知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


牛肉 の科学
第1176回 2013年5月5日


 今年初め、アメリカ産牛肉の規制が緩和されて、これまで以上に牛肉が日本に輸入されています。お陰で大手スーパーでは牛肉が大幅に値下げ中。これは、牛肉をお手頃に食べるチャンス!
 本日の目がテンは、今話題の熟成肉のおいしさの秘密から、家庭で作れる絶品牛肉料理まで、牛肉をおいしく食べる方法を科学で徹底解明します。

 ①牛肉をおいしくする「熟成」の効果とは?
 ②炊飯器で牛肉がおいしくなる!?
 ③プロも推薦!ステーキをおいしくする裏技

①牛肉をおいしくする「熟成」の効果とは?

 実は、普段お肉屋さんに並んでいるお肉は、食肉になってすぐ店頭に並ぶわけではなく、市場で加工した1週間後にお肉屋さんに出荷され、さらにお肉屋さんでも、冷蔵庫で1週間寝かせています。つまり、牛肉は食肉になってから、2週間も時間を置いて売られているんです。
 この工程を「熟成」と言います。果たして味に違いはあるのでしょうか?

 そこで、A「食肉にして間もない牛肉」B「2週間熟成した牛肉」を食べ比べ実験。味の違いがわかるよう、ステーキにして食べてもらったところ・・・  なんと10人中8人が「Bのお肉が美味しい」と判定!では、なぜ牛肉は熟成するとおいしくなるのか?専門家に伺うと、「熟成によって硬い肉が酵素の作用で分解されて肉が柔らかくなる」という。

 が、ここで牛肉をさらに美味しくさせる凄い方法を発見!それが・・・ 「ドライエイジング」。
 ドライエイジングの期間は1ヶ月以上、普通のお肉屋さんの熟成期間の約2倍!カビが生えるほど置いたこのお肉、専用の冷蔵庫で有害な菌が繁殖せず、かつ肉が凍らないギリギリの温度3〜5℃をキープし、湿度は60℃前後に設定。そして、風を送りながら内部のお肉を熟成させていきます。
 では、ドライエイジングでどれほどお肉がおいしくなっているのか?
店頭で売られている牛肉と、ドライエイジングした牛肉を、それぞれ、うま味成分である「グルタミン酸」の数値を測ったところ、なんと!ドライエイジングしたお肉は、普通の牛肉の1.5倍ものうま味成分が検出されたんです!

所さんのポイント
ポイント1
ドライエイジングをすると、お肉のうま味成分の一つである「イノシン酸」の量も増え、このイノシン酸がグルタミン酸とかけあわさることで味の相乗効果が生まれ、何倍にもおいしく感じるのだ!

②炊飯器で牛肉がおいしくなる!?

 家庭でも熟成させておいしく食べる方法はないのか?専門家に伺うと、「低温調理法を行うと熟成の似たような効果が家庭でもできる」という。これは、特殊なオーブンなどを使い、60℃前後の低温で牛肉を加熱する調理法。牛肉の酵素は、この温度で最も活動すると言われており、お肉の中心温度が60℃前後になると熟成と同じような効果が得られるんです。
 そこで、家庭で、温度を一定に保てる調理器具を探してみると・・・ ありました!保温温度を60℃前後で保ってくれる「炊飯器」!

炊飯器を使えばおいしく出来るのでは!?
料理のプロに炊飯器でステーキを作ってもらいました。

〜手順〜
①牛肉の表面を焼く
②全面に焼き色がついたところで、市販の保存用パックにいれる
③ストローを使って空気を抜き、きっちり密閉
④少し冷めることを考え、70℃程度のお湯をはった炊飯器に入れ、保温ボタンを押す

今回使用したのは120gのお肉(この場合、15分保温します)
調理終了後、お肉の中心温度を測ると、54.2℃。
切ってみると、中がピンク色でおいしそうに出来上がっています。

そこで、食べ比べ実験!
A「炊飯器で調理したお肉」、B「焼いただけのお肉」を10人に食べてもらったところ・・・ なんと10人中9人が、A「炊飯器で調理したお肉」がおいしいと判定!!

所さんのポイント
ポイント2
食材とお湯の間に「空気の層」があると、お湯の熱が食材に伝わりづらいため、ストローを使ってしっかりと空気を吸い取ることが大事なのだ!

③プロも推薦!ステーキをおいしくする裏技

 一体どうやったら、家庭でもステーキをおいしく作れるのか?肉料理のプロに聞いてみると、「ポイントはお肉を休ませること」だとか。
 そこで、実際にステーキを焼いてもらいます。比較のため、一般の主婦にも焼いてもらいました。使う牛肉はもちろん同じ、重さも揃えました。そして焼くこと約5分。

 A「プロが焼いたステーキ」 B「主婦が焼いたステーキ」を、ステーキにうるさい男女5人に食べ比べてもらうと・・・ なんと! 全員A「プロが焼いたステーキ」の方がおいしいと判定!二人はほとんど同じ焼き方をしていたはずなのに、どうして味に違いが出たのか? 実は“焼き終わった後”に秘密が!

 プロは焼き終わった後、お肉をアルミホイルの上に置き、手早く包んでいたんです。これはどういうことなのか?プロに伺うと、「アルミホイルに包み肉を休ませると、肉のうまみを中に閉じ込める効果がある」という。お肉を休ませると、うま味を閉じ込められる!?一体どういうことなのか実験!

 まずはA・B両方の牛肉を焼き、Bのお肉は、焼き終えたら休ませずにバットに移し、そのまま切ります。一方、Aのお肉はアルミホイルに包み、休ませてから切ります。すると、Bのお肉からは、お肉の“うま味”である肉汁がたくさん出てしまいました。一方、Aのお肉からはほとんど肉汁が出なかったんです。
 この理由を専門家に伺うと・・・「加熱して肉の温度が高くなると、水が活発に動き出します。これが熱々の肉を切ると肉汁が出てしまう原因。お肉を休ませると温度が下がり、水分の動きが鈍くなり、肉汁が出にくくなる」という。
 この方法を実践しているのが、鉄板焼き屋さん。実は、鉄板焼き屋さんでは、お肉を高温の鉄板から50℃程度の鉄板に移動させ、休ませていたんです。焼いた後、お肉を休ませて肉汁を外に逃さないことが、ステーキをおいしくする秘訣だったんです!

所さんのポイント
ポイント3
お肉が冷めきってしまうのを防ぐため、家庭でやる時にはアルミホイルを使って“保温しながら休ませる”こと!そして、“焼いた時間と同じ時間休ませる”ことも大事なのだ!




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