第1413回 2018.02.18 |
野菜くず の科学 | 食べ物 |
野菜の皮などには、人の免疫機能を高めるファイトケミカルという成分がある。そんな素敵なものを捨てるなんてもったいない!そこで捨てちゃう野菜くずで免疫力をアップ!
ファイトケミカルとは?
捨てちゃう野菜くずに含まれているという、ファイトケミカルの正体を探るため食品に含まれる機能性成分を研究する神奈川工科大学の清水秀信先生を訪問。ファイトケミカルとは、よく聞くポリフェノールやカロテン、トマトのリコピンなど、野菜などの植物に含まれる成分の総称。普段食べている部分にも含まれていますが、紫外線などから身を守るために皮などの外側に多いんだそうです。
ファイトケミカルは色んな作用があるが、1つは抗酸化作用。酸化による人間の老化を防いだりする役割もあることがわかっています。体の酸化とは、取り入れた酸素の一部が“活性酸素”として残ること。活性酸素が増えすぎると、細胞を傷つけ様々な病気を引き起こす原因となります。しかし、抗酸化成分は、この活性酸素を取り除き、体の酸化を防いでくれます。ファイトケミカルは、そんな抗酸化作用をもっているんです。
食べづらい皮を食べる一つの方法は「野菜を煮る」。スープにして摂取します。先生によると、野菜くずを20分間、水から煮込めばいいだけ。では、どれくらいファイトケミカルが溶け出しているのか検証。野菜の普段食べている部分と普通は捨ててしまう野菜くずを用意。それぞれを煮て可食部のみのスープ野菜くずのみのスープを作りました。活性酸素を調べる試薬をそれぞれのスープを中に入れ検証。色が薄くなれば抗酸化成分が働き、活性酸素を取り除いたということ。
まずは、野菜の普段食べる部分のスープ。多少薄くはなりましたが、大きな変化はありませんでした。野菜くずのスープは一瞬で、青い液体が無色透明に!これが、ファイトケミカルの抗酸化成分が働いた証です。
でも加熱してスープにする必要があるのか?今度は生の野菜くずを絞ったものとも比較。生の野菜くずを絞ったものを活性酸素の試薬の中に入れると、色はあまり変わらず。
加熱してスープにすることで、野菜くずから多くのファイトケミカルが出ることがわかりました。ファイトケミカルは、細胞の中に含まれていて、生では出てきにくい成分。加熱しスープにすることで細胞壁が壊れ外に出てくるんです。
捨てちゃう野菜くずのスープには、免疫力を高める抗酸化成分がたくさん含まれていたのだ!でも味はエグみがあるのだ!
美味しい野菜くずスープの作り方
抗酸化作用があるファイトケミカルが多く溶け出している野菜くずスープ。これを美味しく、簡単に作る方法はないんでしょうか?そこで、野菜の有効成分について研究する、東京海洋大学の松田寛子先生と一緒に、美味しく簡単な野菜くずスープ作りに挑戦!松田先生によると、スープに向いている野菜は、にんじんやトマト、かぼちゃなど色鮮やかなものが多く、これらは甘みが強い野菜です。
鮮やかな色はついてはいませんが、じゃがいもの皮も向いている野菜。じゃがいもの皮についている実のでんぷん質が甘みにつながるんだそうです。一方、スープに向いていない野菜は、キャベツやカブの葉、ピーマンなど緑色の野菜。
たまねぎやにんにくなどの皮も、苦味が出るので向きません。でも全く使えないわけではないんです。スープの出汁は、コクとかアクセントがちょっと必要になります。甘味だけだとコクが出ないことが多いため、向く野菜向かない野菜を7:3の割合で入れると美味しいスープになるそう。
次は煮る作業。先生のオススメは炊飯器を使うこと。楽ちんに作れる方法を教えてもらいます。スープに向く野菜は、甘みを出すために小さく切って炊飯器の中に。逆に向かない野菜は、苦味を抑えるため大きめのサイズで入れます。そしてオリーブオイルを大さじ1杯入れます。これは脂溶性のファイトケミカルを出やすくするため。
さらに料理酒を大さじ一杯。野菜の臭みを消す効果があるそう。
あとは、野菜が浸るくらいの水をいれて炊飯器の炊飯ボタンを押すだけ。待つこと1時間、野菜くずとスープを分ければ完成です。
野菜の甘味とコクのあるスープが出来ました。炊飯器は最初の温度帯を4,50度に保たれてから100度にどんどん加熱されていきます。その反応の中で、甘み成分のアミノ酸やうまみ成分のグルタミン酸なども多く含まれていきます。そして苦味成分や辛味成分がアクセントになるんです。
7:3の黄金比を守り、炊飯器を使えば、野菜くずで楽々、おいしいスープを作ることができるのだ!
野菜くずでオリジナルパスタ
野菜の普段食べずに捨てちゃう部分や野菜くずスープを使ってオリジナルパスタ料理に挑戦!調理学の松田先生にも協力してもらいました。
用意したのは、大根の葉やにんじんの皮などの野菜くず。そしてカブの葉っぱ。白い実の部分よりもベータカロテンが約3000倍多いんです。他にも、ほうれん草の根の部分には貧血を防ぐ効果があるマンガンが豊富に含まれています。それでは、クッキングスタート!まずは、大根の葉を細かく刻み、ほうれん草の根元も食べやすい大きさに。
そしてパスタは蒸しパスタで調理!今回は水のかわりに抗酸化成分たっぷりの野菜くずスープを出汁に使います。
スープを沸騰させ、そこに半分に折ったパスタを入れます。そしてパッケージに書かれているゆで時間、蒸していきます。あとは、通常のペペロンチーノの作り方と同じ。カットした野菜くずも炒めつつ、塩で味を調えます。そしてここで再び野菜くずスープが登場!フライパンに入れて具も煮込んでいきます。蒸しあがったら、パスタと具材を合わせ、最後にしらすをかけて完成!
美味しさのポイントは野菜くずスープ!ファイトケミカルは料理にしても壊れないので、野菜くずスープの抗酸化作用を失うことなく、いろんな料理に使うことができます。
野菜くずスープはパスタだけではなく味噌汁や炊き込みごはん、うどんなど色んなことに使えるのだ!