第1375回 2017.05.14 |
○○すぎる動物 の科学 [Part3] |
地上の動物 |
ふしぎな生態をもった数々の珍獣たち。これまで番組では、クチバシが大き過ぎる鳥「オニオオハシ」や…体が小さ過ぎる動物「トウキョウトガリネズミ」などを取り上げてきました。そして!これらの動物は…ただ見た目がユニークなだけでなく、科学の可能性を秘めていたんです。
今回も、そんな科学のふしぎが詰まった◯◯過ぎる生き物たちをご紹介!今回の目がテンは…ちょっと気になるアニマルシリーズ「○○すぎる動物たちパート3」です!
カメレオンの体の色は周囲の色に合わせて変化する?
数多くの珍獣のなかで、最も有名な生き物といえば…カメレオン。ヘビやトカゲ、イグアナと同じ爬虫類の仲間なんです。その特徴について、爬虫類の専門家・京都大学の疋田努先生に聞いてみると…疋田先生は「カメレオンは特徴がありすぎるくらいの動物で、誰が見ても、これはカメレオンだと分かるような特徴がたくさんある」と言います。しかしその一方で・・・常識で思われてるのとは、かなり違う生き物だそうです。
そこで、まずは後藤アナが動物園でカメレオンを観察します。しかし、後藤アナは大の爬虫類嫌い…。今回、特別にカメレオンに触れ合うことができたのですが、まったくリポートできず…。
そこで、疋田先生にカメレオンの特徴について聞いてみると、先生は「カメレオンは元々、木の上を歩くようになっているので 手足の形が全然違う。指が対向していて、サルや人と同じように物をつかめるようになっている」と解説。爬虫類の多くは、手足が平らなためモノをつかむことができませんが、カメレオンだけはそれが可能なんです。そのため、ツルツルした金属製の棒にも、しっかり手をかけ登ることができるんです。これが、カメレオンの意外な真実の1つ…「爬虫類なのにモノがつかめる!」。
続いて…カメレオンと聞いて思い浮かべるのが…皮膚の色を自在に変え、背景に溶け込んでしまうまるで忍者のようなイメージ。そこで、カメレオンを色のついた箱で覆うとどうなるのか?実験です。もしも、どんな背景にでも溶け込めるのならば、箱の色に合わせて体の色が変わるはず。さっそくフタをして…刺激を与えないよう、5分間観察。すると…真っ赤になるどころか、ほとんど変化していませんでした。
その後、さまざまな色を試してみましたが…いずれも、忍者のように劇的に色が変わることはありませんでした。では「カメレオンは色が変わる」というのは、単なる都市伝説に過ぎないのでしょうか?
疋田先生によると、カメレオンの色の変化を観察することができる方法があると言います。それが・・・紙に覆われて光が当たらなくなった部分の皮膚の色が変わるというんです!2分後、紙を外してみると…なんと、黒い紙で覆われ光が当たらなくなった部分が鮮やかに変色!その結果、光の当たっていた部分が文字に!ところが…しばらくすると、文字がだんだん消えていきました。
これについて疋田先生は、「体の表面の皮膚に光があたってるかどうかというのを感じて、その刺激で体がバラバラに反応して、部分によって色が変わるって言うことが起きる」と解説。
カメレオンの色は、皮膚に当たる“光の量”で大きく変わるのだ!
カメレオンの舌を研究して“驚きのメカ”が誕生!?
私たちがイメージする、カメレオンのもうひとつの特徴といえば…ぐるぐる巻きの長い舌を巧みに使って、エサを巻き取るというもの。
しかし…実はこれ、間違いなんです!では、一体どの様に舌を伸ばしているのか?観察してみると…普段のんびりとした動きからは想像できない速さで舌を伸ばします。スローカメラでよく見てみると…舌をまっすぐに打ち出して、獲物を獲っています。この時、獲物はカメレオンの舌に包み込まれ、そこから一瞬で口の中へ…。舌の先端は中空になっていて、獲物のカタチに合わせて変化するんです。
そして、この仕組みを応用し、ドイツの機械メーカーがあるロボットを開発。どんな複雑なカタチのモノでも、いとも簡単につかめるアームロボットです。そして、国内にもカメレオンの舌の動きに科学で迫った研究者が…!
それは、筑波大学大学院の望山洋准教授。望山先生は、カメレオンの舌を打ち出す、素早く打ち出す仕組みを、なんとか再現できないかと思い研究を始めました。そこで望山先生は、カメレオンが高速で舌を出す動きを調査。そして…骨格標本をみるとよく分かる、カメレオンの舌には軸となる「骨」が入っている、ということに注目。
実はコレが“速さの秘密”!獲物を見つけたカメレオンは、まず口の奥にしまわれている舌の骨を前へ移動させ、狙いを定めます。そして、カメレオンの舌の…真ん中あたりについている筋肉が発射の原動力。中心にある骨をぎゅっと締め付けます。すると舌の骨はヌルヌルしたコラーゲンに覆われているため…石けんを強く握ると飛んでいってしまうのと同じように舌先が前に滑り出し…舌の骨が定めた狙いへと飛んでいきます。これがカメレオンが獲物をとらえる仕組み。望山先生は、バネを使ったロボットというのをまず検討。それで瞬発力を出すような機工をそれを15個くらい試すなど試行錯誤を重ね、いくつものロボットを試作。そして分かったのが…バネを使ったロボットには限界があるということ。舌の部分を十分に伸ばすことが出来ませんでした。そこで望山先生は現在、空気圧を利用したメカを使っていると言うんです。空気圧を使ったカメレオンメカは、吸盤を打ち出して、見事離れた所のものをキャッチ!さらにバネを使って手元に引き戻します。また、落下するターゲットを磁石でキャッチする仕組みも開発しました。
さらに!望山先生は、舌先を打ち出す仕組みをさらに発展させて舌先の動きを変化させるということが出来るようになりました。これによって、舌先を直角に曲げたりするようなことが出来ます。奥にあるのが発射装置。手前にあるターゲットは壁に隠れているのでまっすぐ飛ばしても当てることはできません。しかし…飛んできた弾は急に進路を変えターゲットを直撃!上から見ると弾が直角に曲がっています。その秘密は…小さな“重り”。弾の重さ、ターゲットとの距離、曲げたい角度を計算し、重さがちょうど良いところでひもを通じて弾に伝わるようにしています。
カメレオンからヒントを得て、これまでに出来なかったようなロボットの可能性に挑戦しているのだ!
アンゴラウサギが人類の“薄毛の悩み”を解決する
真っ赤な目…そして、長い耳を持つモフモフすぎる生き物。この生き物の正体は、アンゴラという種類のウサギ。アンゴラウサギを飼育していると聞き、やってきたのは、体験型の牧場。繊維を取るために、毛の長い個体を掛け合わせるという改良をされた家畜のアンゴラウサギ。雑種のウサギと比べてみると、毛の長さが際立ちます。
色々な種類のウサギは、秋や春先に毛が替わり、その時に毛がごそっと抜けてしまうんですが、アンゴラウサギは季節の変わり目でも毛が生え替わらず、長い間伸び続けるのです。しかし、毛が長すぎると何かと不便なことも多いのでは…?牧場の担当者は「やっぱり伸ばしっぱなしで放っておくと、うさぎさん自体がどんどん毛玉だらけになってしまって、動きづらくなってしまう。」と言います。
また、夏の暑さにも弱いそうです。そこで、これからの暑さに備えて…牧場の方ご協力のもと、毛を刈らせてもらいます。そして10分足らずで…かなりの毛が取れました。では、品種改良までして手に入れたアンゴラウサギの毛は、いったいどんな特徴があるのでしょうか?繊維の専門家、獣毛総合研究所所長・丸茂征也さんに聞いてみると…丸茂さんは「アンゴラの毛はウールと比較して、保温性であったり、軽さに差があると言われている」と解説。
ウールよりも軽く暖かいというアンゴラ。その理由はなんなのでしょうか?
丸茂さんは「それはアンゴラの毛の構造に秘密があります。アンゴラの毛と羊毛を顕微鏡写真で見てみると、アンゴラの毛は中が空洞になっている」と解説。
さらに調べてみると…アンゴラウサギには人類の長年の悩みを解決する“あるヒント”が隠されていました!東京理科大学と共同研究をしている山本昌邦さんに聞いてみると、山本さんは「その天然にいる毛の長い動物を調べてみたところ、アンゴラウサギは遺伝子的にFGF5が働いていない。
FGF5が変容して働かない状態になっているということが分かった」と言うんです。成長期に入り生え始めた毛はどんどん伸びていきます。その後、退行期に入り成長が止まり。休止期に入って抜け落ちます。この退行期に入るきっかけを作っているのが「FGF5」という遺伝子。アンゴラウサギはこのFGF5を持っていないため、成長期の期間が普通のウサギより長く、毛が抜けず伸び続けモフモフになるというわけ。
一方で、FGF5が活発になりすぎると成長期が短くなり、太い毛が伸びる期間が短くなってしまうため、薄毛になるのです。山本さんたちの研究チームは、FGF5の働きを抑えるような成分を探す研究をしており、これまで3000種類ほどの植物の中から4つ、FGF5の働きを抑えるものを見つけることが出来たと言うんです。
アンゴラウサギが人類の悩み、薄毛を解決するヒントになっていたのだ!