の湿度が46%の日に、旅館とホテルそれぞれ3軒で湿度を測定してみると…旅館の平均湿度は47%だったのに対し、ホテルの平均は26%と、本当に乾燥していました。
さらに、旅館とホテルの室温を25℃に設定し、100gのホウレンソウを8時間放置したところ、ホテルのホウレンソウはみるみるしおれ、実験後に重さを比べると、旅館では5gしか減っていないのに、ホテルでは4倍近い19gも水分が抜けてしまったのです。この理由を専門家に伺うと…ホテルは防音性を高めるにつれ、乾燥してしまうんだとか。そこで、こんな実験!ホテルと旅館の部屋の壁から1mの場所で音を出し、隣の部屋で矢野さんが聞こえるか確かめます。
まずは旅館で目覚まし時計を鳴らしてみると…騒音計では約5デシベル上昇し、矢野さんも気付きました。一方ホテルでは…矢野さんは、鳴ったのに気付かず、騒音計もほぼ変化なし。続いて、風船を割ってみると…旅館では約37デシベル上昇しましたが、ホテルでは約6デシベル上昇と、矢野さんにもやっと聞こえた程度でした。そこで、
乾燥と防音の関係を専門家に伺うと…ホテルでは隣室の音を漏らさぬよう、分厚いドアやガラスなどを使い、建物の気密性を高めているそうです。その結果、外から室内に湿気が入ることがなく、エアコンを使って湿度が下がると、乾燥したままになってしまうのです。
ホテルの部屋が乾燥しやすいのは、隣の部屋の物音が聞こえないように、気密性を高めているからだった!