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クマムシ の科学
第1319回 2016年3月27日


 2016年、およそ30年前に、南極で採取され冷凍保存されていた、クマムシが30年ぶりに蘇り、さらに繁殖までしたという驚きのニュースがありました。
 そこで、科学大好き桝太一アナウンサーが謎の生物「クマムシ」に迫ります!

①クマムシを探してみよう

 見た目はとっても愛くるしいのに過酷な環境をものともしない、驚きの最強能力を持っているクマムシ。30年半前に南極で採取され、凍結したまま保管されていたコケの中から、クマムシを探し出して解凍。それが見事に蘇生したのです。その瞬間を目撃した国立極地研究所の特任研究員の辻本恵さんに話を伺うと「目があった!」「生きてるって訴えかけられた!」と大興奮。この発見は、それまで観測されていた、最長記録の9年を大幅に更新する、およそ30年の凍結からの蘇生。しかもその後、卵を産み、きちんと孵化。現在も子孫は増え続けています。クマムシは、大きさ1ミリ以下で、肉眼で見るとコショウの粒くらい。クマムシと呼ばれながら、正確には「虫」ではなく、緩歩動物という独特の生き物なんです。
 そこで、桝太一アナがクマムシ捕獲作戦開始!アドバイザーは、クマムシ博士ことクマムシ研究者の堀川先生。先生に連れてこられたのは、意外にも銀座。こんな都会の真中にクマムシがいるのか?先生が、クマムシがいそうだと言うのは、地下鉄の換気口の隙間に生えたコケ。ポイントは、コケの乾き具合、色、形、雰囲気なのだそう。コケを採取し、その後も先生の言うポイントをヒントに探していきます。銀座以外でも都内の小学校でコンクリートの隙間の砂埃を被ったコケ。地上150mのビルの屋上。住宅街で見つけたコケをくわえて、都内4箇所でコケを採取。これらを、先生の研究室に持ち帰り、クマムシが潜んでいるのか探し出します。それぞれのコケを水に浸して2時間ほど待つと…銀座のコケからクマムシ発見!白いのでシロクマムシと呼ばれている仲間でした。さらに、小学校、住宅街、高層ビルの屋上にもクマムシが生息していました。今回コケを採取した、全ての場所にクマムシたちが住んでいたんです!中でも、注目は、銀座の電話ボックスの下のコケ。体に触角のようなトゲが生えていて、釣り針のような4本の爪が特徴のトゲクマムシを発見。さらに、銀座の電話ボックスのそばからは、眼点と呼ばれる小さな「目」がかわいらしい「オニクマムシ」を発見。
 なぜクマムシが、乾燥したコケや埃っぽい所にあえて、住んでいるのかと言うと、ライバルを避けるため。水が豊富にあるところには、いろいろな生物が住み着くので、それだけ天敵が多くなってしまいます。そのためクマムシは他の生物が避けるところをあえて選んでいるというわけなんです。

所さんのポイント
ポイント1
私たちの身近な所にクマムシ王国が広がっていたのだ!


②クマムシ最強伝説を検証「乾燥地獄」

 「最強生物」と言われるクマムシは一体何が「最強」なのか?銀座で見つけたオニクマムシを「銀次郎」と命名し実験!今回は、4つの過酷な環境を用意して極限4番勝負スタート!

『ファーストラウンド・水なしカラカラの「乾燥地獄」』
 シャーレの中央に銀次郎と水滴を一緒に垂らし、スタンバイ完了。ココから自然乾燥する様子を観察します。徐々に水が蒸発し、なくなっていくと…銀次郎がなんだか丸く縮こまっていきます。そして、水がなくなると固まって動かなくなってしまいました。銀次郎、ここから12日間、水を一切与えない乾燥地獄に挑みます。そして12日後。飲まず食わずの銀次郎は無事なのか?ちなみに、普通、生物は、全く水分がないとどうなるのか、比較のため食用の乾燥エビにもなっている「川エビ」を同じく12日間、自然乾燥してみます。もちろん、カラカラに乾燥したエビに水をかけても復活することはありません。
 ならばクマムシの銀次郎は12日ぶりに水を投入!丸く固まったまま、動き出しません。ところが、水を含んだ銀次郎の体がその後、徐々に膨らんできました。そしておよそ14分後…歩きはじめました。復活です!  なぜ、乾燥から生き返ることが出来たのかと言うと、全く水がなくても乾燥した状態で仮死状態になるのを「乾眠」と言い、銀次郎は、その「乾眠」の状態になって12日間を生き延び、復活したんです。この復活する能力を「クリプトビオシス」といいます。クマムシには、このクリプトビオシスが備わっているんです。実はクマムシは、他の生物にはないある特殊なタンパク質を持っており、どうやらそのタンパク質が復活に関係しているようなんです。
 それでは、現時点での仮説は以下のとおり。
 普通の生物の生きている状態の細胞は…周りが水分で満たされています。その理由は細胞膜。周りを覆っているのは水の分子。実は、水の分子が細胞膜の形を繋ぎ止める役目を果たしているんです。しかし、もし水分が無くなると…細胞膜は形を保てなくなりバラバラに壊れてしまいます。壊れた細胞は水分に浸しても元に戻りません。
 一方、クマムシの細胞膜には、水の分子の他に、似たようなものが細胞膜を覆っています。これが、クマムシの特殊なタンパク質。このタンパク質は水の分子と同じ働きをするので、もし水が無くなっても細胞膜の形を保つことができ、バラバラにならないんです。なので、水を再び投入すれば、生命活動も復活するんです。

所さんのポイント
ポイント2
この乾眠状態こそがクマムシの最強形態だったのだ!


③クマムシ耐久実験 続き

 オニクマムシの銀次郎、再び「乾眠」に入り…トランスフォーム完了!

『セカンドラウンド・マイナス196℃液体窒素の「極寒地獄」』
 生のバラの花を入れてみるとわずか30秒で粉々に。では、銀次郎を容器にセット。液体窒素に1分間浸します。果たして、銀次郎は復活するのか!?水をかけてみると…固まったまま、ピクリとも動かない銀次郎。水を含んで膨らんでいきますが、動く気配がありません…しかし、およそ3分後、足をピクピクと動かしながら、徐々に動き出しました!銀次郎、極寒地獄から見事復活!喜びも束の間、再び「乾眠」へ…

『サードラウンド・空気ゼロの「真空地獄」』
 容器に銀次郎を入れて、生き物に必要不可欠の空気がない世界へ。3分間、真空地獄で過ごした後、水に浸すと…およそ6分後にまたもや復活!しかし、またずぐ「乾眠」に入ってもらいます。

『ファイナルラウンド・「レンジでチン地獄」』
 1分半、レンジで加熱したあと水で浸します。小さく丸まってしまった銀次郎に水を浸しても全く動きません。「さすがに厳しいか…」と心配しながら待つこと8分。レンジでチン地獄から見事復活しました!
 このクマムシの能力「クリプトビオシス」の謎が全て解明されると、人間にとって役に立つ、様々な分野への応用が期待されています。例えば、医療の分野では、輸血のための血液や赤血球などを乾燥保存させることで長期保存できる可能性があります。

所さんのポイント
ポイント3
4つの過酷な耐久実験から無事生還!ここに「最強生物」を証明したのだ!




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