ラップ
の科学
第1199回 2013年10月20日
身近だけど意外と知らないキッチンの必需品「ラップ」の疑問を科学で解明!
①数あるラップ何が違う?…ニオイ漏れを防ぐラップ
日用品を扱うホームセンターの台所用品コーナーには、いろんなラップがズラリ!しかも、その値段もバラバラ。街の人に意見を聞いてみると、「安いのはくっつかないイメージがある。」「伸びたり伸びなかったり。」「柔らかさやハリが違う」など、使い勝手の違いを感じている様子。その違いはどこから来るのか?専門家によると「そもそも作られている素材、原料が違う。」とのこと。「ポリ塩化ビニリデン」「塩化ビニル樹脂」「ポリメチルペンテン」「ポリエチレン」といった異なる材料がある。実は、原料の違いよって得手不得手、性能が違うんです。ラップに求める性能といえば、ラップをかけて冷蔵庫などに保存する時、ニオイが漏れないか。電子レンジでチンするときに熱に耐えられるか。密封状態にするためにしっかり器にくっつくかなど。では、どのラップがそれらの性能に優れているのか対決!まずは、ニオイ漏れを防ぐ力!
材料が異なる4種類のラップを用意し、それぞれ同じサイズにカットし、おろしニンニクが入った器を隙間が出来ないようにしっかりと包みます。それをニオイが隣に移らないように仕切りを付けた箱にセット。買い物客で賑わうショッピングモールで、箱から伸ばしたホースの先からそれぞれの臭いをかいでもらいます。その結果…一番ニオイが漏れていなかったのは、Aの「ポリ塩化ビニリデンのラップ」でした。では、このポリ塩化ビニリデンのラップ、ニオイを漏らさない力はどこまでスゴイのでしょうか?動物専門学校でさらに実験です。 協力してくれるのは警察犬や災害救助犬の訓練を受けたこの犬。先ほど一番ニオイがしなかったと言われた塩化ビニリデンのラップと、ニオイが漏れていたと言われたその他のラップを用意。この2つのラップでそれぞれ犬の好物のチーズを隙間が無いようしっかり包み、地面に置いたビンの中に入れます。犬はチーズのニオイがするビンの前に座ります。人間よりはるかに鼻がいい犬でもわからないほどニオイは漏れていないのか?実験スタート!
結果は、先ほどの実験でもニオイが漏れていたと言われたラップ。つまり、塩化ビニリデンのラップからは犬もチーズのニオイを嗅ぎ取れなかったということ。ならば、15個のビンを用意し、そのうち塩化ビニリデンのラップが14、その他のラップはたったの1つにセットしました。
もし塩化ビニリデンのラップからニオイがすれば、Aのビンを選びます。その結果、選んだのはやはりBのその他ラップ。やはり、塩化ビニリデンのラップは犬でもわからないほどニオイを漏らさないということなんです。
ラップは分子がつながって繊維状になっていて、この分子の隙間から水や空気が通り抜けると、乾燥やニオイ漏れにつながるんです。ポリ塩化ビニリデンは、この分子の隙間が他の素材のラップよりも狭いために乾燥や臭い漏れを防ぐ性能が高いというわけなんです。
ただ分子の隙間が広い方のラップには、適度の通気性があって野菜などの呼吸を妨げないというメリットもあるのだ!
②数あるラップ何が違う?…一番熱に耐えるのは?
ラップといえばよく使うのが電子レンジで食べ物を温めるとき。でも、レンジで食べ物を温めた時、ラップが溶けたり破れちゃったりしてガッカリしたことありませんか?そもそも電子レンジであたためると食べ物がどのくらいの温度になるのかを測ります。まずは油の多い豚の角煮の温度は3分程で、150度にも達したんです。では、ラップは何度まで耐えられるのか実験です!
材料の違う4種類のラップを同じ長さと幅に切って用意。そこに重りをぶら下げてこの様な状態にします。ラップにかかる重さはすべて10gで統一。これを260℃まで温度が上がる実験装置に入れて、何度になったらラップが切れるか観察します。加熱スタート!
温度が次第に上昇。すると100℃を少し超えたところで…ポリエチレン製のラップが破れて落ちました。さらに温度は上がり、120度を超えたところで、今度はポリ塩化ビニルで作られたラップが脱落。最もニオイが漏れなかったポリ塩化ビニリデンのラップは160度の手前で落下!残ったのはポリメチルペンテンを材料にしたラップは180℃を超えたところで伸びきって実験器具の底についてしまいました。結果、ラップはどれも100度から180度ほどで使えなくなってしまうことがわかりました。これでは安心してラップでチンができません。なので、レンジで温める時のポイントはラップを油分の多い食品に直接つけないこと。深めの器に入れてラップと食品がくっつかないようにすれば、溶けたり破れたりすることを防げるんです。
ラップのパッケージには耐熱温度も書いてあり、中には耐熱性の高さをウリにしているラップもありまるのだ!
③数あるラップ何が違う?…一番くっつくラップは?
なんでラップはくっつくんでしょうか?専門家に伺うと「物をつくっている分子同士が引き合う力、分子間力というものがあり、百万分の1mmという、とても近い距離まで近づいた時に発生するとても弱い力。ラップが張り付くのは表面が平らでラップとコップが密着して分子間力がたくさん働くため」とのこと。では、このくっつく力もラップの種類によって違うのか実験です。
材料の違う4種類のラップを同じ大きさにカットし、スープが入ったラーメンのどんぶりにフタをするようにくっつけます。ラップをかけた状態で1000gになるように全てのどんぶりを調整し、これを真っ白なさらしが敷いてある岡持の中に入れて趣味でフルマラソンを走るという青年が日本テレビの1階から30階まで階段でデリバリー。スープのこぼれ方でそれぞれのラップのくっつき力を比較します。
まずは、ニオイを一番漏らさないポリ塩化ビニリデンのラップ。くっつく力でも優秀なのか、岡持ちを片手に順調に階段を駆け上がります。その頃、岡持の中ではラーメンスープが激しく暴れていました。30階に到着し岡持ちの中を見ると、下に敷いた白いさらしが全体的に茶色くなるほどスープがこぼれていました。続いて、業務用ラップとして飲食店やスーパーで使われることの多いポリ塩化ビニルのラップ。やはり、スープは大暴れ。でも、白いさらしには、シミ1つありません!さらに、2往復、違う材料で作られたラップで覆ったどんぶりを持って駆け上がります。そして、ようやくすべての出前が完了。
その結果は…4つのどんぶりの重さを量り、最初の1000gに最も近かったラップがくっつき力の高いラップということ。まず、ポリ塩化ビニリデンのラップは重さ757gと大幅減少。業務で使われることが多い、ポリ塩化ビニルはなんと、999gほぼそのまま!残りの2つのラップの結果はご覧のとおり。くっつき力が1番強かったのは業務用に多いポリ塩化ビニルでした。ポリ塩化ビニルのラップは柔らかくて良く伸び縮みする特徴があるんです。
ポリ塩化ビニルのラップは収縮性でくっつく力が強いため、飲食店やスーパーの肉や魚を包む際によく使われるのだ!
④ラップはどれだけ丈夫?
ビニリデンのラップを両手で広げてこんな実験。こぶしを押し当てると破れないのに、広い力だとなかなか破れないこのラップ。はたして、その強さとはどれだけのものなのか?製品化される前の巨大ラップで大実験!
サッカー場に巨大なクレーンを用意。厚さ0・01mm!空飛ぶジュータンでユージを飛ばそうプロジェクト!もちろん万が一に備え、プロテクターと命綱を装着。さらにラップの1点に力がかからないよう、たわまない木の座布団に座ります。ユージの体を支えるのはラップだけ!
その結果・・・実験は大成功!そして宙に浮いたユージは大絶叫!ちなみにこのラップ点での力は弱く指で刺すとすぐ破れてしまいました。
ラップは人を持ち上げられるほど丈夫なのだ!
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