動物の子育て
の科学
第1202回 2013年11月10日
今年も、全国の動物園で多くの動物の赤ちゃんが誕生!
動物園では、様々な動物の赤ちゃんが見られるかもしれないんです!
そこで本日の目がテンは、"動物の子育て"を科学の力で徹底検証します。
①人気の珍獣コアラ お腹の袋の秘密とは?
お腹の袋で子育てをする有袋類の代表といえばカンガルー。他にも、ウォンバットやフクロモモンガなど、全部で300種類以上もいるんです。さらに、人気の珍獣「コアラ」も有袋類の一種。 では、どうしてコアラなどの有袋類はお腹の袋で子育てをするのでしょうか?動物の生態に詳しい東京大学の遠藤教授に話を伺うと、「多くの哺乳類はしっかりと妊娠をして"胎盤"というものを作る。長い間妊娠をして赤ちゃんがかなり発達して成熟してから生まれてくる。ところが有袋類は未熟な状態で赤ちゃんを出産してしまう。生まれてきた赤ちゃんは小さくて未熟なので、生まれたあともお母さんがしっかりと守らなければいけない。そのために袋があって守られながら育つ」という。
袋の中には、2つの乳首があって生まれて間もない赤ちゃんはすぐに袋に入って乳首に吸い付きます。すると、赤ちゃんの口の中で乳首が膨らみお母さんがどんなに動いても離れなくなるんです。不思議なのは、袋の向き。カンガルーの袋は上を向いていますが、なぜかコアラの袋は下向きです。赤ちゃんが落ちないの?と心配になりますが、普段はお母さんが筋肉で袋の入り口を締めているので、赤ちゃんは安全なんです。
②アザラシの母乳の秘密!
哺乳類の子育ての最大の特徴が、おっぱいをあげる「授乳」。ヒトの授乳期間はおよそ1年ほど。調べてみると、動物によってその期間は様々なんです。長いものでは、ゴリラでおよそ3年。チンパンジーは5年から7年も授乳します。一方、授乳期間が1番短いのは北極に生息するズキンアザラシで、わずか4日間!このズキンアザラシなど、極地の寒いところで生きる、アザラシ・アシカなどの海獣類。その母乳には、驚きの秘密が!?そこで、動物の人工ミルクを専門に開発している研究所へ向かいました。こちらでは、牛の原乳から分離した原料をもとに、様々な成分を調合した、それぞれの動物の母乳に近い人工ミルクを作っているんです。
こちらには、すでに分析済みのいろいろな動物の母乳の成分表があり、そこに確かに驚きの秘密が!?なんと、例えばカンガルーは3.4%ですが、海獣類は約50%!そう、海獣類の母乳の秘密は「高い脂肪分」だったんです。
ヒトの母乳の脂肪分はおよそ3.5%。しかし、海獣類の母乳の脂肪分は40%から50%と、その差は実に10倍以上!極寒の地域で生き抜くため、生まれたばかりの赤ちゃんには脂肪分の高い母乳が大切だったんです。では、そのミルクはどんなものなのか?早速作ってもらうことに。再現するのは、アザラシの母乳。牛乳由来の高脂肪乳や高脂肪粉末、ビタミン、ミネラルなどを材料に作ってみると・・・完成したのは、まるでマヨネーズのようなねっとりと、濃厚なアザラシのミルク!それは、赤ちゃんが寒い海で生きる上で必要不可欠なものだったんです。
脂肪分なんと40〜50%!海獣類のミルクは超濃厚だったのだ!
③ペンギンのヒナは親の声がわかるか!?
何万羽という群れで生活するペンギン。この大群の中で、なぜ彼らは親と子供が互いに間違えずに認識できるのでしょうか?そもそも動物は、様々な方法で親子を見分けています。
まずは視覚。カルガモなどは「刷り込み」といって、生まれたばかりの赤ちゃんは、初めて目にした"動いているモノ"を親と認識するようになっています。もう1つは嗅覚。嗅覚の鋭い羊などは、親も子も互いに匂いで認識しあっています。では、膨大な大群で暮らすペンギンはどうやって親子を見分けているのでしょうか?40年に渡り、ペンギンの保護活動を行っている上田さんに聞くと、「ペンギンは聴覚。声で親子を見分けている」というんです。自然界では、ヒナたちを天敵から守るため、群れの中心に集めます。その間、親ペンギンはオスとメスが交互に海に出て、ヒナに与えるためのエサを取ってくるんです。エサを取った親ペンギンは、群れに戻り、自分の子供を「鳴き声」で呼び出します。その声に気付いたペンギンのヒナも鳴き声を上げ、親に自分の居場所を知らせるのです。
そこで、声で親子を見分けるペンギンにこんな実験!親ペンギンの声をスピーカーから流し、その声だけでペンギンのヒナは親だと認識するのでしょうか?実験に協力してくれたのは長崎県にある「長崎ペンギン水族館」。今年8月10日に生まれた黄色いバンドのペンギンのヒナを「Aクン」。25日に生まれた赤いバンドのヒナを「Bクン」とします。まずは、AクンBクン、それぞれの父親ペンギンの声を録音。
AクンとBクンの父親の声は微妙に違うものの、その差はわずか。ヒナたちが怖がらないようにスピーカーにぬいぐるみをかぶせ、複数の親ペンギンがいっせいに鳴く自然界と同じ環境にするため、それぞれの鳴き声を同時に流します。A・Bそれぞれのヒナたちは本当に、自分の父親の声を聞き分けることはできるのか?
それぞれの親の声が一斉に流れ始めると、Aクンがさっそく「僕はここだよ!」という風に、父親ペンギンの声に応えて鳴き始めました。そして、勢いよくAのスピーカーに近づき、完全に自分の父親の声だと認識したようです。一方、Bクンも「僕はここだよ!」と声でアピール。その頃、Aクンは安心しきったようにぬいぐるみのそばを離れません。そしてBクンもBのスピーカーのもとにたどり着きました。確かに、ペンギン親子は、声で互いを認識していることが分かったんです。
では、なぜペンギンのヒナは親の微妙な声の違いを聞き分けられるのでしょうか?上田さんに伺うと、「親が産卵します。キングペンギンの場合は、卵を足の上にのせておなかの袋をかぶせて温めるが、だいたい聴覚が形成され始める頃から、卵の外側の親たちの鳴き声を卵の中でヒナが聴いているんです。時々親鳥も卵に鳴きかける。こうすることによって、親鳥の声を卵の殻から出る前にすでに認識している」という。
卵は、およそ2ヶ月間温められふ化する3・4日前になるとヒナも卵の中から親に鳴きかけるといいます。このように、ペンギン親子はお互いの声を、ヒナが生まれる前から聞かせあうことで、親子だということを「声」で認識しているのです。
ペンギンの他、同じように"群れ"で生活するオットセイなども声で親子を認識しているのだ!
番組に対する、ご意見、ご感想等ございましたら、番組メールボックスの方にお寄せ下さい。
宛先は、
megaten@ntv.co.jp
です。
原則、質問にはお答えできませんが、頂いたメールは、番組スタッフが閲覧し、今後の番組作りの参考にさせていただきます。