知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


歴史と美食の街 金沢 の科学
第1275回 2015年5月10日


 北陸新幹線開業で、大注目の街、金沢!観光客で賑わう、人気スポットといえば、風情ある茶屋街。優美な芸妓さんの舞に、美しい街並み。そこには、知恵と伝統が生んだ驚きの秘密が!さらに、「兼六園」の日本最古の噴水にも謎を発見!そして北陸・金沢といえば、北陸ならではの魚介類に、街中にあふれるお寿司屋さん!今回の目がテン!は、歴史と美食の街「金沢」を科学します!

①金沢の格子"木虫籠"台形に隠された秘密とは?

 この春、開業した北陸新幹線!「かがやき」に乗って約2時間半…「世界で最も美しい駅14選」に選ばれた駅から金沢の旅スタートです!
 金沢は、江戸時代、百万石の大名・加賀藩城下町として栄えた伝統の街並みを残す、歴史と文化が息づく街。中でも「金沢3茶屋街」と呼ばれる人気スポットが、今でも料亭が立ち並ぶ「にし茶屋街」。浅野川沿いに佇む、「主計町茶屋街」。そして、中でも一番人気なのが「ひがし茶屋街」。金沢で最も規模が大きく、京都・祇園と並ぶ、日本の代表的な茶屋街です。いずれも、江戸時代後期、1820年に、12代藩主・前田斉広が城下に点在する茶屋を集めて造ったもの。茶屋は、裕福な旦那衆が、舞や三味線など、芸姑たちの優美な芸を楽しんだ社交場。
 今でも3つの茶屋街に40人以上の芸姑さんが在籍し、夜には、華やかな宴が催されています。その茶屋街に隠された科学とは、金沢の茶屋街に見られる細い格子、通称「木虫籠(きむすこ)」。基本的には、京都などの格子と同じく中を見せないための目隠し。一般的に格子は、外からだと、家の中はほとんど見えません。
 お店の中におじゃまさせてもらうと…部屋の中からは、歩いている人の服の色まではっきり見えます。これは、人間の目が明るいところに慣れやすい性質があるためなんです。金沢の木虫籠は、京都などの町家に見られる一般的な格子に比べて、細く、狭い作りになっています。木虫籠をよ〜く見ると、格子の一本一本の内側が、狭い台形になっています。台形にすることでどんな効果があるのでしょうか?伝統建築に詳しい金沢工業大学、環境・建築学部の山崎幹泰准教授に聞いてみると…「金沢の木虫籠は、京都の紅殻格子などに比べても、非常に細く隙間も狭い作りになっています。断面を台形にすることで、外からと内からの見えにくさ見えやすさを調整していると考えられる」と解説。そこで実験!長方形と台形の格子で見え方にどんな違いがあるのか比較します。幅と間隔を全く同じに揃えた、長方形と台形の格子を作って実験開始。わかりやすいように番組ロゴが格子越しにどう見えるか観察します。四角いハコを家と想定し、光があたっている方が外、暗い方を内側として、間に格子を挟んで見比べます。部屋の内側から、外に貼った番組ロゴを見ると…左側の長方形に比べると、右側の台形の方が少し明るく、外が見やすくなっています。台形の格子は斜めに削った側面が明るくなっています。建築構造に詳しい工学院大学、建築学部・建築デザイン学科の西森陸雄教授によると、これが木虫籠が台形になっている理由だといいます。西森先生は、「木虫籠の特徴的な台形の断面というのは、室内の暗さと外の明るさの間をちょうどうまく調和する機能を持っていると思います。長方形の状態だと、中から見た時に格子の内側が非常に暗い状態になって外の明るさとの間にすごいギャップがあります。そうすると人間の目っていうのは、暗いところにいると外の景色が白く飛んで見えて外の景色をハッキリ見ることができない。一方で木虫籠の台形の断面というのは断面の側面の部分に光が反射して中間的な明るさの部分ができる。それによって目が慣れて、外の景色が見やすくなる」と解説。木虫籠を良く見ると、確かに斜めの側面が、少し明るくなっています。ここが外と中の明るさのクッションとなり、外の景色がより見えやすくなるというわけなんです。さらに、格子を傾け、それぞれ斜めから見てみると…長方形の方はロゴが見えなくなってしまいましたが、台形の方は、角を削っているため、斜めからもロゴが見えています。

所さんのポイント
ポイント1
台形の格子は部屋からの視野も広がり、入ってくる光も増えるため、部屋の中もより明るくなるのだ!

②兼六園 日本最古の噴水の謎"逆サイフォンの原理"とは?

 フランスのミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで星3つを獲得した、世界的にも人気の高い名園、「兼六園」。6つの景勝を兼ね備えていることから兼六園という名がつきました。その6つの景勝とは、明るく開放的で広々とした「宏大(こうだい)」、静かで緑が鬱蒼と茂る「幽邃(ゆうすい)」、橋や植栽など人の手が加わった「人力(じんりょく)」、手つかずの古びた自然を表す「蒼(そう)古(こ)」、池や滝、川などの水の景色「水泉(すいせん)」、高台から遠くまで見渡せる「眺望(ちょうぼう)」。
 これら全てを一つの庭に共存させるのは、不可能と言われるほど、難しいことなんだそうです。中でも特に難しいのが、眺めのいい高台に豊富な水を集めること。通常水は、低いところに溜まるものですが…兼六園は、高台に位置しています。空撮カメラを飛ばして兼六園を上空から見てみると…木が生い茂っている部分が兼六園。その周りを街が取り囲んでいますが、横から見た断面図を見てみると、周囲の街よりも高くなっているんです。では水は、いったいどこからやって来たのか?
 その水源を知る、辰巳用水土地改良区・畦地実さんに案内をしてもらいました。そこは、兼六園から11キロ程離れた標高約100mの辰巳ダム。川から脇の水路に分岐し、山の中のトンネルへと流れていきます。  そのトンネルが覗けるという横穴へ。直径2メートルほどのトンネルの中を静かに水が流れていました。400年ほど前に手作業で掘られたそうで、およそ5キロも続いています。トンネルを抜けた水路は、ゆるやかに山を下り、さらに先の兼六園へと流れていきます。約11キロ離れた標高の高い山から、自然の勾配を利用して水を引いてきていたんです。こうして、高台の眺望と豊富な水が両立した、珍しい景色ができたのです。
 さらに、水にまつわる謎が!1861年に造られた日本最古の噴水の謎とは?兼六園管理事務所の小松原さんによると、この噴水はポンプなど動力を一切使わず、逆サイフォンの原理を応用して上がっていると言うんです。「逆サイフォンの原理」とは、一体なんなのか?東京電機大学、工学部機械工学科・機械工学コースの高橋直也准教授にその原理と仕組みを聞くと、「水面の高低差を使って、管が一旦高いところを通って、水を低いところに流すことができます。これがサイフォンです」と解説。そこでまずは、サイフォンの原理を説明します。見やすくするため、青く色を付けたAの容器の水を、同じ量の透明な水を張ったBの容器に移します。移動に使うチューブは、水で満たして中の空気を抜きます。そして、チューブの片方の端を、Bの容器に入れ、Bの位置を下げていくと…水面の高低差が大きくなると、チューブの中の圧力差も大きくなります。水面が高いAの方がBよりも圧力が高くなるため、AからBの方向に、水が流れます。両方の水面に高低差がなくなると、水の移動は止まります。では、兼六園の噴水に応用される、「逆サイフォンの原理」とは?逆サイフォンは、「サイフォン」と理屈は同じで、水を移すための管が、上ではなく、低いところを通っています。実は兼六園の噴水は、水源の大きな池より低い位置にあるため、ポンプなどの動力無しでこの逆サイフォンの原理で、噴き上がっていたんです。
 噴水の水は、溜まらずに外に流れていくようになっているため、2つの高さは揃う事なく、水が噴き出し続けているというわけなんです。

所さんのポイント
ポイント2
兼六園の噴水は、水源の大きな池より低い位置にあるため、ポンプなどの動力を使わず「逆サイフォンの原理」を応用していたのだ!

③北陸のお寿司天国 金沢市民 驚きの能力を発揮!

 北陸・金沢のグルメといえば…新鮮魚介類!金沢の台所、近江町市場に行ってみると…ノドグロにしろえび、バイ貝と、北陸ならではの顔ぶれがズラリと並んでいます。中でも、金沢市民のオススメは…赤くてきれいな甘エビに比べて茶色いのがガスエビ!見た目が悪くて売り物にならない「カスエビ」と呼ばれていたことから「ガスエビ」になったとか。
 ガスエビは、傷みやすいため、県外に流通しづらい、北陸ならではの味。実は石川県沖は暖流と寒流が季節ごとに入れ替わる海域。それにより暖流系と寒流系、それぞれの魚が回遊するため、豊富な種類の魚介類が流通しているんです。そんな豊富な魚介類が揃う金沢は、お寿司屋さんの激戦区!街の至る所に軒を連ねているんです。
 そこで、お寿司天国・金沢市民にこんな検証!東京と金沢の小学生、どっちが寿司ネタ多く知っているか対決〜!まずは東京の小学校!小学校4年生の皆さんに、知っているお寿司のネタをアンケート用紙に書いてもらいました。結果は、平均1人13ネタ!対するのは、兼六園の近くにある、味噌蔵町(みそぐらちょう)小学校4年生のみなさん!同じようにアンケート用紙に書いてもらいます。どんな寿司ネタを書いたか聞いてみると…オジサンやナマコなど、マニアックな魚も含めて20連発!アンケート用紙には、文字がギッシリ!北陸ならではのツウな魚介類もたくさん書いてあります。結果は…金沢の小学生、平均25ネタで圧勝!金沢は、子供の頃から寿司ツウが多い街だったんです!ならばと、こ〜んな実験!
 「白身おまかせにぎり」5貫!似たような見た目の白身魚の名前。金沢市民はこれを食べただけで、当てられるか実験します!小学5年生の男の子から、実験スタート!まずは実食。名前がわかったら札を置いてもらいます。・・・が!一貫食べたところで他のネタに札を置き、しかも正解!なんと見た目で判断!その他は、全て食べ終わってから考え、札を並べていきました。さて、結果は…5ネタ中3ネタ正解!それでもお見事!そして、地元の大人たちは…まずは見た目で判断し、食べながら札を置いて、全問正解!中には、なんと見た目だけで判断し、全問正解する人も!

所さんのポイント
ポイント3
金沢市民は、お寿司に本当に詳しかったのだ!




場所・建物編へ食べ物編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧
番組に対する、ご意見、ご感想等ございましたら、番組メールボックスの方にお寄せ下さい。
宛先は、 megaten@ntv.co.jp です。
原則、質問にはお答えできませんが、頂いたメールは、番組スタッフが閲覧し、今後の番組作りの参考にさせていただきます。