放送内容

第1365回
2017.03.05
あっち向いてホイ の科学 人間科学

 昔ながらの遊び、「あっち向いてホイ!」。実はこの時、脳の中で驚きの現象が起きていることがわかり、今、数々の科学者も注目しているんです!そこで、遊びながら脳を活性化!「あっち向いてホイ!」を科学。

あっち向いてホイを科学的に見る

 神奈川大学認知科学専門・児玉謙太郎先生。3年程前、児玉先生は3人の研究者と共に、「あっち向いてホイ!における同期の達成」という論文を書いたスペシャリスト!
 「あっち向いてホイ」とはどういう遊びなのか?まずは、被験者2人が、あっち向いてホイを行う様子を観察。先生によると「じゃんけんのフェーズでは、最後のポンのところで二人の手の動きが同期しなければいけない。ポンの同期に向けて二人の動作のシンクロが始まる」とのこと。
 ここでいう“同期”とは、プレイヤーが互いに動きのリズムを揃えること。リズムを最後まで崩さないことが、遊びを成立させる基本になります。続いて、じゃんけんの勝負がつき、あっち向いてホイフェーズに移る時にポイントがあるそう。攻めのオフェンスは「あっち向いてホイ」と掛け声を出しながら指をさし、守りのディフェンスは、掛け声を聞きながら、頭を動かす役割。じゃんけんの勝敗が決まってから「ホイ」が終わるまで、わずか1.09秒!この瞬間、非常に複雑なことが脳と体とで起こっていると言えそう。
 それを探るため、脳神経の専門家・辻下教授に来て頂き、「あっち向いてホイ」をやっている人たちの脳波を計測。その結果を分析すると…赤い部分は、脳が活発に動いていることを示しています。じゃんけんのくだりでは、それほどの活動は見られません。しかし、じゃんけんの勝負がついた直後、脳全体が赤くなりました。じゃんけんのときと比べると、“あっち向いてホイ”の段階に入った途端、脳全体が活性化していました。

 これは、じゃんけんで勝敗が決まると勝った攻めのオフェンスは、掛け声を出しながら手を動かして、相手を引き込もうとします。じゃんけんに負けた守りのディフェンスは頭を動かし、相手の出した指の引き込みをかわします。つまり、対戦相手との同期は続けながら急に全く違う役割をしなければならなくなります。しかも、この「あっち向いてホイ」のフェーズになってから、 同時にたくさんやることが出てきます。この複数の課題を同時に行うことを「マルチタスク」といい、「あっち向いてホイ」は、子どものお遊びと思いきや、高度なマルチタスクを必要とする脳を活性化させる遊びだったんです。

ポイント1

“同時に別々のことをやる”というのは脳が活性化するとして既に認知症などの脳トレーニングの現場でも実践されているのだ!

あっち向いてホイが強い人と弱い人

 神奈川大学に協力をいただき、「強い人」と「弱い人」を選出する「あっち向いてホイ!選手権大会」を開催。学生たち34人に集まってもらい、 総当りのリーグ戦で対戦!一発勝負でひとり33戦ずつ行い、一番多く勝った優勝者と勝ちが少ない最下位者を決定します!
 1回終わったら、対戦相手交代。1番だけが動かずに一つずつ横にずれて行き、1周すると、ひとり33対戦が終わるという仕組みです。
 33戦、全ての試合が終了!学生たちの結果を集計。一番多く勝った優勝者は、33戦中24勝、神奈川大学3年生の勝治さん!
 そして、11勝の同率最下位でビリ対決でも惨敗だった東海大学大学院2年生の鹿島さん!
 「あっち向いてホイ」が強い人と弱い人、一体どんな違いがあるのか!?徹底的に調べるのは、脳神経の専門家・辻下教授!眼球運動装置開発会社・藤井さん!プレイヤーの動きを観察する心理学者・串崎教授!脳波測定器と眼球運動測定器を装着し、3人の専門家があらゆる角度から観察します。優勝者と最下位者で勝負しながら計測開始!チャンピオンはすぐさま2勝。最下位鹿島さん、全然勝てません。結果は当然チャンピオン勝治さんが8対3で圧勝!
 この結果は、脳波にも明らかな違いとなって出たんです!比較のため、順位がちょうど真ん中だった男性の脳波も計測。“あっち向いて”と“ホイ”、それぞれの瞬間の脳波が注目ポイント。
 強い人の場合、“あっち向いて”という準備段階のときは、前頭葉が集中した活動をして、そのあと“ホイ”と動かすときには、運動野のほうが働くという形で、脳の部位の活動もメリハリがありました。今やるべきことにだけ集中して焦点を当てているような脳の活動が見られたのです」これは熟練したスポーツ選手のような動きなのだそう。

 一方、最下位だった男性の脳波は、あっち向いてとホイ、それぞれ脳が強く全体的に活性化しすぎていました。これは、判断にためらったり、混乱しているときの状態だとのこと。相手の動きを冷静に見られていない可能性が高かったのです。辻下先生曰く、脳をメリハリよく使えるのは注意力や集中力が高まっている状態なので、こういう力を養えば仕事や勉強がはかどる、本や新聞が早く読める、忘れ物が少なくなる、といった普段の生活にも役立つことがいろいろあると考えられるそうです!

ポイント2

あっち向いてホイが強い人は、脳をメリハリ良く使えていたのだ!

あっち向いてホイ!強さのヒミツとは!?

 眼球運動計測、アイトラッキングの結果を見ると、強い人は、頭を動かす前、相手の手ではなく顔を見ています。ところが、弱い人の場合、相手の手の付近を見ています。これで指につられて向いてしまうことが多かったと考えられます。
 続いて、指をさすオフェンスの時を比較。強い人はじゃんけんのとき、相手の手を見ていて、指をさすときは、顔をしっかり見ています。また、指す手を素早く相手の視界に持っていき、ピタッと一度固定してから指をさしています。これは眼球運動計測の藤井さんが言う“ロックオン”!

 一方、最下位鹿島さんの手の動きは「あっち向いて」から「ホイ」にかけて、一度も手が固定されることなく流れてしまっています。実はこの手の動きが、相手の心理に影響するのだといいます。
 「あっち向いてホイ」に強い人の特徴をまとめると、「大きな声で掛け声を出し自分のペースを作る」「オフェンスの時に指は相手の視界でロックオン」「ディフェンスの時に相手の指は見ない」でした!

ポイント3

あっち向いてホイの強い人の特徴をマスターすれば、強くなれる、つまり、脳をメリハリよく使えるようになれるのだ!