登山
の科学
第1276回 2015年5月17日
いま、加速を続ける「登山ブーム」。登山用品の市場規模は年々増え続け1890億円に!登山人口は860万人と依然大人気!実は、その7割を占めるのが、中高年の方々なんです!さらに、今"健康のため"に山に登る人も増えていると言います。では、登山の何が健康に良いのか?
調べてみると、意外なコトを発見!今回の目がテンは、身も心も健康になる!「登山」を科学します。
①目標ポイントが大事?登山が健康に良いワケ
向かったのは、長野県・安曇野市。そこに、初心者でも簡単に登れる健康増進に適した山があると言いますこの山を紹介してくれたのは、運動生理学からみた科学的登山術に詳しい、信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授。能勢先生によると、山に登ると、特に中高年の人が健康になるそう。そのためには、ちょっとした工夫が必要なんだとか。
そこで、運動強度の目安とするため、心拍計を装着。まずは後藤アナ、自分のペースで登ってみることにしました。登り始めて10分。心拍数を見てみると…153。
先生の研究によると、このくらいの「ややきつい」ペースで登ることが、体に良い影響を与えることが分かったんです。また、先生によると「ややきつい運動をして、筋肉を鍛えて、心肺機能を鍛えるということは、生活習慣病の症状を著しく改善します。高血圧、糖尿病、それから肥満、最近言われているのは認知症、うつ病」だと言います。この「ややきつい」運動を続けて行いやすいのが、登山の魅力なんだそう。
平地での「ややきつい」運動といえば、ジョギング。目標を自分で決めなければならないたいため、モチベーションを維持するのは、簡単ではありません。一方、登山は登頂という明確な目標があるため、「ややきつい」運動を「長時間」行うことができるんです。
また、休憩をとるタイミングについて能勢先生に伺うと、「だいたい30分ぐらい経ったら1ピッチいれる。それ以降は1時間ごと」なんだそう。また山登りは、気候によっては1時間に600ccくらい汗をかくそうで、水分補給は随時取るべきだそうです。
ややきついペースを維持するためにも「適度な休憩」と「こまめな水分補給」が必要なんです。そして、登ること1時間。ようやく頂上に到着です!そこからは、北アルプスに囲まれた安曇野市を一望できました!
この「登頂」という達成感こそ、健康になる登山の最大のポイントだったんです!
②下山が健康に役立つ?上りvs下り 大実験!
登山は登頂したら終わるわけではありません。能勢先生によると、「実は山登りっていうのは下りというのがすごく大事ですごく健康増進に役に立つ」と言うんです。そこで早速、下山開始!下りは足取りも軽く、かなりハイペースで下りて行くことができました。ところが、心拍数を見てみると…心拍数が100を切っていました。
登りの時に比べ、心拍数はおよそ半分。能勢先生は、「(下りの)体全体のエネルギー、カロリー消費量はそんなに多くないんです。だいたい上りの3分の1ぐらい」と解説。でも、こんなに楽なのになぜ下りは健康に役立つのか?そこで!上りと下りで、体に与える影響がどう違うのか?実験です!協力してもらったのは、30代から50代の男女6名。
まずは、くじ引きでAチームとBチームに分かれます。2階までの高さは12.5m。それを80回繰り返して合計1000mの高さを上り下りしてもらいます。早速、実験スタート!Aチームは、階段を歩いて上りエスカレーターで下りてもらいます。一方、Bチームは、階段を歩いて下りエスカレーターで上ってもらいます。1時間経過…歩いて上るAチームはかなりペースが落ちてきている様子です。
そして、トップでゴールしたのは階段を駆け下りるBチームの男性!一方、最後にゴールしたのはAチームの男性。ところがその翌日…下りのBチームに思わぬ変化が!
実験時はAチームよりも楽だったはずが、一日経って足が張っているというんです。一方、上りのAチームは意外と平気そう。いったいどういうことなのか?筋肉が損傷した時に血中に増えるクレアチンキナーゼという物質を計測してみると…驚きの結果が!実験直後、辛いと感じていたAチームはそれほど筋肉が損傷していたなかったのに対し、楽だと感じていたBチームは、より、筋肉の損傷が激しかったんです。実は、下りの時に脚にかかる衝撃は上りの時のおよそ2倍。そのため、筋肉が損傷しやすいんです。先生によると、この"筋肉の損傷"こそがポイントだと言います。
筋肉を太くする「下り」は、健康のためには欠かせないポイントだったんです!
③山に登ると何が変わる?結婚19年目の夫婦で大実験
人はなぜ、山に登るのか?山に登る人達に聞いてみると…みなさん山に登ると何かが変わると言うんです。そこで!
その"何か"を明らかにするべく、結婚19年目の夫婦に協力してもらい実験です!まずは、普段のご自宅での様子をウォッチング。
部屋の外で夫婦の会話時間と笑顔を交わした回数、そして接触回数を計測します。普段は会話も必要最小限。妻の恵子さんが話しかけても…そっけない返事。実験の結果、2時間のうち夫婦の会話は、合計13分54秒。笑顔の回数は4回。接触回数は0でした。
さらに、ご主人には内緒で恵子さんに夫への評価を5つ星で判定してもらうと…星3.5という結果に。では山に登ると、2人の関係にどんな変化が表れるのか?2人は、川のせせらぎを聞きながら登山口を目指します。家族で山に登ったことはあっても、夫婦では初めてです。
いよいよ本格的な登山道へ。もちろん、道中の会話時間、そして笑顔と接触回数は、スタッフが逃さず計測しています。
そして登ること1時間…そして、昼食タイム。大自然を眺めながら、夫婦水入らずの昼食です。実験の結果…2時間のうち会話の時間は、69分27秒。笑顔の回数は32回。接触回数は7回と、自宅よりも大幅にアップしていたんです!
その後再び、恵子さんに夫の評価を聞いてみると…なんと!星1.5アップして満点の5つ星に!
ではいったいなぜ山に登るだけで評価がアップしたのか?対人心理学に詳しい東京未来大学の大坊郁夫学長に伺うと、「普段の生活の中にいると、奥さんであれば食事を作って、夫は食べたり新聞を読んだり、相手がその中の一コマでしかないわけです。ところが登山といういつもと違う非日常の世界で、自分と相手だけなので、お互いがクローズアップされる。さらに、同じように頂上に行こうという「目標」を持ってます。それをふたりで成し遂げているという連帯感があるため、余計親密さが増すと考えられる」と分析。
人が山に登るのは、カラダだけでなくココロも健康になる為だったんです!
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