知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


かがくの里・田舎暮らし の科学
第1332回 2016年7月3日


 自然をテーマに研究してきた科学者たちが集結し、誰もがやってみたくなる、田舎暮らしを実践する長期実験企画。それが!目がテンかがくの里!
 今年から、かがくの里での暮らしをさらに豊かにするため取り組んできたのが…パンやピザが焼けるカマ作り!去年11月に撒いた、パンやピザの原料となる小麦はまもなく収穫の時!これに間に合わせるため、急ピッチで取り組んできたカマがついに完成!果たして上手く焼けるのか?さらに、かがくの里に、新たな科学者が登場します!

①イノシシが出没したかがくの里。裏山で衝撃の事実発覚

 5月中旬。電気柵で守られていたはずのかがくの里の畑にイノシシが侵入。植えたばかりのサトイモの苗や、まもなく収穫間近だったジャガイモや小麦が荒らされました。その原因は雑草による電気柵の漏電。伸びた草が電線にかかり、電気が漏れて、電気柵の威力が落ちていたのです。
 電気柵の周りの草取りをすることで処置は完了。しかし、これは根本的な解決にはなっていません。以前、野生動物の専門家、長岡技術科学大学・山本麻希先生は、「昔から山の中にはイノシシがいたんですけど、昔は山奥に動物がいて、私たちが暮らす里との間には"里山"と呼ばれる、焚き木とか炭焼き用の山があった。そうすると、山の手入れがされていますから動物は降りてくると、人の匂いがして、見通しも良い刈払われた山なのでイノシシは出てきたくないんです」と話していました。しかし、薪も炭も必要なくなった現在は山が荒れ、イノシシたちは平然と里の近くまで下りてきています。
 そこで今年から、かがくの里では専門家の奥田裕規先生と共に、里山再生プロジェクトに取り組むことになったのです。5月下旬。イノシシ出没の事実を受け、奥田先生は急ピッチで里山の整備に取り組むため、地元の森林組合の方を呼びました。森林組合は、山々の保全、管理作業に従事しているスペシャリスト。さっそく、現在の裏山を見てもらうと…全く手入れのされていない裏山。光が届かないせいで、ヒョロヒョロの細い木ばかり。これではイノシシも来放題。森林組合の方から見てもホントにひどい状況のようです。これを整備するとなると…。全部切る!?少ないながら、太く成長している木々は残しますが…裏山を整備するには、ほとんどの木を切る必要があるという衝撃の事実がわかったのです。木を切った後、どうするのでしょうか?奥田先生にはこんな夢がありました。すでに成長が期待できない木を切って、整備したあと新たな苗を植えて山を若返らせるという。山を若返らせて"勇気が出る山"に!ついに本格的な整備が始まります。


②科学者が考案"エコな構造のカマ"が完成

 里山の整備が進み、木を切れば、たくさん出ることになる薪。その薪を利用しようと、足利工業大学の根本泰行先生が取り組んできたカマ作り。ロケットストーブとドッキングした、かがくの里仕様のカマの試作機がこちら。市販のピザで試し焼きをしてみると…見事大成功!これを大型化し、本格的なカマの制作に取り掛かろうとした矢先…なんと、根本先生が4月からアフリカへ赴任することに。そこでカマ作りを引き継いだのが、今年からかがくの里専任プレゼンターに就任した、慶応大学理工学部出身の高学歴芸人阿部健一さん!4月中旬。阿部さんは根本先生の試作機を大型化するための設計図を書いてきました。土台はコンクリートブロックで固め、上にはレンガを。ロケットストーブは下からもぐりこんでいて、上に熱を伝える仕組みを考えました。さっそく、近所のホームセンターへ買い出しに。設計図を頼りに、コンクリートブロックや耐火煉瓦を計算しながら購入。しかし…構造を理解し設計図を書けても、実地作業はずぶの素人。
 そこで助っ人をお呼びしました。かがくの里で何度もお世話になっている地元の工務店「根本工務所」の船橋修治さんです。さっそくカマの基礎部分。ロケットストーブを入れる土台を作ります。ここは阿部さんの計算上、コンクリートブロックが4段必要。一つ置いたら、水平になるように叩いて調整。置いてはたたいて調整の、地道な作業。1段8個のコンクリートブロックを4段全て積み終わったのは…日も暮れかけた5時間後でした。
 続いて、耐火煉瓦を使いカマ部分を作ります。1段目はロケットストーブの設置面。レンガとレンガをセメントでくっつけながら1面を埋めるのですが…ロケットストーブの熱が出るように、真ん中だけにはレンガを入れないことがポイント。翌日。雨が降ってしまいましたが、作業は継続。
 取り掛かっているのは2段目、3段目。2段目は熱の通り道になり、3段目がピザなどの食品を置く場所になります。そのため、2段目は周りにだけレンガを配置。その上に鉄柵を乗せ、一段目と同じように一面にレンガを置いていきます。ただし、後ろ側の一列だけレンガがありません。
 これが、このカマ最大のポイント!阿部さんによると、「下からロケットストーブの熱が出てるんですけど、それがこっちをまわってきてここを抜けてこっちに抜ける。その熱気でピザの上の面も熱せられる仕組み」だと言います。これは、根本先生の試作機と全く同じ構造。
 ロケットストーブから出る熱の通り道を作ることで、上下両面からピザが焼けるという仕組みです。さぁ、残すは、天井を作るのみ!阿部さんの手つきも、慣れてきました。そして…ついにカマが完成!見た目では、驚くほど立派に見えますが…。果たしてこのカマでピザはうまく焼けるのでしょうか!?


③科学者が考案"エコな構造のカマ"で試し焼き

 根本先生が構造を考え、かがくの里専任プレゼンター・阿部さんの手によって完成したカマ。セメントが固まったところで、いよいよ本当にピザが焼けるか試します!まずは、ロケットストーブの高さを微調整しながら熱が漏れないようにカマに差し込み、さっそく火をつけてみます。うまく熱は回ってくれるのでしょうか?煙が、カマの入り口から出てきました!これはロケットストーブから出た熱がカマをまわっている証拠!これで、およそ1時間カマを熱したところで…カマの大きさに合わせ特注サイズで作ってもらったピザを投入!通常であれば15分も掛からず焼き上がるそうですが…5分経ち、10分経ち、そして15分が経過しても、チーズがブツブツ言いだす気配がありません。これは失敗か?阿部さんの表情が曇ってきました。20分経ったところで、一度ピザを出してみますが…チーズはまだ溶けていませんでした。苦労して作り上げたカマ。阿部さんはもちろん、松村先生も、そしてスタッフもちゃんと焼けてほしいと、神に祈る気持ちで見守ります。しかし時間は無情に過ぎていき、1時間が経過…。一向に焼ける気配のないピザ…残念ながら、これは明らかな失敗…。
 そこで後日。根本先生がいない今、松村先生が改良に乗りだしました。改良を加えるのは、カマではなくロケットストーブ!どうやら薪を入れる場所を2口にし、パワーアップを図る計画!完成した新たなロケットストーブ!その名も…"ダブルパワーロケットストーブ"!さっそくカマに差し込んで試してみます。実は松村先生、他にも「扉」をマイナーチェンジしていました。これで中の熱が逃げにくくなるはず!目標タイムは15分!果たしてうまくいくのでしょうか!?その結果は!?ダブルパワーロケットストーブでも15分をクリアできず…。結局、一応食べられるまでに焼けたのは30分後。ピザを焼くのに30分もかかるようでは、まだ問題がありそうです。と、そこへ…新たな人物が登場!一体この人は誰!?


④新科学者によるカマ改良

 「カマの性能を上げて、短時間でピザを焼きたい!」とその時…やってきたのは、東京理科大学の川村康文教授!水力・風力・太陽光など自然エネルギーの研究を行っている川村先生。アフリカへ旅立った根本先生の後任としてお呼びしました。さっそく、松村先生から相談。松村先生の課題は、15分でピザを焼くこと!この後、自然エネルギー分野新科学者による、驚きのカマ改良!
 ピザを焼くのに30分かかってしまったカマ。松村先生は短時間でピザを焼きたいと自然エネルギーの新専門家川村先生にカマの改良を依頼しました。後日。川村先生は2つの改良案を携えて、やってきました。まず一つ目が、こちらのアルミ板。先生はこれを折り畳み、カマの中へ入れました。川村先生は、「ちょうどここでピザを囲むようにこの中にピザが入る。熱を、これで反射させながらピザに当ててやろうと」と考えていました。レンガより熱伝導率が高く、熱が反射するアルミでピザを包むことで、より多くの熱がピザに伝わるのです。そしてもう一つが「ロケットストーブ」。ロケットストーブは、一斗缶の中に煙突が入っていてそれを断熱材で囲ってあります。薪を燃やすと、この煙突内部が高温となり上昇気流が発生する為、煙突入り口では周りの空気の吸い込みが起きます。
 これによって、ものが燃えるために必要な酸素が、常に送り込まれている状態が生まれています。川村先生は、さらに入り口から強制的に酸素を送り込むことで、より燃焼を強めようとしているのです。今回は、試しに、最も簡単に空気を送り込む道具として自転車の空気入れを使います。さっそく、川村先生が考えた2点の改良ポイントで、ピザが早く焼けるか試してみます!空気入れで酸素を送り込むのは阿部さんの仕事。今回は実験的に空気入れを使っていますが、これがうまくいけば、今後は自動で風を送るシステムを川村先生が考えるそうです。
 すると、かつてない手ごたえが…酸素の供給で燃焼がかなりうまくいっているようです!15分後。いよいよピザを取りだします!果たして焼けているのか?ピザがこんがりと焼けました!生地にもしっかり熱が通っています。さっそく試食。15分でとってもおいしそうにピザが焼けました!紆余曲折を経ましたが、ようやくカマが完成!小麦の収穫も間近!もうすぐ、かがくの里オリジナルのピザやパンを所さんにお届けできる予定です!




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