香港
の科学[前編]
第1355回 2016年12月18日
今回の目がテンは、大人気「長寿シリーズ」特別編。
これまで長寿大国日本で、その秘訣を調査してきた目がテン。しかし、その日本を上回る長寿都市があったんです。それが…人口およそ730万人、アジア有数の国際都市、香港。
香港は、最新の平均寿命データで日本を上回り、男女とも世界一位!
では、香港にはどんな健康に良いことがあるのか?長寿世界一の町を徹底調査!今回の目がテンは、長寿スペシャル!長寿世界一の香港で長生きの秘訣を探します!
①町を散策し長生きの秘訣を徹底調査!
朝7時、町の中にある静かな公園をぶら〜り。すると…、香港ではお馴染みの太極拳をしている人が!元々は中国武術の一つです。
このゆっくりとした動きが特徴ですが、実はそこに長寿の秘訣が!
名古屋学芸大学大学院の下方浩史教授によると、「ゆっくりとした呼吸をしながら運動を続けるので無理もないし、心臓や肺に対する負担も少なくて体の能力を鍛えることができる。また、ゆっくりした運動なので腰や膝に対する負担が少ない。そういった意味で高齢者に非常に向いた良い運動」だと言います。他にも公園では、多くのお年寄りが健康器具で運動する姿が!香港は行政も健康に力を入れており、公園には誰でも自由に使える健康器具が多く設置されているんです。
さらに、太極拳を終えたお年寄りについていくと、さらなる長寿の秘訣が!やって来たのはレストラン。そこには、たくさんのお年寄りが朝食を楽しむ姿が。香港では、朝食と言えば外食が一般的なんです。本日のメニューは、豚肉のシューマイに…、青唐辛子の魚肉詰め。こういった食事は「点心」と呼ばれます。香港では、この点心を食べながらお茶を飲む、「飲茶」という習慣が朝の基本スタイル。実は、この習慣にも長寿の秘訣があるようです。下方先生が注目したのが、朝から肉を使った料理を食べること。下方先生によると、「運動した後、お肉を食べるのはすごく良いこと。運動をすると筋肉がある程度壊れてしまう。そのままタンパク質をとらないと、壊れたままでせっかく運動をしても筋肉ができない。だから運動した後にたっぷりタンパク質をとる。筋肉を作るためには筋肉の材料が全て含まれている肉が良い」と解説。
しかも、点心は海鮮や野菜が入った物など種類が豊富!毎朝バランスよく栄養をとることができるんです。さらに、朝食で飲むお茶にも健康長寿の秘訣が!下方先生によると、「お茶はビタミンCやカテキンといった抗酸化物質がいっぱい含まれているので、動脈硬化の予防や老化の防止にすごく良い。また、テアニンという体をリラックスさせる成分が入っているのでストレスを防いだりする作用もある」と解説。
さらに、「麻雀」も健康長寿の効果があるようです。ちょっと大きめの牌が特徴の香港式麻雀ですが、これがどう健康長寿に良いのでしょうか?
下方先生によると、「頭を使って指先も使う、これが認知症の予防になると言われている。ストレスの解消にもなるので、これもまた良い」と解説。
さらに、町中で注目したのが漢方薬局の多さ。普段から漢方薬を使い、健康意識の高さが伺い知れます。中でも、昔から長寿の食材として食べられているのが「キレイコウ」。通称、亀ゼリーです。主な材料は、スッポンの仲間。そのお腹側の部分を使います。これに数種類の漢方を混ぜ…成分を抽出した液体を作ります。あとは蒸して固めると、黒いゼリーの完成。
でも、これがどう健康長寿に良いんでしょうか?
下方先生は「非常にコラーゲンがいっぱい含まれている。コラーゲンというのは肌をきれいにする作用もあるが、それ以外に軟骨の成分だったり、関節の中の重要な成分。膝や腰が痛むような人は、その予防にも非常に役立つ」と解説。しかも、地元のスーパーでは、デザート売り場などにも置いており、非常に身近な存在なんです。
朝から運動をして飲茶をすることが健康長寿に一役買っていたのだ!
②ご長寿夫婦の意外な食事とは?
やって来たのは、町の市場。先生が注目したのが、ズラリと並ぶ新鮮な魚介類。その種類も豊富です。実はここに長寿の秘訣があったのです。
下方先生によると、「日本人は魚たくさん食べると言われているが、香港の人は日本の人よりも、もっと魚を食べる。だいたい1.3倍ぐらい。
1.3倍っていうとかなりの量だが、魚にはEPAだとかDHAなどの多価不飽和脂肪酸が多く含まれている。これは、動脈硬化の予防になったりあるいは認知症の予防につながったりする」と解説。そして、この魚の調理法にも長寿の秘訣が!そこで、今晩、魚料理を作るお宅に伺い見せてもらうことに。一体どんな調理法なんでしょう?鍋から現れたのは…「蒸し魚」。そう、魚を蒸すことが大事だといいます。
下方先生は「余分な油を使わずに柔らかく料理ができるのでお年寄り非常に向いている」と言います。この蒸し魚に炒めたショウガとネギをのせ、最後に魚の周りに減塩醤油をたらせば、あっという間に完成です。他にはトマトと豚肉、卵が具材のスープに茹でた菜の花が今晩のメニュー。ご飯はありません。と、ここで先生がスープに注目!
下方先生は「温かいスープが体の中に入ると体をすごく温める。それで血管が開いて血圧が下がり、動脈硬化の予防にもつながる。しかも、副交感神経を刺激して体がリラックスする効果もあり、良い睡眠につながる」と解説。そもそも、香港は広東料理がメイン。これは素材のうま味を生かす料理で、薄味なのが特徴なんです。試しに、スープを頂いてみると…確かにほとんど塩気がありません。さらに、蒸し魚も薄味。そこで、スープを塩分濃度計で計測してみると、濃度0.4%から0.7%の薄味で塩分控えめでした。
薄味な料理を長年食べ続けるのが長寿の秘訣だったのだ!
③長寿の秘訣は◯◯で足が鍛えられる?
専門家と香港の町をぶら〜り!すると、新たな長寿の秘訣、「長い坂」を発見!香港には、町の多くの場所に急な坂があり、皆さん平然と上り下りしています。下方先生によると、「普通に歩くのと違って、かなり負荷がかかるので筋肉も丈夫になり、骨も丈夫になる。そういうことが香港の人たちの健康長寿に繋がっている」と解説。でも、一体何で坂が多いんでしょう?その秘密は、町の形にありました。香港は海のすぐそばから山裾が広がるため、狭い場所を利用しようと山の斜面に多くの建物があります。
そのため、外に出る時は、この急な坂を上り下りする必要があり、自然と足腰が鍛えられるんです。さらに、町を散策します。やって来たのは、人混みで溢れる市場。新鮮な野菜やお肉が揃うこの場所は、地元の人にとって欠かせない生活の一部。人で溢れかえる環境。実はここにも長寿の秘訣が!下方先生は「こういう人がゴミゴミしているところで、人を避けながら歩くということは、すごく瞬間的な判断力がないとできない。また足腰がしっかりしていて、筋力がないと歩けない」と解説。どうやら香港には、自然に足腰が鍛えられるのと同時に、瞬時の判断力も鍛えられる環境が多いようです。
そこで、本当にご長寿さんの足腰の反射能力は優れているのか?警察が高齢者の運転教室で使う計測機械で検証。計測法は4色のランプが点滅しながら流れた後に1つのランプが点灯。その瞬間、足元にある同じ色のマットを素早く踏みます。ランプの点灯からマットを踏むまでの時間を計測し、実年齢の平均と比べた反射年齢が算出されます。つまり、反応が速ければ足もしっかりしているというわけ。早速、香港のお年寄りで計測してみます!
まずは、85歳の黄妙徳(こうみょうとく)さん。しっかりと判別し、的確に踏んでいきます。結果は…なんと76歳!実年齢よりも9歳若い結果に!続いては、趣味が麻雀に競馬、そして…歌うことが大好きな89歳の張贊娟(ちょうさんえん)さんが挑戦!その結果は、なんと74歳!15歳も実年齢よりも若い結果になりました!合計10人のご長寿さんを計測したところ、10人中9人が、実年齢より若いという結果に。
香港の独特な町の形が、足腰の強さを生み出していたのだ!
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