ハダカデバネズミ
の科学
第1178回 2013年5月19日
行楽シーズンの人気スポット「動物園」。ここで今、熱い注目を浴びる動物がいるんです。それが、一度見たら忘れられないブサカワ、キモカワ動物の代表「ハダカデバネズミ」。ぬいぐるみや缶バッジなどのグッズも登場し、今や動物園の影のアイドルとなったハダカデバネズミは、知れば知るほど面白い動物だったんです!
本日の目がテンは、大人も子供も見たら釘付け「ハダカデバネズミ」の驚きの生態を科学します。
①人気者ハダカデバネズミ!驚きの生態に迫る
②ハダカデバネズミ「出っ歯」に隠されたヒミツ
③ハダカデバネズミが世界で注目されるワケ
①人気者ハダカデバネズミ!驚きの生態に迫る
ハダカデバネズミは、エチオピア・ケニアなどの東アフリカが主な生息地で、地下の巣穴で80から300匹の群れを作り生活しています。
アリの巣と同じで、多くの部屋がトンネルと結ばれており、地表に近いところには、餌の芋などに行き当たるトンネル、深い場所には、トイレや寝室などの生活スペースが作られています。上野動物園には、これを再現した巣穴で、現在50匹の群れが暮らしています。
とここで、寝室に注目!
寝室では、みんなが重なって寝ており、この一番上に乗っている、背中に緑色の印がついているのが女王さま。
ハダカデバネズミの社会は、群れで唯一子供を産む女王さまを頂点とし、女王と子供を作るオス数匹が王様、さらに兵隊階級に労働階級と4つの階級に分かれているといいます。
そこで、階級によってホントに仕事が違うのか実験!
いつもは何もないキレイな部屋におがくずを置いてみると・・・気づいたデバたちが数匹やってきて、後ろ脚でおがくずを蹴り出した!
実は、彼らは労働階級のデバたちでお掃除をしていたんです!
続いてもう一つ実験。飼育員さんに頼み、巣の中にカメラを設置すると・・・ なんとカメラを置いた部屋に向かって何匹かが動き出した!集まってきたデバたちを見ると、ちょっと体が大きい。
彼らこそ、兵隊階級のデバたち!不審なものが巣に侵入したので偵察しに来たんです。
では、トップに君臨する女王は一体どんな暮らしをしているのか?
埼玉の動物園では、女王を中心とした10匹の小さな群れで生活しています。さっそく観察してみると・・・ なんと!女王が他のデバを攻撃し始めた!ハダカデバネズミの社会は、下克上が起こる社会。女王は少しでも気を抜くとその命を狙われるため、動きまわって巣穴を見守り、自分の力が上であることを示していたんです。
では、この勇ましい女王さまの相手をする王様は、さらに勇ましい存在なのでは!?その姿を見てみると・・・なんとやせ細って弱そう!
実は、1つの群れに、1匹から3匹しかいない繁殖階級の雄は、女王様の子作り要求で体力を奪われ痩せ細ってしまうのだとか。
ハダカデバネズミの社会は、女王、繁殖階級の王様、兵隊、労働と役割が決まっており、このような社会を「真社会性」と呼ぶのだ!
②ハダカデバネズミ「出っ歯」に隠されたヒミツ
ハダカデバネズミはものすごい勢いで歯で土を掘り、足で後ろにかき出していますよね。でも、こんな勢いで土を歯で削って、泥だらけにならないの?そこで、ハダカデバネズミの骨格標本を見てみると、鼻のすぐ下から歯が大きく突き出しています。つまり、口の中に歯があるのではなく、出っ歯が唇を突き破って生えている状態だったんです!
そのため、出っ歯で地面を掘っても、口の中に土が入ってこない構造になっていたんです。
さらにもうひとつ、出っ歯に関して発見が!
餌を食べているところを見てみると、かなり大きな芋の塊を出っ歯で持ち上げている。この出っ歯、相当力があるのでは!?
そこで、体重50gのハダカデバネズミに50gのニンジンを与えてみると・・・ 自分の体重と同じ重さのニンジンを口だけで動かしたんです!
一体なぜこんなことができるのか?出っ歯を観察していると、なんと下の歯が左右に動いています!これが秘密なのか、げっ歯類の専門家に伺うと・・・ 「普通は下の歯は開かない状態だが、ハダカデバネズミの下の歯が開く。ということは、かじる・運ぶなど、普通のネズミよりいろいろな用途があるかもしれない」という。
確かに、下の歯を左右にひらいた方が安定して持ち上げられます。
つまり、土を掘るだけでなく、エサなどを運ぶ上でも、出っ歯は役立っていたんです。
ハダカデバネズミはとにかく“群れ”が大切なので、「女王様や仲間のためにエサを運ぶ」という他のネズミにはないような行動を取るのだ!
③ハダカデバネズミが世界で注目されるワケ
驚くほど長寿なハダカデバネズミ。その平均寿命はなんと28年!ハツカネズミなどの10倍以上生きるんです。そして今、世界からあることで、熱い注目を浴びています。
それは・・・「ハダカデバネズミはガンが見つかったことが一度もない」
2009年、アメリカの世界的科学雑誌「PNAS(ピー・エヌ・エー・エス)」に、ハダカデバネズミとガンに関する研究論文が発表されました。
そもそもガンは、細胞がコントロール不能になり異常な増殖をしたもの。研究によると、ハダカデバネズミの場合、細胞の増殖を必要最小限に抑えるシステムがあるため、ガンになりにくいことがわかったんです。
さらに、ある驚くべき記録を持ったハダカデバネズミがいるという情報を聞きつけある場所へ向かうと、そこで目にしたのは・・・推定年齢40歳のスーパーご長寿!引退した元女王だそうです。
長寿でガンにならない!ハダカデバネズミには、人類の夢を実現する可能性が秘められているのかもしれません!
ハダカデバネズミの長寿の秘密の一つとして考えられているのが、「基礎代謝の低さ」。土の中で体温調整がいらず、体毛を生やす必要がない。生きるためのエネルギーが少なく済むため、長寿になれるのだ!
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