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本当はすごい研究 生き物編
第1200回 2013年10月27日


 先日、ノーベル物理学賞に輝き話題となった、ヒッグス粒子の研究や、昨年、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のiPS細胞の開発など、日夜、様々な研究が行われています。 ということは、今この瞬間にも行われている、一見何のためかわからない研究も、よくよ く聞くと、大発見につながるものがきっとあるはず!そこで本日の目がテンは、よくよく聞くと本当はすごい研究スペシャル第1弾「生き物編」をご紹介。

 ①身勝手な人が嫌いなサル!?
 ②フサオマキザルは協力できるのか?
 ③人類の若返りにつながる?ベニクラゲ“若返り”の仕組みとは!?

①なぜフサオマキザルは身勝手なヒトを嫌う?

 まず最初に紹介するのは、京都大学文学研究科心理学研究室の藤田和生教授。実はこの先生、なんと「身勝手な人が嫌いなサルがいる」ということを発見したそうです。では一体、どういう研究なのでしょうか?

 やって来たのは京都大学。さっそく藤田教授によくよく聞いてみると・・・現れたのは「フサオマキザル」。実はこのサル、中央アメリカから南米のコロンビア、ブラジルまで広く生息しており、「南米のチンパンジー」と呼ばれるほど頭がいいんだそうです。藤田教授は、このサルの「心」を研究しているというんです。フサオマキザルは、訓練すると人間とコミュニケーションが取れるほど社会性があるため、アメリカでは介助ザルとして活躍しているんです。藤田教授は、このサルの社会性、つまり“群れでいる時の心の動き”を研究し、『身勝手な人を嫌う』ことを発見したんです。

 それを証明するのがこんな実験!2人の研究員の手元にはボールが3つあり、研究員Bが空き箱を差し出すと、研究員Aはボールを全てあげます。しかし、研究員Aが空き箱を差し出すと、研究員Bはボールをくれません。つまり、研究員Bが身勝手な人だという演技をサルにみせるんです。この後、2人の研究員が同時にサルにエサを差し出したら、どちらの研究員からエサを取るのか?という実験なんです。

 まずは、目の前の研究員の演技を、フサオマキザルはじっと見ています。そして、研究員Bがイジワルな演技をした時も、しっかりと研究員Bをチェック。そう!この実験、サル自身が直接イジワルをされているわけではなく、この後両方から同じエサを差し出します。もしサルが身勝手な人を嫌うのなら、身勝手な研究員Bを避けて、身勝手じゃないAのエサを取るはず。すると・・・なんと!ボールをあげなかった身勝手な研究員Bを避け、Aのエサをとったんです。実は、藤田教授は、これまでおよそ500回もこの実験を繰り返し、研究員Aからは57%、身勝手な研究員Bからは43%の割合でエサをとり、その差は14%。このサルが、身勝手な人を避けるという、人間と似た社会性を持つことが分かったんです。

所さんのポイント
ポイント1
「嫌なヤツ」「良いヤツ」などの評判を作る感情が、フサオマキザルにもあったのだ!

②フサオマキザルは協力できるのか?

 身勝手な人を嫌うことで、協力的な社会を作っていると考えられるフサオマキザル。果たして本当に協力し合えるのでしょうか?
 そこでやって来たのは京都市動物園。フサオマキザルの飼育舎に設置された実験装置の底には、フサオマキザルの好物・落花生が入っています。しかし、この落花生を取り出そうとしても、装置の右側に2つ穴があけられているものの、穴から底まではフサオマキザルの手が届かない深さになっています。装置左側についたヒモを引っ張ると底が持ち上がり、落花生に穴から手が届く仕組みになっています。一匹がヒモを引っ張っても穴は逆側に開いているので、そのサルはエサは取れません。一匹が、自分が取るためではなく、他のサルのために、紐を引っ張れば逆側の穴から、他のサルがエサを取れるという装置なんです。

 まずは普通のサルはどうするのか?ニホンザルで実験!中に好物のミカンなどを入れた装置をサル山に設置し、実験開始。まずサルAが穴に手を入れますが、当然届きません。すると、ヒモの近くにもう一匹、サルBが。サルBがヒモを引っ張ればミカンは取れるんですが、どうすればいいか分からず、取っ手を持ってボーっとしています。するとサルAは、自ら引っ張ります!そして、穴がある側へ移動すると、サルBがフォローに!と思いきや・・・サルBが手を離してしまい、サルAはミカンゲットできず。そこで今度は、サルAが穴からヒモを直接引っ張り、底を引き上げる強硬策に出るも、底がひっくり返り、ミカンは下へ。
 結果、ニホンザルは協力してミカンを取ることができませんでした。

 では、ここからが本題!落花生を装置の底に置き、協力的な社会を作るフサオマキザルで実験開始!最初は、穴から落花生を覗くものの、どうやらまだヒモに気づいていない様子。と、その時!ヒモを引っ張ったのは、群れのナンバー2、カンタ君。そこにやってきたのは、ボスザルのトンキチ。トンキチ、腕が太くて奥の落花生まで手が届きませんが、カンタはトンキチのために紐を引っ張り続けたんです!これぞまさに協力プレー!その後、なんとかトンキチが落花生を手元に手繰り寄せ、落花生ゲット。そして落花生は、直接取ったトンキチだけでなく、彼のために紐を引っ張ったカンタも落ちた落花生にありつくことができたんです。
 一体なぜこのような行動を取るのか?世話をしている飼育員の方に聞いてみると、「ここの集団は家族なので、より(協力行動が)強いとは思うが、野生でも育児を分業する」という。そこで、子供を背負ったサルを観察してみます。赤ちゃんザルをおぶっているヨシコちゃん、実はお母さんではなく、この赤ちゃんのおばあちゃんなんです。そして隣にはお母さんのシゲコちゃん。赤ちゃんザルは、おばあちゃんからお母さんの背中に飛び移りました。赤ちゃんをお母さんのシゲコちゃんが世話している間に、ヨシコおばあちゃんはゆっくりお食事。このように、フサオマキザルはとても協力的な社会を作っていたんです。

所さんのポイント
ポイント2
藤田教授はこの実験で、「協力し合う社会は必ずしも人間だけが持っているわけではない」ということを、フサオマキザルによって証明したのだ!

③人類の若返りにつながる?ベニクラゲ“若返り”の仕組みとは!?

 続いて紹介するのは、京都大学フィールド科学教育研究センターの久保田信准教授。この先生はなんと、「若返り成功で世界記録を持っている」というんです!では一体、どういう研究なのでしょうか?

 やって来たのは、和歌山県白浜町にある京都大学臨海実験所。久保田先生によくよく聞いてみると、先生が向かった先は海。先生自作の網ですくったのは、なんとベニクラゲ。ベニクラゲは、水深の浅い所にいるようです。網を引き上げ、先のホースに入った海水をビンに移します。先生の研究対象であるベニクラゲは、体長はおよそ2mmと、肉眼ではほとんど発見できないほど小さいんです。実はこのベニクラゲが、生物の中では、現在知られている中で唯一、若返り能力を持っていると言うんです。つまりベニクラゲの研究が、人類永遠の夢“若返り”につながるかもしれないんです!

 では、“クラゲが若返る”とは一体どういうことなんでしょう?まずは、一般的なクラゲの一生を見てみると、クラゲが生殖活動を行って受精すると「プラヌラ」という赤ちゃんが生まれます。プラヌラはその後、「ポリプ」という子供時代を迎えますが、このポリプが他の生物とは違って、変わっているんです。ポリプは、まるで植物のように枝分かれし、そこに大人のクラゲが生えてきます。一つの子供から、たくさんの大人に枝分かれするという不思議な生き物なんです。ベニクラゲもこのサイクルで生きていますが、他に「若返る」という特殊な能力を持っており、久保田先生曰く「歳をとったり、自分の体が重傷を負って限界になると、若い体に戻ってしまう」という。そこで、針で何度も刺したベニクラゲが、ぐちゃぐちゃな状態からどう若返るのか観察してみると・・・1日目、ボロボロになりいくつもに分かれていた体が徐々に一つにまとまり、2日目には1つの塊に。3日目、塊から根っこのようなものが生え始め、若返りが始まりました。4日目には、反対側からも根のようなものが伸び、5日目、植物のような枝、「ポリプ」が出てきたんです。

 普通、クラゲの場合は、受精卵から赤ちゃんのプラヌラになり、子供時代のポリプになりますが・・・ベニクラゲは重傷を負い、死にそうになった大人が、子供時代のポリプへと若返りをしたんです!しかも、ポリプに若返ったベニクラゲは、その後、植物のように枝分かれし、たくさんの同じクラゲが増えるんです。

所さんのポイント
ポイント3
ベニクラゲは環境の変化に弱い上に、食べ過ぎると死んでしまう。そのため久保田先生は、「こんな弱い生物だからこそ、若返りをして残っていくのでは?」と研究を重ねているのだ!




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