知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


繁盛店 の科学
第1255回 2014年12月7日


 「科学の力で困った人を助けたい!」シリーズ第2弾!
 今回のテーマは『飲食店』。 現在、全国で年間約1万軒以上の飲食店が新規開店しています。しかし、そのうち生き残れるのはわずか1割・・・。繁盛店と閉店する店。そこにどんな違いが?そこで、科学の力で繁盛店にするプロジェクトに挑戦!今回の目がテンは、目指せ!売り上げUP!繁盛店の科学です!

①マーケティングの専門家がチェック!売上が悪い店の真相

 渋谷から2駅、駅の乗降客数が1日13万人ある三軒茶屋。この飲食店の激戦区に、閉店危機の店があるといいます。今回は、プライベートブランドやeコマースなど流通経済を科学的に分析してきた、早稲田大学社会科学総合学術院の野口智雄教授に同行して頂きました。先生によると、一般的に売り上げが悪い店は立地が良くない場合、アクセスするのが大変だという時には、中々お客さんが来てくれないという。他にも、コンセプトや料理、接客などに問題がある場合が多いのだとか。
 では今回のお店には、どんな問題があるのか?チェックしてみると…まずは、立地。三軒茶屋駅から、茶沢通りにある太子堂商店街を、真っすぐ歩いて7分。通称ゴリラビルを左に曲がった先にあるのが…今回、番組に応募してくれた、スペイン料理のお店「ナランハ」(2012年オープン)。ゴリラビルを目印にすれば、分かりやすい場所にあります。先生によると「立地は×ではない」とのことで「△」。「ナランハ」とは、スペイン語で「オレンジ」のこと。でも、お店のロゴはインド料理と間違えやすく、外観から分かるコンセプトは×。そして店内には、オーナーシェフ山本さんの姿が。店内は全部で26席。オシャレで落ち着いた雰囲気で、内装は○。では、気になる料理はというと…大きなマッシュルームに、ニンニクを効かせた「アヒージョ」や、オレンジの果肉とソースが爽やかな「ニンジンのサラダ」。そして、魚介の旨味たっぷりの本格パエリアなどどれも美味しそう。どの料理も、味は本物。料理は◎と高評価。一般的に、三軒茶屋で飲食店を成立させるには、月200万円以上の売り上げが必要で、1日にすると6万円以上。
 しかしナランハの場合は、1日の売り上げが、なんと2〜3万円台というまさに危機的状況…。そこで、平日の夜。カメラを設置して、お店の様子を観察してみることに。夜8時。茶沢通り沿いにあるお店は、多くのお客さんで賑わう一方、ナランハはお客さんが1人だけ。結局、夜11時の閉店まで、この日はランチ・ディナー合わせて、お客はわずか10人。売り上げは2万4330円でした。この厳しい状況に、先生は「1日10万円。やりようによっては、20万円くらいに伸びてもおかしくない」と希望の言葉。料理も接客も良いのに、売り上げが上がらない!ナランハを救う起死回生の秘策とは?


②繁盛店への道Part1 「開放感がある」

 ナランハの特徴はオシャレな外観。中でも、ご主人の山本さんの、一番のこだわりが、入り口にある、大きなオレンジのドア。店の顔としてこだわったドアに、大きな落とし穴が!先生が指摘したのは、店に開放感が無いこと。入り口にある木製のドアは、重そうで開けづらく、小さい窓しか無いため閉鎖的に見えます。ドア側の窓も、同じくこだわりのステンドグラスや、窓枠に置いたビール瓶のせいで、店内が見えにくくなっています。さらに、もう一つの道沿いにある窓にも、びっしり書かれたメニューが目隠しとなり、開放感が無くなっていたのです。
 ここで、開放的にすると、お客は入りたくなるのか?実験です。街行く人に、実在する3つのお店の入り口写真を見せ、どのお店に入りたいか選んでもらいます。Cのナランハ以外は入り口が開放的で売り上げのいい繁盛店です。すると、AとBを選ぶ人が続出。30人に聞いた結果、入り口が開放的な方が入りやすいという結果に。開放的な雰囲気こそ、繁盛店に必要な要素だったのです。覚悟を決めた山本さん。窓に書かれたメニューを、自ら全て消していきます。さらに、オープン当初からあるこだわりのステンドグラスも撤去。窓には、外から店内がよく見えるように、透明なガラスをはめ込みました。そして、オレンジが印象的なドアは、常に開けたままにしておくことに。ドアを開けたままでも、風が入らないよう、透明なシートを取り付け、冬でも寒くないようにしました。では、開放的にした効果は本当に表れるのか?後日。店内にカメラを設置して観察。ランチが始まると、早速お客さんが来店。その20分後。今度は4人組が来店。さらにその日のディナータイムにも、いつもよりたくさんのお客さんが!開放的にして、繁盛店へちょっと前進したようです。

所さんのポイント
ポイント1
お店の入り口は入りやすいよう"開放的"にするのが重要なのだ!

③繁盛店への道Part2 「売りたいものは左上に書く」

 ナランハの次なる問題点は「メニュー」。でも、前菜からメインまで、順番に書いてある、ごく一般的なメニューですよね。これに、野口先生は「ただ普通に並んでいるだけだとどこから選んでいいのか?全部見てみないと、何を頼んでいいのか分からない」と厳しい意見。さらに野口先生は、「このお店で本当に力を入れて、皆さんに食べて頂きたいものを、一番目立つところに目立つ様な形に配置してアピールしていく。これが重要」とアドバイス。メニューを見てみると、一番売りたいというパエリアは、右下に書かれています。先生によれば、最も売りたいものは右下ではなく、左上に書かなければいけないというのです。でも一体なぜ左上なのか?
 そこで、画面を見たときの視線の動きを映像化できる機械を使い、メニューを見たときの視線の動きを調べます。赤いポイントが見ている場所。まず視線は、左上に動き、そのまましばらく左上を見続けた後、下に向かって動いていたのです。同じ実験を合計5人に行い、見た場所の回数をまとめると、左上が最も多く、右下は、ほとんど見ていないことが分かりました。野口先生によると、「見る場合でも、横書きで書かれている場合には、左から順番に見ていきます。左上が一番良く見るから購買される可能性が高い」と言えるんだそう。

所さんのポイント
ポイント2
最も売りたいモノは、メニューの左上に書くことが重要なのだ!

④繁盛店への道Part3 「チラシ配り」

 野口先生によると、この店の一番の問題点は「プロモーション」だと言います。看板は、大通りにありますが、先生によると、地味で、店の場所も分かりづらく、効果はほとんどないとの指摘。先生によると、この問題を解決するために「チラシ配り」が即効性があると言います。
 街で見かける『チラシ配り』。でも、ただ配るだけではなく、売り上げを伸ばす重要な秘訣があるといいます。まず、配るチラシは、新しいロゴを強調、シンプルで目立つデザインに。続いては顔写真。顔を載せることで、店への安心感と信用度がアップするそうです。野菜などに生産者の顔写真があるのも同じ理由。そして無料クーポン。実際のお得感を演出すると、持ってくる人が増えるそうです。そこで、自家製デザート1品か、自家製サングリア1杯を無料にします。お店が定休日の水曜日。スタッフも含めた3人でチラシを配ります。繁盛店への起爆剤にするべく、一人でも多くの人に配ります。午後7時。開始から8時間後。ついに、最後の一枚を配り終えました。結局この日、配ったチラシは1000枚! 果たして、チラシの効果はどれほどあるのか?翌日のランチタイム、運命のオープン。
 すると、開店直後。女性3人組が来店。すると…手にはチラシが!早速、チラシ配りの効果がでたのか?さらに、もう1組来店。無料クーポンの効果あり!その日の夜には、男性2名が来店。配布から2日後。来店したのは、女性のおひとりさま。カウンター席に座ると、何やらカバンをゴソゴソ。またまたチラシです!この後も連日、チラシ客が来店したのです!1日の売り上げが2〜3万円だったナランハ。チラシ配布翌日からの売り上げは…10月30日は「4万3610円」!10月31日はなんと「8万8430円」!年に数回しかない満席を連発!結果、1週間前と比べ、1日の平均売り上げが、1.85倍になったんです!
この状況に、オーナーシェフ山本さんは「テーブルが全部埋まったのは嬉しいです。これからも宜しくお願いします」と感無量。科学の力で、閉店危機のお店に新たな光が!今後、"正真正銘の人気店"へと変化を遂げるのでしょうか?頑張れ!ナランハ!



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