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スズメバチ の科学
第1248回 2014年10月19日


 夏から今の時期にかけて猛威をふるうスズメバチ。年間1000件以上の被害が発生しています!多くの被害が起きているわけ、それは、人の生活圏にスズメバチが近づいているからなんです!
 そこで!あなたのそばにいるかもしれない?住宅地に巣をつくる都市型スズメバチに科学で迫りました!今回の目がテンは、習性を知る事で被害を防ぐ!危険生物スズメバチを科学します!

①今、なぜ都会にスズメバチが増えているのか?

 この時期、被害件数が急増するスズメバチ。最近は、住宅地などの人間の生活圏で被害が増えているんです。例えば、世田谷区のとあるオフィス街にある植え込みの中をよく見ると、スズメバチの巣が!さらに、マンションのベランダのエアコンの室外機の隙間にも!東京都でも相談件数は、過去3年、毎年5000件以上もあり、大都会である新宿区でも、去年の相談件数は367件、駆除件数も82件あったんです。日本に生息するスズメバチ8種のうち、最も注意すべきは2種類!刺されると最も危ないのが最大種のオオスズメバチ。体長はおよそ4センチ。山や森の中で、木の根元や土の中などに巣を作ります。そして、住宅地での相談件数が多いのが、キイロスズメバチ。体長はおよそ2センチ。実は、このキイロスズメバチこそが人間の生活圏に巣をつくる「都市型スズメバチ」と言われているんです!では、キイロスズメバチはなぜ人間の生活圏に進出してきたのでしょうか?その裏には、最大種オオスズメバチとのバトルがありました!
 オオスズメバチにとって、キイロスズメバチの幼虫は餌。この関係が、キイロスズメバチが人間の生活圏に進出した理由だと言います。
 スズメバチに詳しい玉川大学の小野教授に話を伺うと、「キイロスズメバチは弱いが故に巣を作る場所と食べ物に融通を利かせる元々の性質があった。都市開発が進み野山が切り崩されると都市で出される生ゴミや空き缶に残ったジュースというのも十分に利用できるキイロスズメバチは波に乗って勢力を拡大してきたという構図が今、私たちの目の前にあるんだろうと思います」。住宅にも巣を作ることができ、生ゴミなども食べるキイロスズメバチ。

所さんのポイント
ポイント1
キイロスズメバチは、どんなところでも生きる能力が高いため、人間の生活圏にも進出してきたのだ!

②巣に近づいてしまったらどうすればいい?

 やって来たのは、とある民家。なんとこの裏庭にオオスズメバチの巣があるというんです。駆除のプロとしての経験では、オオスズメバチの巣の5メートル以内が危険なゾーンだそうです。オオスズメバチの巣は民家の裏庭の土の中にありました。この巣を使って実験開始です!スズメバチは黒いものを狙って襲う!というのを聞いた事ありませんか?そこで・・・黒と白の風船を用意。巣のそばに近づけると、早くも威嚇を始めました。さらに風船を揺らしてみると、黒の風船に体当たり攻撃してきました!通常スズメバチは刺す対象にとまって針を突き刺します。しかし今回は風船のため、つかまれずに針を出したまま体当たりしているんです。
 そして…見る見るうちにスゴイ数に!スズメバチは仲間に対し、敵がいる事をある方法で伝えると言います。それは、毒液!敵と見なした場合、オオスズメバチは針から毒液を噴射します。この毒液には、他のハチたちに敵の存在を警告する匂い成分、警報フェロモンが入っているんです。この警報フェロモンを嗅ぎ付けた仲間が巣から飛び出し、チームプレーで敵を襲うのです。そして・・・白にも攻撃していましたが、黒の方が、多くのスズメバチに襲われました!
 続いては、動いている黒の風船と動かない黒の風船ではどちらを攻撃してくるのでしょうか?実験開始です!開始早々、動いている風船は多くのスズメバチに攻撃されました。止まっている風船も数匹が攻撃しましたが、数が少ないため割れなかったようです。つまり、動くものの方が敵と認識されやすいのは間違いないようです。
 しかし、動かなくても数匹のハチは攻撃してきたので、動かなければ絶対刺されないわけでもないようです。では、どう逃げればいいのか、実験してみましょう。まずは、走るなど、速い動きをした場合。わずか8秒で刺されました!ゆっくりと後ずさりするようなスピードで動いた場合は・・・なかなか襲ってきません。結果は1分35秒!刺されるまでにずいぶん時間の差がありました。実験の結果、黒い衣服はさける事、頭などの黒い部分は帽子などで隠しましょう。万が一、巣に近づいてしまった場合は、ゆっくりと歩いてはなれる事。

所さんのポイント
ポイント2
一度刺されてしまった場合は集団攻撃を受けるので、走って逃げること!

③身近なにおいが警報フェロモンになる!?

 警報フェロモンについて、今回の実験でもうひとつ明らかになった事実が!実は、果物や花などに含まれる物質のにおいが組合わさった時、スズメバチの毒液に含まれる警報フェロモンと似た匂いになる場合があるそうなんです。これについて、玉川大学・小野教授は、「毒液の中にはアルコール系のものやエステル系のものなどの物質が多様に入っていて、私たちの身近な食品や日用品の中にもそのパーツが入っている事がわかってきて、決して特殊なものだというものではない」と言います。身近なモノの匂いにも、スズメバチを呼ぶ危険があったんです!
 スズメバチの警報フェロモンには、3つの成分があります。それは、「2ペンタノール」「3メチル1ブタノール」。そして、「1メチルブチル3メチルブタノエート」。これらは、花や果物、乳製品などにも含まれている成分。そして、その匂い成分が、私たちの身近にある食品や様々な日用品などに香料として使われている可能性があるんです。そこで、3つの成分を使って実験です。3つのうち、2ペンタノールだけをコットンにしみこませ、巣の前においてみると・・・少し興味を示しますが、すぐに飛んで行ってしまいます。残りの2つを見ても・・・やはり同じく少し興味を示すだけでした。では、この3つを混ぜ合わせ、コットンにしみ込ませたものを置いてみると・・・。先ほどよりも多くのスズメバチが集まってきました。興奮しているようで、中にはコットンを刺すしぐさも!しばらく置くと、かなりの大群が群がってきました。実験の結果、物質単体では確認しているかのように少し興味を示すだけ。しかし、3つを合わせると警報フェロモンと認識し、大群で襲ってくる事がわかりました。つまり、私たちの身近な花の香料や果物の香料のある日用品も混ざらなければ危険はありませんが、組み合わせによっては、警報フェロモンに似た臭いになる可能性があるんです。

所さんのポイント
ポイント3
スズメバチが居そうな山や森に行くときは、なるべく、匂いが強いものを身につけるのを避けるのだ!




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