第1406回 2017.12.24 |
重曹 の科学 | 物・その他 |
色々と慌ただしくなる年末年始。年の瀬、気が重いのがやっぱり、大掃除ですよね。そんな大掃除に活躍する万能お掃除アイテムとして一時期、大ブームになっていたのが・・・重曹。けれど、街の人に聞いてみると・・・重曹は汚れが落ちないというイメージの人が多数!しかし!正しく使えば、洗剤でも落ちない汚れもピカピカに!
今回の目がテンは、掃除も美容も料理にも!年末年始に使える重曹の科学です。
洗剤で落ちない汚れも落ちる“重曹”の正しい使い方
専門家が教える重曹の正しい使い方とは!今回教えて頂いたのは、横浜国立大学・大矢勝教授。今回は、一般のお宅にお邪魔して、大掃除の季節に役立つ、普段、あきらめていたキッチンの汚れ落としに挑戦!最初の「あきらめていたキッチンの汚れ」は・・・どうにも取れない鍋の底の頑固な焦げ汚れ。どれだけ頑固か、試しに台所用洗剤で洗ってみると、汚れはビクともしません。大矢先生によると「これは食品の成分のでんぷん、たんぱく質、それらが加熱によって変質したもの。鍋の底にへばりついてしまって、その間に洗剤液が入りにくくなっている」と解説。
では、どうやって落とすのでしょうか。まずは鍋に水を入れ、そこに重曹を溶かします。水500ミリリットルに対し重曹大さじ2杯が目安。そしてこれを火にかけ、沸騰するまで強火で。一旦沸騰すると、弱火でいいのでしばらく置いておきます。しばらく火にかけておくと・・・なんと汚れがはがれ、浮いてきました。さらに、割りばしで汚れをこすってみると…みるみるうちに汚れが落ちました。そしてあっという間にキレイになりました!洗剤でこすっても落ちなかった頑固な汚れが、重曹でいとも簡単に落ちたんです!では一体、どうして?
重曹の効果その1「アルカリ性」。
重曹を溶かした水は、アルカリ性でマイナスの電気を持っています。この時、汚れもマイナスの電気を持ちます。そこに、プラスの電気がひきつけられ、そのプラスの電気には、水分子がくっついてきて汚れと汚れの間に入っていきます。水分子が間に入り、汚れが柔らかい状態になって、落ちやすくなるんです。
そのため、洗剤では落ちなかった頑固な焦げ汚れを重曹は落とすことができたんです。
続いてのあきらめていた汚れは「電子レンジの中の汚れ」。このこびりつき汚れも重曹の得意分野!まずは布巾を水で濡らし、その布巾をこの電子レンジで温めます。こうすることで水を水蒸気に変え、汚れと(水分を)なじませて、こびりついているところに重曹ペーストでこすり取っていきます。使うのは、少量の水を混ぜてペースト状にした重曹。まずは、電子レンジの中の汚れに水分をなじませ、柔らかくするため、濡らした布巾を電子レンジで温めます。温める時間は、2分程度。そして、重曹ペーストを布巾に乗せ、汚れをこすりとってみると…確かに、ちょっとずつ薄くなっています。あんなにこびりついていた頑固な汚れが・・・キレイにとれました。恐るべし重曹パワー!
なぜ、頑固な汚れがきれいに落ちたのでしょうか?大矢先生によると「重曹のもう1つの大きな働き、研磨作用による」と解説。
重曹の効果その2「研磨作用」。
大矢先生は「重曹の粒は結晶が比較的ゴツゴツした形。それが汚れを剥ぎ取りやすい形になっている。そのため、それでこすると汚れが落ちやすい」と解説。さらに、重曹を使うメリットは、汚れが落ちるだけではないと言います。それは、“洗剤を使わなくて良い”というのが大きな利点になるそうなんです。食品を温める電子レンジの掃除を、人への害が少ない重曹でできるというのは、やっぱり安心ですよね。
重曹を正しく使えば、普段の掃除では落ちなかった汚れを、簡単に落とすことができるのだ!
重曹でお肌がツルツルに!?驚きの美肌効果!
重曹は掃除だけではなく、美容にも効果がある!?重曹の美容効果に詳しい専門家、国際医療福祉大学大学院・前田眞治教授を訪ねました。
前田先生によると、その方法は、50gの重曹をバスタブに入れるだけ!このお湯につかれば、温泉と同じ美肌効果があるというんです。そこで後藤アナの肌で実験。ほぼ同じ温度のお湯を2つ用意。片方には重曹を加え、腕を入れたときのそれぞれの触り心地を比較してみます。この状態で待つこと15分。なんと、重曹を入れた方の腕はヌメッとしていました。実はこのヌメヌメした感触こそが、古い角質や汚れが浮き出ている証拠。一体、どのくらい汚れが浮き出ているのでしょうか?それぞれのお湯から、汚れを取り出し皮脂汚れに反応して紫色に変化する試薬をかけます。まずは重曹が入っていなかったお湯の方を見てみると・・・少しだけ汚れが落ちています。紫色の部分が落ちている汚れ。一方、重曹入りのお湯では・・・なんと、重曹入りのお湯は、たくさん汚れが落ちていたんです。比べて見ると、差は歴然!
なぜ重曹を入れると、こんなにも汚れが落ちるのでしょうか。前田先生は「重曹というのは皮膚にある角質の汚れとかタンパク質などに反応して乳化という作用が起こる、重曹には石けんと同じように油分を巻き込んで皮膚から剥がしてくれる。そういった作用がある」と解説。
古い角質や皮脂汚れは、アルカリ液が混ざると石けんと同じ物質に変化します。石けんは水に溶けやすいので、汚れが水でふやけて落ちやすくなるのです。
実は、日本三大美肌の湯と名高い佐賀の嬉野温泉も重曹泉。
ただし注意点が!前田先生は、「この作用は、しょっちゅう入っているとかアルカリが非常に強いと皮膚をはぎすぎてしまって肌荒れの原因になってしまうので、週に一回くらい、重曹のお風呂に入るということが良い」と解説。美肌にも効果のある重曹。さらに重曹は、冬場の女性のお悩みも解決してくれるんです。それは・・・くさい足の匂いがついてしまうブーツ。これに重曹の消臭効果が有効だというのが、におい研究のスペシャリスト、東海大学の関根嘉香教授。関根先生によると、重曹を水で溶かして、それをスプレーすることによって、匂いを減らすことができると言うんです。100ミリリットルの水に小さじ1杯の重曹を加え、よく混ぜた液を作り、ブーツにスプレーするだけ。たったこれだけで本当に効果があるのでしょうか。スタッフが2週間履き続けてクサ~くなってしまったブーツで試してみましょう。スプレー前の臭いは・・・嫌な匂いがあります。これに、重曹スプレーをかけてみると…なんと臭くありません!
でもなぜ、ニオイが消えたんでしょう?これについて関根先生は「足のニオイは、酢酸とかイソ吉草酸とか酸性の物質が多く含まれている。重曹は弱アルカリ性なので中和反応によって、ニオイを抑えることができる」と解説。足のニオイの原因となる酸性の物質は、揮発しやすいため臭うのですが、アルカリ性の重曹が中和すると揮発しにくい物質に変化、臭いがしなくなるんです。
さらに、この中和効果は中高年の悩み、加齢臭にも効き目が!
40代男性3人から重曹スプレーをする前と後で加齢臭の元となる成分を採取、関根先生に分析していただいたところ・・・加齢臭の原因となるペラルゴン酸の量が明らかに減っていたんです。これについて関根先生は「これはおそらく、ペラルゴン酸は酸なので重曹が中和してニオイが減ったんだと思う。しかし2時間後には、元の値に戻ってしまった。やはり抑えきれないくらいニオイが出てしまうと元に戻ってしまう。やはり気になるときにスプレーするのが一番良い」と解説。
重曹には、気になるニオイの消臭効果もあったのだ!
重曹で硬いステーキ肉が柔らかくなる!?
値段が安いお肉は硬い場合が多い・・・。そんなお肉を、柔らかくジューシーに食べやすくする効果が重曹にはあるというんです。その効果を見せてくれるのは!目がテンではおなじみ、食のサイエンティスト露久保美夏先生!方法は簡単!お肉を重曹水につけるだけ。これについて露久保先生は、「重曹はお肉のタンパク質、筋肉の筋繊維、そこに働きかける。筋繊維のつながりを緩めて、そこに水もより入りこんでくれるので、焼いた後も柔らかいお肉の焼き上がりになる」と解説。
そんな重曹の効果は、干したスルメイカでよくわかるそうで・・・スルメを重曹水に一晩つけると・・・なんと!コチコチの干物だったスルメが、水分を吸って、生のイカのようになったんです!重さを測ってみると、約70ミリリットルの水分を吸っていたんです。
では早速、ステーキ肉を重曹でジューシーにしてみましょう!用意したのは100グラム約180円の輸入肉。500ミリリットルの水に小さじ2杯の重曹を溶かします。そしてこの重曹水にお肉を30分間つけ、あとはこのお肉を焼くだけ。比較のため、そのままのお肉も同じ時間焼きました。焼き上がりには大きな違いはありませんが、果たして、硬さに変化は出たんでしょうか?2つを食べ比べてみると…確かに重曹につけたステーキの方が柔らかかったんです。
でもステーキ肉を重曹水につけると、うまみが外に出てしまうのでは?これについて露久保先生は、「水に溶け出しやすい成分は多少は水の方に溶けるが、食べた時に感じるほど味が薄くなるとかうま味が減ったということではなく、それよりもむしろ重曹水を使って、水分をしっかり含ませて柔らかくした物の方が食感のおいしさが増すので、食べた時の感じるおいしさの得られる効果は大きい」と解説。
重曹には、食材をジューシーにする効果があったのだ!