生き物(模様)
の科学
第1274回 2015年5月3日
今回は、自称「日本テレビで最も生き物を愛している」という桝太一アナウンサーの持ち込み企画。生き物の素晴らしさをお伝えする「桝太一の生き物バンザイ」!1回目のテーマは、生き物の「模様」の不思議!!
①水族館で生き物の模様の観察
後藤アナと桝アナが訪れたのは葛西臨海水族園。魚の模様を観察します。
斑点のあるシモフリタナバタウオ、頭のあたりに迷路模様のあるメガネモチノウオなど、続々と不思議な模様を発見!
さらに、桝アナが目をつけたのは、ノコギリハギというカワハギの仲間。このノコギリハギに見た目がそっくりな、シマキンチャクフグという魚がいるんです。ノコギリハギは毒を持つシマキンチャクフグに模様を似せることで、毒があるから食べないでと、身を守っているんです。
そして、ハシナガチョウチョウウオ。後ろの黒く丸い部分が、まるで目のように見えます。本物の目の上には、カラダと同じ縞模様が…。これは捕食者に急所である目を食べられないようにするためのもので、偽物の目(黒い丸)を狙わせて、本当の目つまり急所を分かりにくくすることで身を守っているんです。
生き物の模様は生存に役立っていた!
②模様のできる仕組みとは?
今までの生物学では、模様がどのように生き残りに役立っているか、進化にどのように関わってきたか、について論じられることの方が多かったんです。しかし、90年代頃から模様のでき上がるメカニズムが注目されるようになったんです。その研究では、『模様は自然と出来る』つまり、自動的に出来ちゃうということがわかってきたんです。その研究について詳しく紹介しましょう。
コンピュータの基礎となるマシンを考案したイギリスの天才数学者、アラン・チューリングは、60年前に生物の模様に関する仮説を数式で残しています。
この数式で生き物のほぼ全ての模様が表せるんです。しかし、チューリングのこの数式はあくまで数学的な仮説で、実際に生物に起こっているかどうかは証明されていなかったのですが、それを実証した方が日本にいるんです。
大阪大学の近藤滋教授です。1995年。35歳の時にチューリングの理論通りに魚の模様が出来ることを突き止め、ネイチャー誌に論文が掲載され、世界に衝撃を与えました。
近藤先生が行ったチューリングの理論の実証。それは驚くほど地道な作業でした。最初に、タテジマキンチャクダイという魚を家で飼って、魚の縞模様がどのように変化するのか、観察を続けました。3か月間 観察すると、タテジマキンチャクダイの縞が成長とともに、増えていくことがわかりました。しかも、その縞の増え方、模様の動き方はチューリングの理論にぴったりと当てはまったのです。
近藤先生の実証した、チューリングの理論とは魚の模様は、遺伝子に組み込まれた設計図に基づいてできるのではなく、あるルールに従って自動的にできるというものでした。
こちらは、ゼブラフィッシュという縞模様の魚。子供の頃、つまり幼魚にはこのように模様がほとんどありませんが、成魚になるとハッキリと模様が出てきます。幼魚の皮膚を顕微鏡で拡大してみると、黒と黄色の色素細胞がバラバラに混ざっています。これが大人になると変化し、同じ色の色素細胞が集まって模様を作りだすのです。
つまり、ゼブラフィッシュの縞模様は黄色と黒の2つの色素細胞の点の組み合わせでできているんです。そしてこの色素細胞の配置はあるルールに従って決められているんです。
2つの色素細胞がバラバラに分布しているときは、模様がないように見えます。
ところが、あるルールに従って配置が変わると縞模様に見えたり、斑点模様に見えたりするんです。この模様を作り出すルールは、たったの2つなんです。
生物の模様はたった2つのルールでできている!
③大実験!オセロで模様作り!
色素細胞があるルールに従って模様を作る。では、本当にたった2つのルールで模様ができるのか?ということで「目がテン大実験!オセロで生き物の模様を作ってみよう!」
まず、正六角形のマス目、10000マスが書かれたシートを用意します。そこに用意したのは一万個のオセロの石。オセロの石を白と黒の色素細胞に見立て、ランダムに配置。最終的に、白と黒が同じ数になるようにします。オセロを並べること2時間…もちろん、ランダムに並べた状態では、模様は見えません。
これから、2つのルールでオセロを動かすと、模様ができるか?を実験します。
近藤研究室の研究を元に2つのルールを設定しました。
1つ目のルールは、中心のオセロに対して、周りが4つ以上異なる色に囲まれたら真ん中のオセロはひっくり返ります。2つ目のルールは、同じ色の石が周囲2周集まると、中心の石がひっくり返るというもの。
この2つのルールで1万個のオセロを動かします。
まず、ひっくり返すオセロに印をつけていきます。抜けやミスがないように慎重に行い2時間で3169個に印をつけました!
次に印をとって、オセロの石をひっくり返します。1万個に印を付けひっくり返す作業を1ターンとし、それを何度か繰り返すのです。まさに気が遠くなる作業…。この作業を続けること6時間。こうして1ターン目が終了。
作業2日目。1度全体を返し終わった1万個の石。同じように2つのルールに従って印をつけ、2ターン目のひっくり返しを行います。
2ターン目では、2つ目のルールでひっくり返る石も増えてきました。全体をチェックし、印を貼っては返す。これを繰り返すこと4ターン…総作業時間、合計15時間!石をひっくり返した回数は…5719回!!最終形は模様が見事に浮かび上がりました!なんとなくヘビの模様に見えませんか?
今回は1万個のオセロを使いましたが、生物の色素細胞はこれの何万倍もの数があり、もっと繊細で綺麗な模様ができるというわけです。
始めは白黒ばらばらだったのに、たった2つのルールでホントに模様ができたのだ!
④2つのルールでできる生き物の模様!
オセロ実験の2つのルールの条件を少し変えると、さまざまな模様ができるんです。例:ルール1の「周りが4つ以上異なる色に囲まれたら真ん中のオセロはひっくり返す」→「周りが3つ以上異なる色に囲まれたら真ん中のオセロはひっくり返す」
こちらは、2つのルールの条件を変えてできるさまざまな模様を一つにまとめたもの。チューリングパターンとも呼ばれています。
生物の模様にぴったり当てはまるんです。例えば、フグの模様は、黒ベースに白の点々模様。白に黒の点々模様はチーターの模様。中にはサバの迷路模様もあります。シマウマのようなストライプは、迷路模様が筋肉などの影響でグイーンと伸びるとストライプになるんです。
たった2つのルールでさまざまな生き物の模様ができている!
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