自然をテーマに研究してきた科学者たちが…田舎暮らしを実践!そうすれば、みんながやってみたくなる田舎暮らしができるのではないかという長期実験企画。
今回は、田畑を荒らすイノシシ対策!新たな科学者も登場!
①作物を守る!イノシシ対策
3月下旬。田舎暮らしの土地の畑に、初の作物、ジャガイモを植えました。あれからおよそ1か月。順調に育っているのでしょうか?
畑には、青々とした葉が。ジャガイモがちゃんと芽吹いていました。その1週間後、田舎暮らしの地にやってきたのは…後藤アナウンサー!初めての訪問です。田舎暮らしを行う東京農工大学の松村先生とも初対面。
畑には、先生が言っていたとおり、ほとんどのジャガイモが芽吹ききれいに一直線に並んでいます。土を掘り返してみると…小さな小さなジャガイモが!そして、湧き水を引いた池にも変化が。気持ちよさそうに泳ぐ無数のおたまじゃくし。けれど、気になるものを発見。それは…電気柵。
電気柵とは、電流が流れる電線で柵を作り、柵に触れた動物に電気ショックを与え、追い払うという獣害対策。全国でおよそ200億円に上るという作物への鳥や獣の被害。中でも、ここ常陸太田では、イノシシによる被害が続いており、作物を植える前に、イノシシ対策に最も効果が高いという電気柵を設置していたのです。しかし、実は電気柵を設置しても、イノシシが畑に入ってしまうケースが全国的に起きているのです。
そこでイノシシ専門の科学者を探しました。5月上旬。松村先生と根本先生が中庭で一息ついていたところに…イノシシの専門家登場!電気柵が破られる謎は解けるのか?
②イノシシ専門家が驚きの知恵を披露!
田舎暮らしの土地にやってきた初の女性科学者。この方こそ…作物をイノシシから守るために、お呼びした専門家。新潟県にある長岡技術科学大学の山本麻希准教授。フィールドワークでクマやシカ、そしてイノシシなど野生動物の生態を研究。全国各地で鳥や獣の害について講演を行う、私たちが探し求めていたスペシャリスト!まずは、私たちが設置した電気柵をチェックしていただきました。すると、山本先生は電気柵の周りに草が生い茂っている様子を指摘。漏電の恐れもあると言います。
電気柵の電流は、電線に触れたイノシシが地面と接触していることで体に流れます。しかし、雑草が電線に当たっていると、そこへ電流が流れて漏電し、イノシシが触れた時、威力が弱くなってしまうのです。
電気柵を設置したのにイノシシに入られてしまう大きな原因は、雑草による漏電のせいだったのです。そこで現在、どのくらいの電圧がかかっているかを調べます。3800ボルトよりも下がっていると電気柵の効果はありませんが…今のところ、7300ボルト出ていると聞き、一安心。
しかし、夏に向け、雑草はドンドン伸びてくるはず。雑草を防ぎたい場所に敷くものとして、ホームセンターなどで防草シートが売られているのですが…山本先生によると、「普通の防草シートを(電気柵に)張ってしまうと、ビニールなので絶縁体になってしまう」と言います。
地面に、電流が流れない絶縁体があると、イノシシは感電しなくなってしまいます。そこで先生は…電気の流れる防草シートを作成。太陽光を遮断する生地で、雑草が伸びるのを防ぎ、生地には銅の針金が編みこまれているため、電圧も下がらないという優れもの。
後日、この電気の流れる防草シートを設置。これでここの農作物をイノシシから守ることができます。山本先生によると、「日本人は昔からイノシシの害と戦ってきた。「シシ垣」と言って、石を積んで、集落中20kmくらいを覆う柵があり、それを公共事業でやっていたと言われており、そうとう昔からそういうせめぎ合いがあったんだと思う。でもイノシシは増える。豚と一緒で毎年4〜5頭子供産むため、出て来たものは、ある程度は獲りつつやっていかないといけないのかなと思う」と説明。
電気柵で囲った畑の作物は守れたとしても、イノシシが増え続ければ他の畑で被害が出ます。周辺の山にいるイノシシは、ある程度、狩りで駆除しないと、本質的なイノシシ対策にならないというのです。
では、人間とイノシシが共存する道はないのでしょうか?松村先生は、「一方で動物保護っていう立場がありますよね?(イノシシの)適正密度を維持できるんだったら、どういう方法っていうのが考えられます?」と山本先生に質問。すると山本先生は、「私は(山を)管理する専任職員であったり、例えばドイツなんかはフォレスターと言って、森を管理する人がシカも一緒に撃って管理しているので、そういう職業も出てくるのかな」と説明。フォレスターとは、森林での木の伐採や動物を適正な数に保つといった森を管理する国家公務員。ドイツでは子供たちの、憧れの職業の一つなのだそう。すると、今度は、根本先生が日本の森の問題点を指摘。田舎暮らしをしようとすると、突き当たってしまう野生動物による被害。根本的な解決には、山の木々や動物たちを人間がきちんと管理する必要があるのです。科学者ならではのディープな森談義!新たに山本先生を加え、科学者たちの田舎暮らしはさらに盛り上がってきました!
③イノシシ捕獲作戦!
田舎暮らしの土地の農作物を守るため、電気柵と、電気の流れる防草シートを設置。そして山本先生は、イノシシ被害の根本的な対策に向け、動き出しました。この日は常陸太田で行われている、あるイノシシ対策を見学するということで酒井さんも同行。こちらの女性は先生の生徒さんです。
3人が向かった先は…常陸太田のイノシシに最も詳しい地元猟友会の方々。猟友会によると、これから犬を使ったマキ狩りを行うそう。
マキ狩りとは、犬を使い複数の人間で行う狩りのこと。まず山に犬を放ち、イノシシの匂いをたどらせて追いたてます。そして犬に追われたイノシシが、山から出てきたところを銃で仕留める伝統的な猟の一つ。
すると、先生が何かを発見。そこには、イノシシが土を掘り返した跡が。山本先生は、「イノシシって鼻で土の中のものをいつも掘っているんですね。ミミズ食べたり、根っこを食べたりしているんで、あれを水田でもやっちゃうんで、イネを全部倒されて被害がすごく大きくなる」と説明。
被害を防ぐため、田畑の近くに出没するイノシシを猟友会が駆除しているのです。すると・・・イノシシが一頭も出ないまま、山へ入った犬たちが出てきました。イノシシの匂いをたどっていた犬が戻ったということはつまり、この山にはこの日、イノシシがいなかったということ。
その後、別の山へと移動。イノシシを追いましたが…捕獲はできず、この日の猟は終了。猟友会の会長が、以前獲ったイノシシの肉をごちそうしてくれるというのでご自宅へ伺いました。豪快なバーベキューで頂きます。
そしてイノシシ肉を頂きつつ、山本先生は猟友会の皆さんとコミュニケーション。これからのイノシシ調査に猟友会の皆さんも協力してくれる事になりました。翌日。さっそく山本先生達は、仲良くなった猟友会の方と田舎暮らしの土地の裏山へ。そこで先生はイノシシの匂いが残るこの場所に罠を仕掛け、イノシシを生け捕りにすることに。でも、生け捕りにして何をするつもりなのでしょう?山本先生は、「電波発信機をつけていく」と説明。罠にかかったイノシシに麻酔をかけ、耳に電波を出す装置を取り付けます。その電波を受信器で拾い、イノシシの行動範囲などを調査するのです。その目的を先生に聞くと、「出てくるところをしっかり見晴らし良く狩り払えばイノシシが出てきにくくなりますし、イノシシはやっぱり増えますので、捕獲するときに、イノシシがよくどういう場所を使っているかわかれば、より効率的に捕獲体制が組めるとか。色々なメリットがある」と説明。罠は2か所。猟友会の方と先生が話し合い、出没しそうなポイントに設置。罠のそばの木に匂いの強いコールタールを塗りました。
匂いの強いものを体にこすり付けるイノシシの習性を利用し、おびき寄せ・・・落ち葉でカムフラージュした罠にイノシシが足を入れると捕獲できるという仕組みです。そして、イノシシの姿を映像でも捕えるため、監視カメラを設置しました。でも、本当に土地のこんな近くにイノシシが出るのでしょうか?心配になった酒井さんは、徹夜で監視カメラのモニターを見守ることに。すると…罠付近で動くなにかが!イノシシでしょうか?
しかし・・・。その正体はタヌキでした。その後も監視を続けた酒井さん。しかし、午前2時をまわると睡魔が・・・。…とその時!確かに画面にはイノシシの姿が!!今度は先ほどよりサイズの小さなイノシシが!しかも2頭!子供でしょうか?残念ながら罠にはかかりませんでしたが、今回、罠周辺をイノシシが通ることを確認できました!これは何としても生け捕りにし、イノシシの行動を解明しなくてはなりません!
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