戦国武将の健康法
の科学・第2弾
第1292回 2015年9月13日
戦国武将の健康法の第2弾!
戦国時代の平均寿命は30代と言われる中、60歳以上まで生きた武将もたくさんいました。今回、長生きした戦国武将の健康法を科学で解き明かし、現代人の私たちにも役に立つ健康法やトレーニング法を紹介!
①前田利家の能トレ「カマエ」!
天下人 信長、秀吉に仕え、秀吉亡き後は徳川家康と並ぶ影響力を誇った戦国の大物、前田利家。身長180センチという当時としてはずば抜けた大男でトレードマークは三間半(6.4m)の長槍!利家と同じ身長180センチの方にこの槍をもってもらったところ、持ち上げるだけでも四苦八苦!しかし、利家はこの長槍を持ち甲冑を着て大暴れしていました。53歳の最後の出陣で、総大将として敵の城を3つも落すという驚きの体力。また、私生活でも妻まつとの間に2男9女11人もの子どもをもうけたのです。
なぜ利家は、晩年まで強い肉体を保てたのでしょうか?戦国武将に詳しい小和田教授によると「前田利家の場合は、ある年代から亡くなる直前まで『能』を趣味にしていた」とのこと。能とは、ゆったりとした舞いや動きが特徴的な伝統芸能。こんなゆっくりとした動きが強い体を保つトレーニングになるのでしょうか? そこで、筋肉のスペシャリスト須藤教授にも同行してもらい、能の動きを分析してもらいます。今回協力してくれるのは650年の歴史を持ち加賀、前田家ともゆかりのある宝生流二十世宗家・宝生和英さん。ユージが挑戦するのは、能の基礎となるカマエという基本姿勢にハコビという基本動作です。
まずは、能楽の基礎「カマエ」。これは能の基本姿勢で中腰の状態。能では「おもて」と呼ばれる面をつけると視界がせまくなりバランス感覚が鈍ってしまいます。そこで、重心を落とした基本姿勢が必要なんだそう。
実際にユージがやってみると、ゆっくりした動きなのにすごい汗が!ここで筋肉のプロ・須藤教授によると、この運動で老化の三条件がクリアできるとのこと。老化の三条件とは、肩甲骨周辺、モモの裏側、足の裏の筋肉が衰えること。須藤教授によると、この3つは、普段の生活ではあまり伸ばされていないので血行が悪くなってしまうそうです。すると筋肉に老廃物がたまりしなやかさを失って固くなってしまいます。その結果、肩こりや腰痛、バランスが悪くなって転倒などの原因になるんです。「カマエ」をすると、ヒジを横に張ることにより、肩甲骨周辺の筋肉に力が入っています。さらに、中腰の姿勢を保つために、モモの裏にも力が入ります。そして足の裏にも踏ん張るため、力が入っているんです。カマエは、老化の三条件の筋肉全てに、力が込められている状態なんです。力を入れると筋肉が収縮し、そこに通っている血管が圧迫され血流の勢いが増します。これにより、血液が筋肉にたまっていた老廃物を押し流し、固くなっていた筋肉がしなやかになるというんです。須藤教授は、この姿勢に呼吸法を取り入れると、さらに効果がアップするといいます。
そこで、能の動きを取り入れた「立っているだけで老化予防・簡単能トレ」を紹介!
1.足を揃え、軽くヒザを曲げた状態でヒジを横に張ります。
2.その姿勢のまま、鼻から3秒、大きく息を吸って、口から6秒でゆっくり吐く。
3.以上を1セットとして、10セットくり返す。
力を入れ続けている状態で大きく呼吸すると筋肉に酸素が多く取り込まれるため効果がより上がるんだそうなのだ!
②前田利家の能トレ「ハコビ」!
続いては能の基本動作「ハコビ」です。すり足のような独特な動きにはある秘密が!実は、能舞台の床の木目は、すべて同じ方向を向いているんです。すり足のような動きには自分が舞台のどこに向かっているかを足の裏で感知する役割があったんです。足の指で床を掴むように、力を込めて歩きます。この時、筋肉にどのような負荷がかっているのか?モモの筋肉を筋電計で計測、通常の歩行と比べてみると、ハコビの動きも下半身の筋力トレーニングになっていることがわかりました。須藤教授によると、普段の生活の中でも、すり足のように移動、指で地面をつかんで歩くことで下半身の強化が期待できるそうです。50を過ぎてもなお戦場で活躍した前田利家。その肉体は能を舞うことで自然と鍛えられていたようなんです!
「能トレ」のハコビのポイントをおさらい!
・すり足のように歩きく。
・足の指にしっかり力をいれて地面をつかむように歩く。
※フローリングや畳など、段差がないところでやってみてください。
これだけで足腰のトレーニングになるそうなのだ!
③日本一の出世男・豊臣秀吉のリラックス法!
農民の出身ながら天下統一を果たした豊臣秀吉。日本一の出世男ではありますが、その裏には苦労続きの人生が!魔王と呼ばれた戦国の革命児、織田信長に秀吉は18歳の頃から仕えていました。草履を懐で暖めたという伝説があるほど主君を気遣い、秀吉35歳の時、金ケ崎の戦いでは信長もろとも挟み撃ち状態に!すると信長は「ワシは逃げるから何とかせい!!」と秀吉にムチャぶり。秀吉は信長を逃がすため「しんがり」という撤退の最後尾で命を張るはめに…。
ストレスにまみれた人生なのに、平均寿命が30代といわれていた時代、秀吉は62歳まで生きました。小和田教授によると長生きの秘訣は「おそらく茶室でリフレッシュではないか」とのこと。秀吉は大の「お茶好き」。特に有名なのは黄金の茶室ですが、朝鮮出兵の際の拠点になった佐賀の名護屋城でも、城の中に茶室を作ったといわれています。秀吉は「茶の湯は慰みじゃ」と、自ら気晴らしにいいと語っているんです。
そこで、お茶の席でどの程度リラックスできるか検証です!今回の実験に協力してくれるお茶の文化や健康効果に詳しい神谷先生。先生の研究によると、現代人には敷居が高いイメージがある茶道ですが、もともとは「自分を見つめ直す時間」として日常的に行われていたんだそうです。秀吉が楽しんでいたお茶会も肩肘張らないものだったといわれているんです。
そこで、今回は、作法や道具にこだわらず手軽にできるお茶会。しっかりポイントをおさえれば、ストレスで疲労してしまった脳や鈍った五感を取り戻すことができるそうです。服装は着慣れた動きやすいものでOK。大切なのは携帯電話や時計アクセサリーを外すこと。現実からしっかり解き放たれることが大事なんです。部屋は、自然光と間接照明のみの空間。普段より暗いことで余計な情報が遮断され、自分自身に意識を集中しやすくなるそうです。さらにお香で嗅覚を刺激。これは、自律神経を安定させ、心身をリラックスさせる効果があることが、神谷先生の研究で明らかになっています。
今回は、心拍数の変動を測定。お茶会体験前と体験後を比べます。またお茶会中の心拍数もモニタリング。変動のポイントを人の行動と心理に詳しい一川先生に分析してもらいます。
それでは実験スタート!まずは姿勢を正して普段は意識することのない足先まで自分自身に集中します。すると早くも心拍数に変化が!開始1分30秒で通常時より12も下がりました。一川先生によると「まず暗い部屋に入り、外から隔離された環境にいるということで、急激にリラックスしていった」と考えられるそう。その後も、茶会はただただ無言の時間が続きます。実はこれも、リラックスポイント!心拍数がほとんど変動していません。一川先生によると、これは睡眠に入る前の変動に近いそうです。そしてお茶の前にお菓子を頂きます。これには、この後頂く抹茶の味を引きたたせる意味があるそうです。この時、お菓子の話をすることで自然と味覚に意識が集中します。いよいよ、お茶をたてて頂きますがこの抹茶もリラックスポイント。抹茶に最も多く含まれているうまみ成分「テアニン」。神谷先生によるとこのテアニンが脳内に入ると神経伝達物質の濃度に変化が起き、記憶力や集中力のアップに効果があるそうです。さらにカテキン類の抗酸化作用が活性酸素を消去。老化予防の効果もあるといいます。ちなみに抹茶がない場合はお手頃な粉末のお茶でも効果は期待出来るそうです。こうして約20分、自分の五感を意識しながらお茶会は終了。一川先生は「通常の脈拍、心拍数から10以上も下がっており、リラックス出来たと思われる。波形を見ても、変動が少なく落ち着いた心の状態で過ごした」と分析。今回、他の人でも実験しましたが、心拍数の減少が見られました。
激動の戦国時代、ありえないほどの出世を果たし、生き抜いた秀吉。それは茶の湯の効果をうまく利用しリフレッシュしていたおかげかもしれません。
お茶会のポイントをおさらい!
1.楽な格好をして携帯や時計アクセサリー類をはずす。
2.部屋を暗くしてお香をたき、何もせずその空間を10分ほどゆっくりと楽しむ。
3.相手と目の前のお菓子の話をして味わうことに意識を集中させる。
4.最後に入れてもらったお茶を手に持ち、その温かみを感じながら飲む。
これさえしっかりおさえればリラックス効果は十分得られるはずなのだ!
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