列車の旅
の科学
第1215回 2014年2月23日
今大人気の観光列車の旅、その魅力を科学!
①列車VS自動車 どれだけ景色を見ている?
去年誕生した、大阪、名古屋駅と伊勢志摩を結ぶ観光列車「しまかぜ」。チケット発売と同時にほぼ売り切れてしまう大人気列車です。座席は通常横4列や5列が多いのに対し「しまかぜ」は3列。その分、飛行機のファーストクラス並みのゆとりあるシートが設置され、ゆったりと景色を満喫することができるのです。先頭車両はフロントガラス(先頭部分の窓)が大きく運転席との仕切りもガラス1枚なので壮大な風景が楽しめます。さらに一部の車両は通常の列車よりも床が高くなっています。計ってみると72センチも上がっている。これもより高い位置から広々とした景色を楽しむための工夫。
では観光列車を利用するとどれだけ景色を見ているものなのか実験です!協力してもらうのは友達同士、赤い帽子をかぶった女性2人。観光列車スペーシアに乗って東京・浅草からおよそ2時間かけ栃木・鬼怒川温泉へ向かってもらいます。
景色をどれだけ観ているか検証するために2人には内緒で、車窓からみえる5つのポイントに看板を設置します。看板に書かれたすべてのアルファベットをつなげると「温泉」となります。果たして見つけることができるのでしょうか?その結果・・・なんと2人はすべての看板を発見。温泉のキーワードを当てました!確かに列車に乗りながらしっかり車窓の風景を見ていたんです。
でも自動車だって、もちろん車窓の景色は見えますよね?そこで今度も友達同士、青い帽子をかぶった2人がタクシーに乗車。列車の路線沿いを走るコースで鬼怒川温泉まで向かってもらい同じ実験をしてみました!看板をいくつ見つけられるのか?到着後に聞いてみると…最初の看板は気付いたようですが、その後の4つの看板は全く気付いていなかったのです!なぜこのような差がうまれたのか?専門家によると、「車に乗っている場合は自分が運転していなくても注意を向けてしまう傾向があるので前を向きやすいという傾向がある。電車の場合は窓から外を見ることをしやすくなる」。車の場合、ブレーキがかかったり、渋滞にはまるなど、運転状況が気にかかりずっと景色を見ている余裕がないのです。
列車の旅は、純粋に景色だけを眺められから景色を楽しめるのだ!
②列車VS自動車 旅の楽しみ方の違いとは?
列車の旅は時刻表に縛られて時間の制約があります。一方の車は出発時間や帰る時間も自由。線路のように決まった道も駅もないのでどこでも自由に行けます。では、列車で行くのと自動車で行くのでは、旅の楽しみ方にどんな違いが出てくるのか?協力してもらうのは同じスポーツサークルに所属する女性6人。
6人を3人ずつ2手に分け、赤い帽子をかぶった3人には観光列車ロマンスカーで箱根に向かってもらいます。新宿を11時10分発の列車で出発。帰りも夜7時46分箱根発と決まっています。一方の青い帽子の3人には車で箱根へ向かってもらいます。11時10分の出発時間だけを合わせあとは自由行動。自由な車と時間に制約のある列車、旅の楽しみ方にどんな違いが生まれるのでしょうか?
まずは列車の旅チームから。さっそくお酒で乾杯!運転のない列車ならではの旅の楽しみ方です。そして、ひとしきり景色を満喫し、始めたのは、旅の計画作り。帰りの時間までどこをどうやって回るかプランを立て始めました。車と違って自由に動き回れない分乗り継ぎのバスの時間などを綿密にチェック。12時38分箱根に到着。真っ先に向かったのは…きっぷ売り場。列車からロープウェイまで自由に乗ることができるフリーパスを買いました。そしてバスでかまぼこ博物館、ロープウェイ、大涌谷、芦ノ湖の海賊船、甘酒茶屋や温泉と箱根を満喫。結果、箱根で立ち寄った観光スポットは8箇所。限られた時間でたくさんの観光地を巡りました。事前に計画を立て、そのプラン通りに楽しんだ列車の旅。
一方、自由な車の方はどうやって旅を楽しむのでしょうか?出発から1時間後サービスエリアに立ち寄り食事。30分ほどサービスエリアで休憩し、列車よりも40分ほど遅い午後1時20分に箱根に到着。特に計画も立てず、たまたま通りかかったレストランでお昼ご飯。時間も気にせずのんびり食事を楽しみ、デザートまで堪能!ここでも会話が弾み過ごした時間は1時間半。自由な車の旅は1か所の滞在時間も長いようです。その後ロープウェイを使って大涌谷へ。しかし、ランチに時間を使いすぎ、予定していた美術館を断念。やむなく温泉へ。そして1時間後…時間の制約が無いにも関わらず列車組より1時間早く帰路へ!結果箱根で立ち寄ったのは、列車組の半分の4箇所だけでした。
なぜこのような差が出たのか?専門家に聞いてみると…「パーキンソンの法則とよばれる。時間に制約のあった列車の旅は限られた時間をめいっぱい使おうと計画的に過ごしたといえる」。車のような時間制限のない場合はついつい無計画にのんびりしてしまう傾向があるのです。
列車のような時間の制限があるとその時間を使いきろうという思いや行動が働くのだ!
③展望の良い部屋VS列車 どちらに高い価値を感じる?
去年誕生した観光列車「しまかぜ」で展望車と並んで人気なのが、窓に向かって座り食事を楽しめるカフェ車両。車窓に流れる景色を見ながら頂く食事は格別です!でも、そもそも景色と食事にはどんな関係があるでしょうか?
そこで9人の男女で実験です!まず3人には伊勢志摩にある旅館の景色が見えない部屋へ案内。続いての3人には雄大な山々が望める喫茶室へ。そして最後の3人は名古屋から三重・賢島までを走る観光列車伊勢志摩ライナーに乗車してもらい、それぞれの場所でカレーライスを食べてもらいます。実はコレ全て同じカレーライス!価格はレトルトカレーとご飯でピッタリ500円!それぞれの場所で、食事に感じた価値を値段であらわしてもらいました!
まずは景色のみえない旅館の部屋。食べたカレーライスにつけた値段の平均は…実際の価格より220円高い720円でした。
続いて雄大な景色が望める喫茶室。食べたカレーライスにつけた値段の平均は…実際の倍近い993円!
最後は観光列車での食事。食べたカレーライスにつけた値段の平均は…1403円!列車で食べたカレーが最も高い値段が付けられたのです!
なぜこのような結果になったのでしょうか?専門家によると「電車の場合はまず目的地に向かっていることで高揚感が増える。さらに新しい景色をみる楽しみも高揚感に繋がっていく。その結果、より美味しく感じられる。」。展望の良い場所で食事をすると気持ちは高まりますがずっと同じ景色のため次第に高揚感も下がっていきます。一方列車では景色が変わり続けさらに目的地に向かうという楽しみで高揚感が高いまま維持されます。そのため列車で食べた食事により高い価値が付けられたのです。
次々と新しい景色が現れ、これから目的地に向かう楽しみも合わさって高揚感が持続!だから食事も価値があるものに感じるのだ!
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