立ち飲み
の科学
第1211回 2014年1月26日
かつてはお父さんたちのオアシスだった立ち飲みが現在、オシャレでスタイリッシュに大変身している!そこで今回は、立ち食い・立ち飲みのお店、人気の理由を徹底検証!
①立ち食い・立ち飲み大流行のワケ!
立って飲食するという歴史は、一説には江戸時代、酒屋さんが樽酒を小売りにして、その場で飲ませたことが起こりだと言われています。以来、その値段の安さから庶民の味方として脈々と受け継がれてきました。
しかし現在、そんな立ちスタイルのお店に異変が!開店30分前だというのに人だかりが!一体どうして今、立ちスタイルがこんなに人気なんでしょうか?飲食業界に詳しい雑誌編集長に聞いてみると「最近の特徴は高級な食材を出してそれを安く提供する。」とのこと。実際に確かめてみましょう!
協力してもらったお店では、一流レストランに勤めていたシェフが腕を振るい、格安で高級フレンチの味を楽しめるんです。お店の看板メニュー"牛フィレとフォアグラのロッシーニ"はお値段、1280円!さらに、オマールエビを一尾丸丸使ったローストも1480円!ほぼ、オマールエビの原価なんだとか。でもどうして、立って食べるだけでこんなに安くできるんでしょうか?シェフに聞いてみると、椅子があるとお客さんがお店に入れる数が半分程度にまで減ってしまうんだとか。本当に椅子のあるなしでそんなに差があるのか?別の立ち飲み屋さんでこんな検証をしてみました。1人ずつパイプ椅子を持って奥から順番に入店してもらい一体何人がお店に入れるのか試してみます。その数は合計17人!しかもこれだけギュウギュウだと店員さんがホールを動くスペースもありません。しかしこのお店、夜の通常営業時に行ってみると、その数…なんと32人!確かに椅子がないとおよそ倍の人数が入るんです。
お客さんが沢山入れて回転率も上がるので、料理を原価近くまで安く出せるのだ!
②大ブームの立ち食いレストラン…たって食事して疲れない?
いくら安いからって立って食べて疲れないの?お客さんに聞いてみると、皆さん、立っていても疲れないとのこと。それでは科学の力で検証してみましょう!実験に協力していただくのは30代から50代の男性3名。まずは座って1時間、食事を楽しんでもらいました。その後3人は店舗の目の前に停めた車に移動し血液から疲労の原因物質を採取します。
これは運動などを行い体に負荷がかかった時、体内に出てくる物質で蓄積すると疲れてしまうという、疲れの原因。座って食べた3人の原因物質の数値はそれぞれこのくらい。
翌日、今度は立って食べるとどのくらい疲れがでるのか?同じ料理を1時間食べました。立ち食いは疲れたのか?感想を聞いてみると…3人とも疲れを感じていないというんです。そこで、疲労の原因物質を測り、比べてみると、3人とも立って食事をしていた方が疲労の原因物質がたくさん出ました。疲れていないと言っていたのに、座っている時よりも実際は疲れていたんです。一体どういうことなのか?専門家に伺うと…食事や会話によって楽しさや幸福感を前頭葉が感じることで脳内に伝わった疲労が隠されてしまうとのこと。つまり、立って食事すると、座りより疲れているのに、疲労感を感じにくくなっていたのです。
立って食べた方が、会話が弾みやすいため、疲れを感じにくい!でも、その分、食事もお酒もすすむんで、普段より多く飲んでしまう方も多いのだ!
③どんな立ち方をすれば一番疲れないか大調査!
まずは、皆さんどんな立ち方をしているんでしょう?立ち飲み屋さんで立ち方ウォッチング!1人30分程度の立ち方動画を50人分撮影しました。しかし立ち方なんて人それぞれ。片足をピンと伸ばして立つ人や、なぜかバランスを取る人、踊っちゃう人、そうかと思えば直立で微動だにしない人など千差万別!そこで、撮影した動画を1秒ずつ見ながら両手と両足それぞれの状態を調べていきます。のべ50人、1人30分程度の動画を一秒ずつコマ送りしたため合計で9万回、パソコンとパソコンを行ったりきたりした結果大きく分けると4種類のパターンがあることがわかったんです。
その一つ目が、仁王立ち型!!
このように2本の脚でしっかりと踏ん張るこの立ち方。上半身は腕を組むことが多いようです。
二つ目は軸足入れ替え型!!
片足どちらかに体重をかけ、定期的に軸足を入れ替える立ち方。これは、ヒールをはいた女性にも多くみられました。
三つ目がクロス型!!
足を交差させ、定期的に左右を組み替える立ち方。今回調べた中では意外にもこの立ち方が最も多かったんです。
そして最後が、ヒジ置き型!!
テーブルやカウンターにヒジを置き体重をかける立ち方。両ヒジパターン、片ヒジパターンがあります。
今回大別した4つの立ち方。これを人間工学の専門家に解析していただくと「疲れない立ち方という意味では重心が安定するという立ち方であります」とのこと。そこで4つの立ち方パターンの重心移動を調べどれが一番重心が安定しているか確かめてみました。まずは、今回観察した中で最も人数が多かったクロス型から。真ん中の白く移動する線が重心移動を表しているのですが…激しく動いています。
一方、仁王立ち型は全く動かず、ぶれていないことがわかります。4つ全てを見てみると、ひじ置き型にも重心のブレがほとんどなかったんです!しかし、ひじ置き型には重大な弱点が…同時に計測していた上半身の筋疲労値をみてみると、ひじ置き型の方が上体に負担がかかっていたんです。つまり、最も体に負担をかけない立ち方は仁王立ち型だったんです。
ただ、仁王立ち型は重心が安定してブレが少ないがために、同じ個所の筋肉を使い続けてしまうので、仁王立ち型→軸足入れ替え型→肘置き型と体勢を入れ替えるのがオススメなのだ!
④立っていると初対面でも仲良くなれる?
立ちスタイルのお店にいるお客さんに、イイところを聞いてみると…立ち飲みは初めて会う人でも、打ち解けやすいらしんです!立ち食い焼肉店のお店では…「今まで4年くらいになるんですけど56組のカップルが付き合った」とのこと。しかも結婚したカップルが7組もいるんだそう!どうして立ちスタイルだと初対面でも仲良くなれるんでしょうか?そのヒミツを探るため、呼び出したのは新実験プレゼンターの酒井さん!
ここで番組から指令を与えました!立ちスタイルのお店に、酒井さんが単身乗り込み、そこにいる女性客に声をかけ、実際仲良くなれるか?という実験なんです。実は酒井さん、京都を拠点に活動する小劇場出身の役者さん。演劇以外に興味があるのは発明とアニメくらいで見知らぬ女性に声をかけたことはないんだそう。
まずは比較のため、座りスタイルのお店にいる女性客に声をかけてもらいます。人生初、見知らぬ女性に声をかけにお店へ。この実験、声をかけただけで成功ではありません。女性客が酒井さんに質問を返してくれたら成功とし、本当に仲良くなれたかを検証します!しかし、なかなか声をかけることができません。気を取り直して別のお店へ。とにかく今度は何が何でも声をかけるようスタッフが念を押しました。すると!
酒井
「あの…お話中すいません。お二人って会社帰りかなんかなんですか?お友達で?」
勇気を振り絞って声をかけました!しかし!!
お客
「内輪の話ですので」
やはり見ず知らずの女性と酒井さんが会話をすることなんて無理なんでしょうか?それでは立ちスタイルのお店にいる女性に声をかけてもらいましょう!果たしてどうなる!?
酒井
「お話し中すいません。お二人で来られてるんですか?」
お客
「はい」
酒井
「よく来られます?こういうとこ」
お客
「何回か来たことあります。かなり久しぶりですね…今日お一人なんですか?」
女性から酒井さんへ質問が!声掛け大成功!!更に、他のお店でも実験!するとお料理まで分けて頂き、声をかけて10分で一緒に写真撮影まで!かなり打ち解けることが出来たんです。
結果、立ちスタイルのお店だと、酒井さんでも女性と仲良くなることが出来たんです!この理由を専門家に聞いてみると…「座って話す場合は相手と目線を合わせながら話すので緊張感が高いんです。立って話をする場合はお互いに視線を合わせなくても会話ができる。だからお互いに気楽な状態で好きなように会話ができる」とのこと。確かに座りの場合、酒井さんは会話をする際、相手のほうばかり見ていました。一方、立ちの場合、体が自由に動くので自然と視線を外し、喋ることができていたんです。だから立ち飲みは緊張することなく気軽に喋ることができるんです。
立ちスタイルのお店は、スペースをいっぱいに使って、たくさんお客さんを入れるという営業をしているので、自然と他のお客さんとの距離が近くなるんです。こういう距離っていうのは、本来なら心を許した恋人とか友人とか家族でないと入ってほしくない距離なんだそうです。でも、立ち飲みであれば、意志とは関係なく、他人との距離がぐっと近くなるので、親密になりやすいんだそうです!
立ち飲みは魔法の空間なのだ!
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