片栗粉
の科学
第1201回 2013年11月03日
キッチンの必需品なのに、知っているようで意外と知らない、片栗粉を科学します!
①「大分の唐揚げ」なぜ人気?
主に、料理にとろみをつけるために使われている片栗粉ですが、実はこの粉には、他にもすごい力が秘められているんです!最近、専門店が続々と東京に出店し、いま大人気の「大分の唐揚げ」。一体どんなところが好まれているのかお客さんに聞いてみると「衣がサクサク」という声が多数。人気のヒミツ、サクサクとしたを生み出す秘訣をお店の方に聞いてみると、人気店に共通するのは、片栗粉!!片栗粉を使って揚げているから、衣がサクサクしてべたつかない、軽い食感の唐揚げに仕上がるというんです。でも、家庭料理で唐揚げによく使われるのは小麦粉です。
では、小麦粉と片栗粉、この2つで揚げた唐揚げには一体どんな違いがあるのでしょうか?小麦粉で揚げた唐揚げは、こんがりと茶色く仕上がりました。一方、片栗粉で揚げた方は、白っぽい衣になりました。噛んだ時の音で比べてみると、小麦粉で揚げた唐揚げは、ボリボリと固さの伝わる音。
続いて、片栗粉の唐揚げは、サクサクともろい衣を噛んでいるような軽い音。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?食物学の専門家によると、「片栗粉は純粋にジャガイモでん粉だけなんです。ところが小麦粉は、でん粉以外にもタンパク質が含まれています。」とのこと。片栗粉は、ジャガイモからでん粉のみを抽出したものですが、小麦粉は、小麦をそのまま挽いたもの。そのため小麦に含まれるたんぱく質も残ったままなんです。小麦粉の場合は、グルテンというたんぱく質が緻密で頑丈な網目構造を作るので、しっかりした歯応えのある、固い衣になります。一方の片栗粉は、でん粉が作る壊れやすい網目構造の為、サクッと軽い食感の衣になるんです。
人気のサクサクした唐揚げの軽い食感は、「片栗粉」によって作り出されたものだったのだ!
②片栗粉を使うだけでお肉が縮まない!?
家庭料理でもおなじみ、豚のしょうが焼き。ところが、買うお店によって縮んじゃったり、固くなったりしてしまいますよね?実は、そんなお悩みも、片栗粉で解決できるというんです!大きさと重さの同じ、しょうが焼き用の豚肉。片方だけに片栗粉をまぶしてから、同時に焼いてみます。すると…何もつけていないお肉の方は、みるみる縮んでいきます!一方、片栗粉をまぶしてから焼いたお肉はほとんど変わらず。およそ4分後、火が通った時点で比べてみると、その差は一目瞭然。片栗粉をまぶしたお肉の方が明らかに大きいのがわかります。専門家によると、お肉は65℃以上になると縮んでしまうんです。
ですが、片栗粉がクッションの役目を果たし、熱を直接肉に伝えないため、中心温度がゆっくり上がり、65℃に達するまでの時間が長くなるんです。
そこで実際に温度変化を見てみます。中心部の温度を計る為、厚みのある豚肉を焼いてみると、片栗粉をつけずに焼いたお肉は、たった2分で65℃に到達し、かなり縮んでしまいました。一方、片栗粉をまぶしたお肉は…2分たってもまだ44℃。たしかに、熱の伝わり方には大きな違いがありました!
片栗粉を使えば、ソースの絡みもよくなるうえ、お肉が大きいまま、ジューシーなしょうが焼きが味わえるのだ!
③市販ソースでも簡単にプロの味!エビチリを片栗粉で美味しくするワザ。
中華料理のおよそ8割に片栗粉が使われています。そこにはどんな一流の技が隠されているんでしょうか!?伺ったのは、東京・渋谷にある中華料理店「スーツァンレストラン陳」。菰田総料理長に今回秘密を教わったのは、片栗粉を使っておいしいエビチリを作るテクニック。市販のソースでもプロ顔負けの味に作れるというんです!
まずは、下ごしらえ。さっそく片栗粉が登場します。大さじ1杯の片栗粉を入れ、塩と水を加えてよーくもみます。すると、エビの汚れがたっぷり取れました。でもコレ、塩やお水も入っていますよね?本当に片栗粉だけでも効果があるんでしょうか?実験です!水だけを入れて30秒間もんだエビと…塩水で30秒間もんだエビ。最後に、片栗粉と水だけでもんだエビの汚れの取れ具合を比べてみると…片栗粉と水が、汚れを最も落としているのがわかります。
実は、片栗粉は水に溶けない性質なので、細かい粒子が、エビの身の隙間にある小さなゴミもキレイに絡め取ってくれるんだそうです。
続いては…下味にも片栗粉が活躍!塩、コショウ、卵白と、片栗粉を入れてもみ込みます。下味がついたら、茹でるそうなんですが…お湯の中に入れたらせっかく付けた下味が取れてしまいそうですが大丈夫なんでしょうか?専門家によると、「片栗粉に調味料が混ざった状態で熱湯に入れると片栗粉が膨らんで、調味料を抱えたままエビをコーティングする為に、下味がついた状態になる」とのこと。つまり、デンプン分子の外側についた調味料を、熱によって膨らんだデンプン分子が内側に抱え込み、流れ出るのを防ぐそうなんです。だから、お湯に入れても下味が保たれるんです。 さらに!先程のお肉のように、エビの身が縮むのも防いでくれるんです!
片栗粉の使い方を組み合わせることで、エビ本来のプリプリ感が味わえるのだ!
④プロが教える、程よいとろみを付ける技。
片栗粉と言えばやはり、とろみづけですよね。でも、上手にとろみをつけるのは意外と難しい…では、プロはどのようにとろみをつけているんでしょうか!?そこで菰田シェフ VS 一般の主婦、とろみづけ対決!!2人には、同じ分量のチキンスープと溶き卵、そして水溶き片栗粉を使って、シンプルな卵スープを作って頂きます。作り手が違うだけで、一体どんな違いが表れるのでしょうか!?出来上がった2つのスープを見てみると…見た目にもかなり違いがありますが、とろみの付き方はどうでしょうか?
まずは、主婦のスープは…ただのスープよりはちょっととろみがある程度。一方、菰田(こもだ)シェフのスープはとろみが、シェフの方が強い!この差を生んだポイントは、一体どこなんでしょうか!?
まずは、主婦の作り方です。火を止めずに水溶き片栗粉を入れました。でもこれは不正解。たとえ弱火でも、火を止めずに水溶き片栗粉を入れるのはよくないんです。シェフの作り方は…いったん火を止めて、少しずつ垂らすように加えています。火を止めないと、片栗粉が一気に固まって、ダマになりやすいんです。
続いては卵を入れるタイミング。主婦は、片栗粉を入れた後 軽く混ぜ…すぐに卵を入れました。実はこれも失敗の原因。ではシェフのやり方は…水溶き片栗粉を加えたら再び火をつけて、混ぜながら沸騰するまで加熱しました。つまり、片栗粉を加えたら、再び沸騰させることが大事だったんです。そして、再び火を止めて、同じように卵を少しずつ垂らすように入れました!専門家によると、加熱が不十分だとデンプン分子の傘が開ききらず、温度が下がると傘が閉じ、元の状態に戻ってしまうというんです。
ほど良いとろみのスープを作るには、水溶き片栗粉を入れたら、再び沸騰するまで加熱することが秘訣だったんです!
片栗粉を入れてからグツグツと一煮立ちさせたら、早めに火を止めるのだ!
⑤片栗粉のとろみがもたらす「保温性」。
時間がたってもなかなか冷めないのは皆さんご存知の通りですが…例えば真冬の北海道。朝の最低気温は氷点下25度に達することもあります。そんな極寒の地でも保温効果は持続するのでしょうか?そこで、巨大冷凍庫で実験!
用意したのは、とろみのあるあんをかけた あんかけラーメンと普通のラーメン。麺とスープ、野菜の量を統一して作りました。2つのラーメンを、こちらの「巨大冷凍庫」で観察します。冷凍庫内の温度は氷点下25℃。果たしてあんかけラーメンは、氷点下25℃の世界でも温かさを保つことができるのでしょうか!?スタートから20分が経過。「まだ湯気も出ています」。そしてまもなく40分後、湯気が消え、普通のラーメンは外側から少しずつ凍り始めてきました。
ここで…あったかそうな中心部分を食べ比べ!普通のラーメンは冷たくなっていましたが、あんかけラーメンはあったかい!氷点下25℃の冷凍庫に40分。まだ温かいのは、一体なぜなんでしょうか?専門家によると、「対流」が起きていたからとのこと。対流とは、冷たい空気に触れた表面のスープが、冷えて下に沈み、中の熱いスープが上がってまた冷やされるという、熱のサイクルのこと。あんかけを乗せると、スープの上にフタを置いた形になって、スープの表面が外気と接触せずに温度が下がらず「対流」が起こることが無いのでその結果スープは冷めにくくなるとのこと。
気温マイナス25度で温かいラーメンを食べるには、あんかけを注文するのだ!
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