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中華料理ウマさの秘密
第1167回 2013年3月2日


 中華料理や中国料理に分類されるお店は、全国で56541店。これは日本料理のお店より多い軒数。そんな中華料理のイメージと言えば「早い」、そして「油っこい」。そこで『中華料理は“なぜ早いのか?”』『本当に中華料理は“油っこいのか?”』大研究!さらに、『プロ秘伝!家庭でもできる中華をおいしくする裏ワザ』も紹介!今回は、美味しい楽しい奥深い“中華料理”の科学です。

①なぜ中華料理は早くできるのか?その秘密を徹底検証

 中華料理はどれくらい早くできるのか?横浜中華街に店を構える創業87年の老舗「一楽」で“エビの玉子炒め”を注文しテーブルに届くまでの時間を計ってみました。結果は1分8秒。他に“五目炒飯”の出てくる時間を測ってみると1分44秒でした。どうしてそんなに早く料理を作る必要があるんでしょうか?専門家によると、中華料理は素早く火を通す事によって素材のうま味や食感を最大限に生かす料理というのです。つまり、美味しさには早さが必要不可欠だったんです!

 早さの秘密は中華ならではの調理器具“中華鍋”にあります。中華料理はメニューのほとんどを中華鍋ひとつで作りますが、その理由は鉄製のため高温にも強く、激しくかき混ぜる調理法に一番適しているからです。また、鉄は熱を蓄える力が大きいため、一旦温度が上がるとなかなか下がりません。さらに、丸い鍋の形は熱の対流が全体的に均一になり温度が全体に行き渡るのです。鍋を振り、食材を大きく動かす調理法は、中華鍋だからできるテクニックだったんです。

 そして、中華を素早く調理するのに必要不可欠なのが“油”。油を使って作ったチャーハンと油を使わないチャーハンを、調理時間・火力を同じ条件で炒め温度を計ってみました。すると油を使った炒飯は炒め始めて1分後100℃に達しましたが、油を使わない炒飯は60℃前後にしか温度が上がらなかったのです。専門家によると、炒める時に入れる油が食材全体に回り一気に加熱されたということでした。ちなみに、火を消した後、油を使っていない炒飯の温度がみるみる下がったのに対し、油を使った炒飯は10分経っても温度が下がらず熱々の美味しさが続きました。

所さんのポイント
ポイント1
油が食材全体にまとわりつき高温ですばやく料理できる!しかも冷めにくいというメリットまであるのだ!

②中華料理ならでは調理方法“油通し”がおいしさのキモ

 あまり聞きなれない“油通し”について、現存する日本最古の中国料理店「聘珍楼」の総料理長に、「チンジャオロース」を例に説明してもらいました。

1.まずお玉にすくった“油”を熱した中華鍋にたっぷり2杯。
2.そこへ、細かく切って下味を付けた豚肉を投入し、10秒程でいったん鍋から上げます。
3.続いて、新しい油を入れ、ピーマン、タケノコなどの具材を油にサッとくぐらせて、またすぐ上げます。
4.その後、一度、油をくぐらせた肉、野菜を鍋に戻し、炒めながら味付けすればチンジャオロースのでき上がり。

 炒める前に具を油に一度入れる“油通し”。一般の人に試食してもらい、どちらが美味しく感じるか判定してもらいました。その結果は、10人中8人が油通ししたチンジャオロースの方がおいしいと答えました。どうして油通しでおいしくなったのか?専門家に尋ねると、熱い油に食材を入れると短い時間で食材全体の表面が焼けて硬くなり、食材の水分や栄養素が逃げずに残るので食感も良くなるのだそうです。

 でも、大量の油を使う“油通し”は油っこくならないのでしょうか?100gずつのピーマンの千切りにして、「A」のピーマンは油通し、「B」のピーマンは油通しをせず、同じ条件で炒めてみました。鍋に残った油の量を計測すると、「A」の油通しをしたピーマンは41gの油が残ったのに対して、「B」の油通しをしないで炒めたピーマンは26gしか残っていませんでした。つまり「B」の方が油を吸っていたのです。その理由を専門家に尋ねると「油通しをした素材の表面は収縮し硬くなっていますから、余分な油も染み込まずにすむ」ということでした。

所さんのポイント
ポイント2
“油通し”をすると逆に油っこくならないのだ!

③家庭でも“油通し”と同じ効果が得られる裏ワザ

 大量の油を使う油通しを家庭でするのは大変そう。そんなに油を使わず、家庭で簡単に油通しと同じ効果が得られる方法はないでしょうか?専門家に尋ねると「お湯を湧かしてそこに油を入れてさっと湯がくだけでも同じ効果が得られる」とのことでした。家庭用の鍋なら、沸騰したお湯に大さじ2杯の油を入れ、野菜の量にもよりますが30秒ほど茹でればOK!たったそれだけで油通しと同じ様な効果が得られるというのです。

 本当に効果はあるのか?実験しました。まず作ったのは、油通しをしないで、生から炒めた「A」の野菜炒め。続いて、油を入れず湯通ししただけで炒めた「B」の野菜炒め。そして専門家の裏ワザを使って炒めた「C」の野菜炒め。この3つを一般の人に比較してもらったところ…
 「Cが一番シャキシャキしていた」
 「Cです。Bは柔らかかったんでフニャフニャした感じ」
 「AとBは最初シャキてなりましたけどすぐ柔らかくて」など
 結果は、お湯に大さじ2杯の油を入れて作った「C」の野菜炒めが食感も良く一番美味しいという評価になりました。なぜこれほどの違いが出たのでしょうか?専門家によると、食材をすくいあげた時に表面に浮いている油が材料そのものの外側をコーティングするので、油っこくなく、油通しと同じ様な効果が得られるということでした。ちなみに、この裏ワザは野菜を半生の状態でお湯から上げ、余熱で火を通すのがコツだそうです。



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