イカ
と
タコ
の科学
第1307回 2015年12月27日
今回はさかなクンの持ち込み企画!
さかなクンがお魚を大好きになったきっかけは小学2年生の時。友達が描いていたタコの絵を見て大感動。タコとの出会いがきっかけで今のお魚博士になったんです。そこで今回のテーマはイカとタコの驚きの能力を大解明します。
①タコとイカの捕食方法
同じように見えて、ものすごく違いがあるというイカとタコ。その違いを知るため、さかなクンがやってきたのは新江ノ島水族館。まずは、さかなクンの原点であるタコとふれあえる場所に。
タコは頭に見える部分が実は胴体。眼の辺りが頭なんです。そして、8本の足は生物学的には腕。その腕の付け根の真ん中に口があります。イカも体の構造はほぼ同じ。胴体があり、頭は目の辺り、腕があり、真ん中に口があります。
体の構造は同じですが、イカとタコの一番の違いは生活スタイル。
タコはどちらかというと省エネな暮らし。いざというときにだけ体力を使います。でも、普段はなるべく体力を使わずに周りの風景に溶け込んでいます。多くのタコが泳ぎは得意ではないため、海底であまり動かない生活をしています。
一方、イカはずっと泳ぎながら暮らしています。この違いが、タコとイカそれぞれのエサの取り方にあらわれています。
タコのエサの取り方は…エサの車エビに気づくと、ゆっくり動き出します。吸盤でエビをしっかり吸いつけ、抵抗されても逃がさず抱え込みます。あとは、口の中でエビの身だけゆっくり食べ殻は吐き出します。 続いてはイカ。エサの小エビを入れると、泳ぎながら狙いを定め、二本の腕を使いキャッチ!そして暴れるエビを他の腕を使い、抱え込んでいきます。
2本の長い腕の正体は「触腕」。イカは10本の腕があり、その内の2本が触腕。エサを捕まえる専門器官です。先端にだけ吸盤が付いていて、普段は体の中にしまっています。
タコは海底の生き物で、あまり泳げません。どちらかというと、エサを待って近くに来たら捕まえる待ちぶせ型。
イカは泳ぎが得意で長時間泳げるので積極的にエサを捕まえに行きます。生活スタイルが違うので、エサのとり方も違うというわけです。エサの取り方が違うので、吸盤の作りにも大きな違いがあります。イカの吸盤にはフチに沿って黄色い輪っかが付いています。その輪っかの内側には尖った歯のようなギザギザがあり、これでエサにしがみつくんです。タコの吸盤は柔らかい筋肉質。キッチンなどにある吸盤のようなもの。エサに吸盤をくっつけると、吸盤が動いて中を真空状態にします。
タコとイカの捕食方法の違いは暮らし方をよ〜く観察するとわかるのだ!
②イカとタコの擬態能力
イカもタコも体の色を見ていると、ころころ変わっているのがわかります。色んな理由がありますが、主な理由の一つはイカもタコも天敵である大きな魚などに食べられないように周りの風景に隠れるため。
その仕組は、イカとタコの体中にある、筋肉と皮膚の間に色の詰まった袋「色素胞」。筋肉を伸びたり縮めたりすることによって、袋を伸び縮めさせて色や模様を変えていくんです。さらにタコはもっとすごい能力があります。タコは色だけではなく形まで変えてしまうんです。
タコは早く泳げない分、天敵から逃れたりエサを捕るため、隠れる能力が優れているのだ!
③イカとタコ あまり知られていない面白い能力
イカとタコの面白い能力を調べるため向かったのは、沖縄・琉球大学。池田譲教授は日々、イカやタコを研究しているなかでイカのある驚くべき行動を発見したんです。鏡をイカに見せると非常に特徴的な行動が見られると言います。普段のイカ同士はお互いに距離を保って過ごしています。その水槽に鏡を入れると、イカは鏡へゆっくりと近づき鏡にさわったんです。しかし、鏡をさわることが、そんなに凄い行動なのでしょうか?池田先生によると、鏡に映っている自分を自分とわかる能力がイカに備わっていると考えられるそう。例えばエサを食べるとき、エサを捕獲するときにエサを触る。繁殖期にオスとメスが接触するということはあるが、腕を伸ばしてジーっと見て更に触るということはほとんどないそうです。
私たちは鏡を見たとき、当然のように、映った姿が自分自身だと認知できます。これを鏡像自己認知といいます自然界でこれができるのは、チンパンジーやオランウータン、ゾウやイルカなどのごく一部の動物だけ。なぜ、このような高度な能力がイカに備わったのか?池田先生によると、イカは群れを作りその群れが社会ではないかと考えられ、社会で生きていく時に、自分が一体どういうものか、他人がどういうものか、というのがわかったほうがいいということで備わった能力だと考えられるとのこと。ちなみにタコに鏡を見せても、反応しません。タコは単独で生活する生物なので、この能力が備わらなかったようです。
一方、タコが持っている凄い能力は、学習したり記憶したりという能力。例えば、特定の図形記号を覚えて見分けることができるとのこと。そこで、実際にタコを飼って記憶学習に挑戦!飼うのはこちらのマダコ。
名前をメダコちゃんと名づけました。実験に使うのはこちらの星マークが入った白い箱。目標は、この星マークを覚えてもらうことです。早速学習開始!箱にはエサをいれて、星マークとエサを結び付けて覚えさせます。するとメダコちゃんに酒井の想いが通じたのか、箱からエサをとりました!幸先のいいスタート!この学習を繰り返し行っていき…1週間後に検証実験!今回は、☆マーク以外に◯と+のマークを加えた3つの箱を一緒に見せても、ちゃんと☆マークを選んでくれるかで判定します。但し、どの箱にもエサは入っていません。学習が成功していれば、☆にエサが入っていると思い☆を選ぶはず。その結果は…タコは水槽に箱が入った瞬間、一瞬反応を示しましたが、その後は動かず…残念ながら3つのマークから☆を選ぶことはできませんでした。
さかなクンによると、タコには個体差があり、簡単にマークを覚えられるタコもいれば、何ヶ月特訓しても覚えられないタコもいます。今回の実験に使った「メダコちゃん」は、あまり好奇心が高いタコでは無かったのかもしれません…残念!
イカは鏡を見て自分を認識できて、タコは高度な学習能力があったのだ!
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