知識の宝庫！目がテン！ライブラリー

錯覚の科学

第1279回　2015年6月7日

　実は今、世の中は錯覚ブーム。世界中の学者も参加して錯覚を使ったおもしろ作品を競う「世界錯覚コンテスト」まで開かれているほど。
　さらに！錯覚が、私たちの生活、特に女性を美しく見せるためのメイクやファッションなどにも利用されているんです。
　しかし、街で調査してみると、メイクで目を大きく見せようとして、逆に小さく見えたり、太って見えたりするＮＧ錯覚ファッションが続出！
　そこで今日の目がテンは、すぐに使える！目がテン流役立つ錯覚の科学！

①目を１０％以上大きく見せる２つの錯覚効果とは？

　女性にとってのあこがれといえば、ぱっちりとした大きな目ですよね。街で聞くと、皆さん、メイクで目を大きく見せる工夫をされているよう。しかし実は、錯覚をちゃんと理解していないと、逆効果になってしまうこともあるんです！
　そう語るのは、大手化粧品会社とも研究してきた錯覚の専門家、大阪大学人間科学研究科の森川和則教授。森川教授は、ある２つの錯覚効果を使ったメイクで、どれだけ目が大きく見えるかを研究。その結果・・・ある"２つの錯覚メイク"で目を１０％以上も大きくできることが分かりました。まず、森川先生に１つ目の錯覚効果を聞いてみると、「アイメイクに活用される錯視はデルブーフ錯視。

　二重に描かれた円は、外側の円によって内側の円の大きさが、大きく見えたり小さく見えたりする」と解説。二重まぶたや、涙袋が好まれるのは、このデルブーフ錯視が働き、目が大きく見えるからなんです。
　このデルブーフ錯視を応用して、目を大きく見せる事ができるのが、アイライン。目の周りに外側の円の効果をつけることで、目が大きく見えるようになるんです。そして、もう１つの錯覚効果を森川先生に聞くと、「ミュラー・リヤー錯視を活用することで、目を大きく見せる事ができる」と解説。例えば、矢印のついた２本の直線。見た目は、矢印が内向きの方が長く、外向きの方が短く見えますよね？でも実は、どちらも同じ長さなんです。これが「ミュラー・リヤー錯視」と呼ばれる効果なんです。
　この錯覚効果を応用したのが、マスカラやつけまつげ。外側に向かうまつげを強調すると、外側に開く矢羽と同じ効果があり、目を大きく見せることができるんです。森川先生は、スッピンの目をパソコン上で少しずつ大きくした画像を作成。２つの錯覚効果でアイメイクした目と、パソコン上で大きくした目を、学生３２人に見比べてもらい、錯覚効果でどのくらい目が大きく見えるかを検証しました。すると最大１１３％、パソコンで目を大きくしたものと同じ大きさに錯覚することがわかったんです。しかし！森川先生によると、街行く女性の中には、２つの錯覚効果をうまく利用できず、逆効果になってしまっている人もいると言うんです。
　そこで、森川先生と共に街でチェック！すると、とある女性が目に留まりました。ＮＧだというこの女性のメイクは、マスカラとつけまつげで、外側に開くミュラー・リヤー錯視。アイラインで目の外側に円をつけるデルブーフ錯視。涙袋も強調して、二重にデルブーフ錯視の効果を狙っています。２大錯覚ポイントをしっかり押さえたメイクのように思えますが、なぜＮＧなのでしょうか？森川先生によると、「黒のアイラインで、上まぶたと下まぶたに塗って、目を全部囲ってしまうと、目を大きく見せる錯覚が、逆に弱くなってしまう」と説明。

ポイントは、黒いアイラインの使い方。黒いアイラインで、目を全部濃く囲ってしまうと、デルブーフ錯視よりも、ミュラー・リヤー錯視の方の、短く見える効果が生まれてしまうんです。では、ミュラー・リヤー錯視に邪魔されず、デルブーフ錯視を最大限に生かす簡単な方法とは・・・？黒いアイラインではなく、茶色のアイラインを使うこと。黒よりもラインがボヤけるため、ミュラー・リヤー錯視の矢印の効果は生まれにくくなります。実は、先ほどの「すっぴんの目」より１３％大きく見えたアイメイクで使ったのは、茶色のアイライン！２大錯覚を最大限に活かしたものになっていたんです。

黒いアイラインではなく、茶色のアイラインを使うことで、２大錯覚を最大限活かすことができるのだ！

②スリムに見せる錯覚ファッションとは？

　男女にかかわらず誰でも、できればスリムに見せたいもの。錯覚の専門家、森川先生によると、錯覚で逆に太って見えるファッションも見かけるとか。そこで、街行く人を森川教授がチェック！
　目に留まったとある女性の服は、単色のトップスと単色のボトムス。でもこれ、よく見るファッションですが、森川先生によると、「目の錯覚の観点から言うと、残念ながら、ちょっとＮＧかなと体を上下に水平線で二分割しますと実際より太って見えてしまうという目の錯覚が生じる」と言うんです。上下で色が二分割されると、太って見えてしまう？その錯覚効果とは…ズバリ「バイカラー錯視」。

　例えば、面積が同じ二つの長方形を、それぞれ二色で分割すると、横に分割されたＡが太く、縦に分割されたＢは細長く見えます。これがバイカラー錯視の効果。このバイカラー錯視という点からみるとこの女性は、錯覚的に太って見えてしまうファッション。
　正しくバイカラー錯視を利用したファッションのポイントは「カーディガン」です。比べると、確かにカーディガンの方が細く見えます。カーディガンで、分割された縦ラインにより、バイカラー錯視が生まれ、スリムに見えるようになるんです。この時のファッションのポイントは、内側に薄い色、外に濃い色を着ること！これで、バイカラー錯視の縦ラインの効果が最大になるといいます。スリムに見せる錯覚効果は、これだけではありません。

同じ女性の２枚のイラスト。それぞれの足の、別の場所を隠します。Ｂは足の太い部分だけを見せています。逆にＡは細い部分だけ見えるようにしています。隠している面積は同じですが、Ｂの方が太く見えます。この現象を「アモーダル補完」と呼びます。アモーダル補完とは、見えない部分を脳が自動的に補完する現象のこと。
　人間の脳は、見えない部分を見える部分から補完するので、Ｂは太く、Ａは細く見えるんです。この錯覚を応用すると、例えば、ズボンを履く時に足首だけを見せる方が、脚全体が細く見えるという効果が。
　さらに、同じアモーダル補完の効果でひざ上丈のスカートの方が、脚が見えている部分が長いので、脚全体が長く見える効果もあるそうです。例えば、バイカラー錯視で、太く見えてしまう横ライン、アモーダル補完で脚が短く見えてしまうＮＧファッション。しかし、正しく錯覚を活用すれば、錯覚でスリムに見えるんです。

「アモーダル補完」を正しく活用することで、脚がスリムに見えるのだ！

③後藤アナが挑戦！触覚ヘアで小顔大作戦！

　何も知らずに呼び出された後藤アナ。実は今回、後藤アナに錯覚を使って小顔になってもらう実験を行います！後藤アナの顔は特に大きくはありませんが、丸顔で自分ではもう少し小顔に見せたいのだとか。錯覚で、小顔に見せる方法とはどんなものなんでしょうか？

　森川先生に聞いてみると、「小顔に見せるには、触角ヘアが効果的」と解説。触角ヘアとは、昆虫の触角のように顔の横に一筋長い毛を垂らしたヘアスタイル。最近流行の髪型で、例えばこちらのアイドル、乙女新党では、６人のうち５人が触覚ヘアなんです。後藤アナがこのヘアスタイルに挑戦。
　果たして、今より小顔になれるのか？それにしてもなぜ、触角ヘアが、小顔に効果的なんでしょう？森川先生によると、「顔が大きく見えるのは頬の面積。顔が大きい人は頬が広い人。頬の面積を小さく見せれば、それだけで小顔に見える。長い物を分割すると、短い辺が２つに見える。二分割すると、短い部分部分の短さが目立ち、それにひきずられて、全体の長さも短く見えると、考えられている」と解説。

例えば、羊羹を真ん中から半分に切り、まるまる１本の場合と比較してみます。確かに半分に切った方が短く見えませんか？触角ヘアは、頬を分割、狭く見せるので、小顔に見せる効果があるんです。そしていよいよ、後藤アナの触角ヘアが完成！
　果たしてその小顔効果は？さらに！こんなアイテムでも小顔効果が！スタッフが取り出したのは帽子。後藤アナにかぶってもらい、普通の時と比べてみると、帽子をかぶっている方が、小顔に見えます。
　実はこれも錯覚効果！森川先生によると、「これはボールドウィン錯視の応用」だと言います。

例えば、大きな四角形が両端についた線の方が小さい四角形が両端についた線より、短く見えます。しかし比較してみると線の長さは同じ。これがボールドウィン錯視。
　森川先生は、人間の脳は物体の一部分の形や大きさを単体では見られず、相対的に見てしまうんだとか。大きい四角との対比で、線の長さを見てしまうので、短く感じるんです。この対比の効果を利用すれば、袖口の広がった服を着ることでぴったりした服より二の腕が細く見えたり、脚でも同じく、裾の広がったものを着れば脚を細く見せる事ができるのです。

「対比の効果」をうまく利用することで、二の腕や脚を細く見せることができるのだ！

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