健康寿命全国1位「山梨県」
の科学
第1326回 2016年5月15日
大人気「長寿シリーズ」第三弾は山梨県!実は山梨県は、最新の全国健康寿命ランキングで男女とも1位。健康寿命とは介護を必要とせず自立した生活ができる期間のこと。つまり、この寿命が長ければ健康で元気な生活が長く送れるのです。そこで、山梨の健康なご長寿さんを徹底調査!
すると、ご長寿と家族の意外な関係が明らかになりました!
今回は、健康寿命全国1位、山梨で長生きの秘訣を発見します!
①90歳と87歳のご長寿夫婦に1日密着!
一緒に健康長寿の秘訣を探してくれるのは、このシリーズでおなじみ、名古屋学芸大学大学院・栄養科学研究科下方浩史先生。早速、山梨県の中央に位置する甲府市へ。県庁所在地でもあるこの都市は、戦国時代、武田信玄の領地として発達しました。まずは、健康長寿の秘訣を探るため、町でも指折りのご長寿さんの元へ。伺ったのは、宮澤勝造さん、仁ノ恵さんご夫妻。普段は娘さん夫妻と4人で暮らしています。娘さんのご主人は会社勤め。ご長寿夫妻と娘さんは釣り具店とプロパンガスを扱う自営業です。その1日に密着します。
朝6時に起床。最初に起きてきたのは、勝造さん。まずは、日課のジョギングで1日がスタート!90歳とは思えない軽快な足取り。さらに驚いたのが、後ろ向きでのジョギング!その頃、仁ノ恵さんたちがお店をオープン。それを終えると朝食の準備に取り掛かります。本日の朝食は、アジの干物にアサリのみそ汁、サツマイモなど。一見すると、普通の朝食に見えますが…実はここに健康長寿の秘訣が!中でも、下方先生が注目したのが、アジの干物。下方先生によると、「アジのような青魚を食べるのはスゴく良い。DHAとかEPAという動脈硬化を防いだり認知症を防いだりするような働きがある脂肪酸をたくさん含んでいる」と解説。さらに、アサリのみそ汁にも秘訣が!下方先生は、「アサリにはビタミンB12という成分がスゴくたくさん入っている。これは赤血球を作るのに非常に重要な役割をしていて、貧血の予防などに非常に役立つ」と言います。
甲府市は、干しアジに払う年間金額が静岡に次いで全国2位。さらに、アサリの支出金額は全国1位。他にもマグロの消費量は全国2位と、海がない県ですが、なぜか山梨県民は魚が大好き!その証拠に山梨県は人口10万人あたりの寿司店の店舗数が全国1位。最下位の高知県に比べ3倍以上もあったんです。どうやら魚好きが健康長寿に繋がっているようです。そして朝食を終え、向かったのは…小学生の時から続けている大好きな釣りです。実は釣りも健康長寿の秘訣だったんです。「釣りは体を動かしたり、いろんな所に出かけたりして、スゴく良いことだが、何よりいいのが、お日様に当たること。日光を浴びることで体の中でビタミンDが合成され、骨を作ったり筋肉を作ったりする」と下方先生は解説。しかも山梨県は過去40年の平均日照時間が全国1位。つまり、好きな時間に日光に当たることができる場所なんです。毎日しっかり太陽に当たっているからか、勝造さんは元気いっぱい!軽トラの荷台にも軽々と上ります。
12時、昼食です。メニューは焼き鮭にロールキャベツ、煮物など。この中で下方先生が注目したのが…イチゴ。先生によると「イチゴはビタミンCをたくさん含んでいるのが良いとのこと。ビタミンCは免疫を活性化させたり、体の中の余分な活性酸素を抑えたり重要な働きを担う」と解説。日照時間の長い山梨県は、様々な果物が生産されるフルーツ王国。収穫量が日本一の桃やスモモをはじめ、ブドウは収穫量も消費量も日本一。
午後3時、お茶の時間です。お二人が食べるのは干し柿。魚だけでなく果物をたくさん食べるのも健康長寿の秘訣!
そして日も暮れ…午後6時。家族全員揃っての夕食です。本日のメニューはビタミンB1が豊富な豚肉にご飯や野菜など。食卓の話題はひ孫。
実は、家族での食事時間に、重要な健康長寿の秘訣が!下方先生によると、「話ながら笑いながら、みんなで食べるとゆっくり自然に食べますよね。時間をかけて食べることによって、よく噛むとそれが口の周りの血流を増やして脳の血流を増やして、最終的には認知症を予防することにも繋がります。しかも、ゆっくり食べると血糖値の上がりを抑えることができる」と解説。実は山梨県は1日の平均食事時間が1時間46分と、これまた日本一。
そして…9時、就寝。暮らしの中に、長寿の秘訣がたくさん詰まっていたんです。
『太陽の恵み』や『家庭の食事時間が長いの』ことが健康長寿の秘訣なのだ!
②山梨県に伝わる謎の会合「無尽」とは?
健康長寿に関わる謎の会合があると聞き、その会場へ。謎の会合のまとめ役、浅利さんに話を聞いてみると…会合は「無尽」と呼ばれるもの。無尽とは月一回、それぞれ参加者がお金を出し合って積み立て、順番に使えるシステム。そもそもは、鎌倉時代に始まった庶民同士の融資制度が元になったと言われています。取材の際に伺ったのは、高校の同級生による無尽。なんと50年間、毎月欠かしたことがないそうです。しかも…複数の無尽に入るのが一般的なんだそうです!一体、無尽の何が健康長寿に良いのか?下方先生の分析によると、「笑うこと」がポイントだと言います。この笑うことにより、免疫力を高め、血流を良くして老化を防ぐことができるそう。さらに下方先生によると、昔の旅行を思い出したり、趣味の話でコミュニケーションをとることが脳を刺激するそうです。そしてもう一つ、健康長寿には欠かせないポイントがあるといいます。「普段会わない人と会って話をするのはスゴく頭を使って会話しなきゃいけないので脳の老化を防ぐのに役立つ」と下方先生は解説。
そこで、本当に無尽は脳の老化を防いでいるのか検証です。用意したのは脳年齢計。2回のテストで脳年齢がわかるものです。1回目は、画面の1から25までの数字をなるべく速く押していくテスト。2回目は、押すたびに数字の場所がランダムに変わり、より難しくなります。この2つの反応速度を実年齢の平均と比べ、脳年齢を割り出すのです。
試しに、実年齢27歳の渡辺裕太さんがやってみると…実年齢より1歳上の28歳になってしまいました。では、無尽に参加するご長寿さんたちはいかがでしょう?まずは、80歳の齋藤さんが挑戦です!結果は…実年齢よりも4歳若い76歳。続いては、浅利さん80歳が挑戦!結果は…なんと!実年齢より脳年齢が10歳も若かったんです。無尽をやっているご長寿8人の脳年齢を調べたところ、7人が実年齢より若かったのです。どうやら、山梨に今も根付いている助け合い文化、無尽が、健康長寿につながっているようです。
無尽に参加することが脳の老化を防いでいるのだ!
③謎の伝統食「煮貝」とは?
長寿の秘訣を見せてもらえると聞き、向かったのは、81歳のご長寿さんのお宅。その秘密は…山梨の名物、アワビの煮貝。伝統的によく食べられているそうです。でも、海のない山梨でなぜアワビがよく食べられているのか?山に囲まれた山梨の人は、古くから海の幸に憧れがあったといいます。江戸時代、駿河湾でとれたアワビを腐らないよう醤油漬けにして甲府まで運んでいました。その道のりで、味が染み込み、美味しい煮貝になったといいます。
煮貝の会社に伺い、今の作り方を見せてもらいました。まずは新鮮なアワビをじっくりボイルします。後は手作業で砂などを丁寧に取り除き…特製の醤油ダレに漬けて完成。でも、この煮貝と健康長寿にどんな関係があるんでしょうか?下方先生によると「アワビにはアルギニンというアミノ酸の成分がたくさん入っているんです。
筋肉を作ったり老化を予防するんではないか言われています。このアルギニンっていうのは大人になってしまうと体の中で作れない」と解説。しかもアワビを煮貝にすることがさらに健康長寿に繋がるといいます。「アワビを煮貝のような形で加工することによってタンパク質がある程度分解をしてアルギニンの濃度が高くなり、より効率良くとることができるようになる」と先生は言うんです。つまり、海産物が手に入りにくい環境が独特の伝統食を生み出し、健康長寿に一役買っていたのです。
伝統食、アワビの煮貝が健康長寿に一役買っていたのだ!
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