本当はすごい研究
食べ物編
第1216回 2014年3月2日
世の中には、よくよく聞くとスゴい研究をしている先生たちがいるんです!これまで目がテンでは、サルの研究を続け、「身勝手な人が嫌いなサルがいる!」ことを発見した藤田教授や、クラゲの研究に没頭、人類の若返りにつながるかもしれない「ベニクラゲの若返りの仕組み」を発見した久保田先生を紹介してきました!そこで本日の目がテンは、よくよく聞くと本当はすごい研究スペシャル第2弾「食べ物編」をご紹介。
①水道水で海の魚を養殖!「好適環境水」とは?
まず最初に紹介するのは、岡山理科大学工学部 アクアバイオ研究室の山本俊政准教授。 実はこの先生、なんと「淡水魚も海水魚も育てる事ができる"第三の水"」を開発したそうです。では一体、どういう研究なのでしょうか?伺ったのは、岡山県岡山市にある岡山理科大学。
まず見せていただいたのは、金魚が泳ぐ真水の水槽。そこへ、なんと海水でしか生きられない真鯛を入れたのです!すると山本先生、水槽へ、なにやら白い粉を投入!謎の白い粉を溶かすと、真鯛が復活!海水魚のタイと淡水魚の金魚が一緒に泳ぐ、ありえない光景!この粉の正体を山本先生に伺うと、「この地球上にはシーウォーター(海水)、フレッシュウォーター(淡水)、魚が生きているのはこの二つ。開発したのは"第三の水"、ザ・サードウォーターという名前で呼ばれている」。実は、粉を入れたことで、海水でも淡水でもない第三の水になったというんです。なんと山本先生によると、水道水1リットルあたり、およそ10グラムの白い粉を混ぜると、海水魚が生きられる第三の水「好適環境水」になるといいます。実はこちらでは、海水ではない"好適環境水"を使い、15種類の海の魚の養殖に成功しているんです。山本先生が開発した好適環境水は、海水魚が生きるのに必要な「ナトリウム、カリウム、カルシウム」を含んだ水であり、「好適環境水なら、真水しかない場所でも海水魚を育てられる」という画期的な発見だったんです!では、先生はどうやって海水魚が生きる3つの成分を発見したんでしょうか?実は、古代の原始海水には、現在の海水より少ない成分しか入っていなかったことに着目。「原始海水のような少ない成分の水でも魚が生きられるはず」という仮説を元に、海水の成分を減らしていき、最終的に3つの成分に辿り着いたのです。好適環境水で育てたクエやトラフグなど、岡山理大ブランドの養殖魚は、3年前から市場に出荷され、今や、実際にお店でも出されているんです。
好適環境水で育った魚は臭みが無く、甘みがあり、脂の乗りも良いと大評判なのだ!
②海水魚も淡水魚も育てられる!好適環境水のメリットは?
海水がない場所でも、海の魚を育てることができる、好適環境水。他にも、様々なメリットがあるというんです!
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メリットその1 「魚の発育が早い!」
山本先生は、ウナギの稚魚「シラスウナギ」を海水の水槽と、好適環境水の水槽に分けて同じ条件で育てました。同時に育て始めておよそ4か月後、それぞれのウナギの長さの平均を比べると、好適環境水で育てたウナギは、海水で育てたウナギよりも平均およそ5センチも大きかったのです。
海水は、体内より塩分濃度が高いため、魚の水分が体の外へ出て行ってしまいます。多くの海水魚は、大量の海水を飲む事で水分を補い、過剰な塩分を排出。このとき、魚はエネルギーを消費してしまうんです。
一方、好適環境水は魚の体内塩分濃度とほぼ同じなので、浸透圧調整がほとんど必要なく、その分、成長が早くなるというわけなんです。
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メリットその2 「病気にかかりにくい!」
山本先生は、白点病(※)に同時にかかったハリセンボンを、海水の水槽と、好適環境水の水槽に分けていれましたそれから7日後・・・好適環境水に入れたハリセンボンは、病気が治って元気になりましたが、海水に入れたハリセン。ボンは病気が進行し、瀕死の状態です。いったいなぜこんな差が?先生に伺うと、「この白点病(繊毛虫)の体液が海水に近い。(好適環境水のように塩分が)極薄の水の中にいくと、病気自体が浸透圧の差によって破裂する。従って病気が治った」という。
※繊毛虫(せんもうちゅう)が寄生する事によって発病する。病気が進行すると死に至ることも。
白点病の原因となる繊毛虫は、海水より塩分濃度が低い好適環境水では全部、破裂して死んでしまうのだ!
③ホットミルクを飲むとホッとする!その理由は?
続いて紹介するのは、金沢工業大学・心理情報学科の神宮英夫教授。この先生はなんと、「ホットミルクを飲むとホッとする」という現象を科学的に証明したというんです!では一体、どういう研究なのでしょうか?伺ったのは、石川県金沢市にある金沢工業大学。神宮教授が所属しているのは、"感動デザイン工学研究所"。"ホットミルクを飲んでホッとする"という研究のきっかけは、冷たい牛乳と牛乳瓶でした。すべては、"牛乳瓶で飲んだ牛乳はなぜおいしいのか!"を科学的に解き明かすところから始まったんです。では、なぜ多くの人が牛乳瓶の方がおいしいと感じるのか?神宮教授に伺うと、「一つの要因として"飲んだ時に唇に残るヒンヤリ感"というものが要因ではないか」。これを証明する為に教授が用意したのは、牛乳瓶、マグカップ、プラスチックのコップの三種類。それぞれの容器で、牛乳を飲んだ時の唇の表面温度をサーモグラフィで計測。
容器に10秒間、唇を接触させて牛乳を飲み、その後、20秒間の温度の変化を見ていき、同様の実験を10人で行い平均値を出しました。結果は、プラスチックのコップは唇の温度がほぼかわらず一定なのに対し、マグカップはそれより3度以上低くスタートし緩やかに上昇。そして牛乳瓶は、さらに2度低い所からスタート、20秒後、マグカップよりも1度、唇の表面温度が低い、つまり、ヒンヤリ感じていたのです。その上、神宮教授によると、唇と容器の接触面積が、牛乳瓶はマグカップの1.4倍!それが、ヒンヤリ感をより増幅させているのです。
では肝心の、「ホットミルクを飲むとホッとする」研究について。ホットミルクを飲むと身体が温まりリラックスすることはよく知られていますが…神宮教授は、これを科学的に実証したんです!その時、行った実験というのが、まず心電計をつけて、面倒な計算問題を解き、心理的ストレスを与えイライラ、緊張した状態にします。この時、交感神経の数値から、どの程度イライラしているかを計測。数値が高いとイライラしている証拠です。ミルクと同じカロリーの砂糖を混ぜたお湯と、ホットミルクで、飲む前と飲んだ後で、同じ計算問題をして、イライラ度にどのくらい違いが出るかを比較。
まずは砂糖入りのお湯を飲んだ場合。飲む前よりも飲んだ後の方が、イライラ度が増しています!ではホットミルクの場合は・・・なんと!飲む前よりも飲んだ後の方が、数値が低くなっています。つまりリラックスしていたのです。
確かに、ホットミルクを飲むと、心理的に本当に"ホッとする"事が分かったのだ!
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