かがくの里・田舎暮らし
の科学
第1331回 2016年6月26日
自然をテーマに研究してきた科学者たちが集結し、誰もがやってみたくなる田舎暮らしを実践する長期実験企画…それが目がテンかがくの里!
①あの厄介者がかがくの里に侵入…
5月。かがくの里は農繁期。秋の収穫祭に向け、畑では種まきなど様々な作業が。今年から、かがくの里専任プレゼンターになった慶応大学理工学部出身の高学歴芸人、阿部さんも今では農作業にかかせない立派な戦力です。
5月半ば。阿部さんが大事そうに持ってきたのは里芋の苗。実はこれ…去年かがくの里で収穫したサトイモを種イモに4月から温室で大切に育ててきた苗。開拓1年目だった去年は、松村先生が大学から苗を持ち込みましたが、2年目の今年は、苗から、純粋にかがくの里育ちの サトイモになるのです!大きく元気に育つように願い、ひとつひとつ丁寧に植えました。
ところが、その2日後、かがくの里に大事件が…。植え付けたばかりのサトイモが 無残にも掘り返されていたのです。一体何が起きたのか、他の作物も…。順調に育っていたジャガイモも掘り返され、まもなく収穫できるはずだった小麦まで。考えられるのはイノシシ。しかしイノシシ対策として、畑と田んぼは、電気柵で囲ってあります。
はたして本当にイノシシが入ったのか?真実を確認するため、農園の全貌が見渡せる位置に取り付けた監視カメラを見てみることに。里芋の苗を植えた日の夜22時45分。そこには…やはり犯人はイノシシ!田んぼの横を悠然と歩いていました。さらに翌日正午。イノシシが真っ昼間から堂々と侵入していました。よく見ると、ジャガイモを植えた畑を掘り返す様子も。
電気柵で守っている畑の中に、なぜイノシシが?そもそも電気柵の電流は電線に触れたイノシシが地面と 接触していることで体に流れます。しかし周囲の雑草が伸びてきてこれが電線に触れてしまうと漏電し、電流の威力が弱まってしまい侵入されてしまうケースも。ホームセンターなどでは雑草を防ぐ防草シートが売られていますが、これは、絶縁体のため地面に敷いてしまうとイノシシは感電しなくなる難点がありました。この問題を解決したのが野生動物の専門家、山本先生。太陽光を遮断する生地に銅線が編みこまれ、電気が流れる防草シート。これが功を奏し、去年は1度も草刈をする手間もいらず、イノシシの侵入を許すことはなかったのですが…。
そこで現在の電気柵の電圧を調べてみると、チェッカーが示したのは「中」。漏電し、電圧が下がっている証拠です。防草シートも2年目。雨や風で土がかぶり、そこに生えた雑草が電気柵にかかっていたのです。想像を超える雑草の生命力が漏電の原因だったのです。電気柵の周り全ての雑草を刈り取り、もう一度、電圧をチェックしてみると、イノシシが入らないレベルの強い電圧に回復しました。これでしばらくは安心のようです。
今年も収穫祭を楽しむために、夏場の草刈はきっちりやる必要があることを痛感したのだ!
②池の大調査!おもしろ生物が続々!
去年11月。所さんの手によって放流された1000匹のどじょう。冬の間は泥の中で冬眠していました。5月中旬。魚の養殖の専門家、千葉先生は気温が上がってきて、冬眠から目覚めているはずのどじょうを 確認するため、学生と共に池でどじょうすくいを始めました。すると、ギンヤンマのヤゴを発見。さらに、ヘイケボタルの幼虫が餌にするサカマキガイ。これが生息しているということは今年の夏の夜には、ホタルが見られるかも。
そして千葉先生が最も興奮したのが、メスがオスの背中に卵を産みオスが世話をするコオイムシ。昔は水田などで、いたるところに見られた虫ですが、水辺の環境の変化によって現在は準絶滅危惧種に指定されています。しかし元々、この池は、ただ穴を掘り湧水を入れてあるだけの人工的なため池。まさか、1年でこれほど多様な水生昆虫が生息する環境になっているとはびっくり!かがくの里では農薬を使っていないため今ではあまり見られなくなった生き物たちが住み着いたようです。この後、田んぼに豊作をもたらす小さな生き物出現!?
去年11月に放流したどじょう今どうなっているか調べるため、池を掘り返してみると…。冬眠から目醒め、元気に動くどじょうを確認!そもそも、ここでどじょうを飼いはじめたワケはどじょうの習性が農業に役立つというメリットがあるため。そのメリットとは、普段は池に住むどじょうは産卵期、より豊かな餌を求めて田んぼに移動して産卵するという習性があります。そして稲刈りのために水が抜かれる秋口まで田んぼで暮らすのですが、雑食性のどじょうは、田んぼの泥の中の小動物やプランクトンを食べるとき、泥ごと吸い取ります。すると、泥が水に巻き上がり、下まで光が届かなくなることで田んぼに雑草が生えにくくなるのです。雑草が生えにくくなれば、余計な手間が省けイネの収穫量も上がるのです。
5月下旬。6月半ばに予定している田植えに向け山の湧水を田んぼへ入れ始めました。かがくの里では、湧水を冬の間は池に直接入れていますが、田んぼへ水を張るこの時期、一旦田んぼへ入れ、余った水が地中に埋めたパイプを伝い池へ流れ込む仕組みになっています。想定では、餌が豊富な田んぼの水が池へ入ることでどじょうたちは、それに誘われ、パイプをさかのぼるというのですが、本当にそんなことが起こるのでしょうか?
実は千葉先生は冬の間、池と田んぼの土を調査しました。その結果、どじょうが田んぼに行く確信を得たそうです。先生が取りだしたのは、池と田んぼ、それぞれの土に水を入れた、二つの簡易水槽。両方とも水温が上がってきた3月頃から、ミジンコが発生。そして今、田んぼの土を入れた水槽の方だけにこんな生物が現れたと言います。これは豊年エビという甲殻類。別名シーモンキーとも呼ばれる生き物。土の状態が良いと現れるという豊年エビ。田んぼの方が餌が豊富なので、どじょうが田んぼに行く可能性が高いのです!
どじょうは田んぼに行くのか?今後の動きに注目なのだ!
③1kg約3000円高級魚の養殖始めます!
養殖の専門家・千葉先生が「ホンモロコ」という新しい魚の養殖を検討していました。これは琵琶湖の固有種だったコイ科の淡水魚。外来魚の格好のエサとなり、天然は数が激減、絶滅危惧種に指定されています。養殖もそれほど行われていないため1kg3000円程度で取引される高級魚。京都の料亭などで塩焼きや甘露煮にして提供されています。そんな高級魚がかがくの里でも養殖できるというのです。さらに、高級魚だけあって味も絶品だとか。どじょうが大嫌いな松村先生も、ホンモロコなら満足して 頂けるはず!そんなホンモロコの養殖に成功している地域があると聞き、千葉先生と阿部さんは視察へ!
たどり着いたのは島根県益田市。ホンモロコの養殖をしている山根さん。養殖場は、50平米の生け簀に全部でおよそ1万匹のホンモロコを養殖しています。山根さんは、6年前、元々100匹のホンモロコから養殖を始め、あっという間に100倍に!実はモロコという名は、子だくさんと言う意味。1回の出産でおよそ200個卵を産みます。5月は産卵して孵化させる時期ということで卵と稚魚を見せて頂きました。自然の中では水草などに産み付ける直径1mm程度の卵。5,6日で孵化します。小さいうちのエサはプランクトン。鶏糞などを入れ、微生物の多い生け簀で、大きくするんだそう。かがくの里の池にホンモロコを放流すればどじょうと同じく、田んぼに水をはった頃にパイプを伝い田んぼへ移動。
そこで、産卵を行い、水が抜かれる秋口に池に帰るというサイクルで養殖が可能だと言うのです。しかもホンモロコは、1年で成熟するため今から養殖すれば、秋には食べられるようになるのです。今は産卵シーズンで、旬ではないのですが、去年、十分成長せずに出荷できなかったホンモロコを食べさせてくれることになりました。調理スタート!まず山根さんは生きたまま、お酒の中へホンモロコを投入!酒を使っての活け締め。臭みを取る効果があるそうです。締めたホンモロコに、しおコショウ・ごま油で下味を付けます。卵と片栗粉をといたツナギに浸し高温でサッと上げるのがポイント。わずか2分程度で完成!丸ごと食べられるホンモロコの天ぷらをみんなでおいしく頂きました。 ホンモロコその味は間違いないようです!
秋の収穫祭に向け、ホンモロコの養殖、始めるのだ!
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