第1483回 2019.07.07 |
珍しい部活 の科学[Part2] | 物・その他 植物 |
日本全国にはあまり聞いたことのない珍しい部活がたくさんあるんです!珍しい部活第1弾では愛媛県にある、日本で唯一の“水族館部”を取材。そして今回 第2弾では、都内にある“折り紙研究部”と“雑草研究部”に注目!
折り紙研究部では、高校生が折る“超複雑系の折り紙”を徹底調査!そして、雑草研究部では、校内の雑草調査に密着!
今回の目がテンは、珍しい部活 第2弾です!
折り紙研究部とは?
訪れたのは、都内にある超進学校、開成学園。なんと東京大学合格者数、38年連続全国1位。そんな男子校にある折り紙研究部とは、一体どんな部活なのでしょうか?部員は中学生と高校生を合わせておよそ20人。では早速、折り紙研究部の活動の様子を見せてもらいます。
中学3年生の藤井くんが折っていたのは、ジャバラが特徴的なフェニックス。そんな藤井くんに折り紙の面白さについて聞いてみると、「折る作業を繰り返すだけで、立体化するところ」。
折り紙研究部が作る折り紙は、1日では折れないハイレベルなもの!折り紙作家の作品が載った専門書を参考に1枚の紙を使って、ハサミで切らずに複雑な作品を折っています。
部長の大澤くんが2週間かけて折った、愛着のある作品が“ヤマセミ”。
こちらは折り紙作家・森末圭さんのもの。羽の毛の様子を表現できるように、段折りという筋の折りを大量に入れているところが特徴です。大澤くんは、折っていくことによって構造がわかっていくことが好きなんだそうです。
でも、そもそも生徒たちはどうして折り紙研究部に入ったのでしょうか?高校3年生の金子くんは、小学生の時に文化祭で折り紙研究部の作品に感動し、折り紙研究部に入りたくて開成に入ったそうです。
続いては、幼稚園の頃から折り紙を始めた折り紙歴10年以上の中村くん。なんとオリジナルの折り紙作品を作っているんです。
見せていただいたのは、トラ、ドラゴン、恐竜のトリケラトプス。この中で特に難しかったのは、構想2週間、折るのに6時間かかったという“トラ”。なんとこちらの作品は、表と裏の色を利用して、1枚の紙から折っているんです。
ちなみに中村くん、すごいもの折ってチヤホヤされたい!いつか展示して「すごい」って言われることが原動力になっているそう。
そして、続いては折り紙研究部の中でも一番折り紙が上手いと評判の高校3年生の石橋くん。こちらは折り紙作家の宮本宙也さんが創作した作品“死神”の展開図。
展開図とは折るために必要な折り線のみが書かれたもので、これを参考にしながら制作します。展開図を元に作った作品がこちら。
顔のパーツの1つ1つや指先まで細かく作られています。
展開図は折る手順が書かれていないため、推測しながら折る、高度な折り紙なんです。そして、石橋くんがもっとも苦労した作品は、1年かかったという「龍」。こちらは折り紙界では、世界一難しいと言われている作品。
展開図はかなり細かく書かれています。
1辺1.8m四方の大きい紙を使って折っているのですが、折り方が複雑すぎるため、完成品は机の上にのるくらいの大きさになります。一番苦労した点は、合計1200枚のウロコ。全て1枚1枚手で折り込んでいくのに、なかなか時間がかかったそうです。
折り紙研究部は、このような作品を年に1度行われる文化祭や展覧会に向けて制作しているんです。普段は個人で折っている折り紙ですが、文化祭では、部員総出で巨大な作品を作るのが恒例。何枚も紙を貼り合わせて、1辺数mもの大きな紙を作り、みんなで折り紙を折っていきます。夏休みに3日間の合宿、それと文化祭の2週間前から1日2、3時間折り続け、ようやく完成します。
さらに、折り紙研究部ならではのマニアックな話も。吉田くんが教えてくれたのがミウラ折り。
ミウラ折りとは、東京大学の名誉教授で、航空宇宙工学の専門家、三浦公亮さんが考案したもの。折り線をジグザグにすることで、折り目が重ならなくなり、開閉が簡単にできる便利な折り方。1994年に打ち上げられた「宇宙実験・観測フライヤー」では、太陽光パネルの開閉にミウラ折りが採用され、見事に成功しました。この他にも缶など、実は身近なところで折り紙の技術が使われていたんです。
折り紙研究部の滝川くんは、将来的にこういった折り紙を生かせるような仕事もできたらいいなと考えているそう。
折り紙研究部は1枚の折り紙に青春をつぎ込み、思い思いの作品を折っていました。
雑草研究部・雑草の魅力とは?
都内有数の進学校、日比谷高校の雑草研究部。主な活動は、校内に生える雑草の調査と研究です。雑草研究部では、人が育てていない自然に生えている植物のことを雑草と呼んでいます。
専門家によると日本国内には、450種類ほどあると言われていますが、こちらの高校には雑草だけで300種類以上あるといいます。しかし、なぜ日比谷高校には雑草が多いのでしょうか?
江戸時代。日比谷高校がある永田町周辺は、大名屋敷がある自然豊かな場所でした。その自然が今もなお残り、花粉が飛び交っているため、日比谷高校は雑草が多いんです。ということで早速、部長の大洞さんと一緒に、校内にある雑草を観察しにいきます!
大洞さんが見つけたのはクローバーとカタバミ。四つ葉のクローバーで知られているクローバーとよく似ているカタバミは、葉の形に大きな違いがあります。クローバーの葉は丸く、カタバミはハート型。
大洞さんが、雑草の中で一番好きだというカタバミ。カタバミが可愛いいと思えるほどだそう。そんな、大洞さんが可愛いというカタバミとは一体どんな雑草なのでしょうか?
カタバミの名前の由来。それは、夜になると葉っぱが閉じ、葉っぱの片方が食べられてしまったように見えることから、片喰になりました。夜になる時のカタバミを観察してみると、確かに葉の片方が食べられたように見えます。
これは放射冷却によって、葉から大気中に熱が逃げるのを防ぐために行なっていると言われています。
続いて観察するのは、クローバー。四つ葉は突然変異の他に“傷がつく”など外的要因で生まれることがあります。クローバーが成長する春から夏にかけて、茎の先端に“原基”という葉っぱの赤ちゃんが育ちます。通常は、成長するにつれて3枚に分かれ、三つ葉のクローバーなるのですが、何らかの外的要因によって傷が付くと、3枚に分かれるはずが、4枚に分かれてしまいます。
これが成長すると四つ葉のクローバーになるんです。
大洞さんによると、この場所は四つ葉が多い場所。実はこの場所は陸上部の練習にも使われ雑草がよく踏まれるため、四つ葉のクローバーが多いそう。部員の皆さんと一緒に四つ葉を探してみると…本当に四葉が見つかりました!
雑草研究部では、このほかにも年に2回、12月と2月の研究発表に向けて、雑草の研究を行っています。学年ごとにテーマを決めて行うのですが、2年生のテーマは“茎の強度”。強度を“立った状態で葉などを支える強さ”と定義し、セイタカアワダチソウ、ススキ、スギナなど校内で多数採取可能な雑草を使用して風に倒れにくく、茎が強い植物の共通項を研究しています。その茎の構造が、強度の高い建築作りの応用につながればいいと考えているんです。
続いて行う活動は雑草の調理。観察するだけでなく、調理し、食べることで知識だけでは得られない新たな一面を実感できるというんです。時には家で雑草を調理し、家族に食べてもらうこともあるそう。
今回、作るのはドクダミ茶。ドクダミについて説明をしてくれるのは、雑草の匂いが大好きだという2年生の岸田さん。学校内に大量発生し他の植物を駆逐するドクダミ。これを活用できないかと考えたんです。
過去に研究をした先輩は、実験を重ね、ドクダミには他の植物の発芽を抑制する作用があることを確かめました。そこから先輩は、化学薬品を含まない除草剤を作れるのではないかと考えたのです。
一方、自称匂いフェチ、ドクダミが大好きな岸田さんはお茶にして活かそうと提案!ドクダミには強烈な匂いを発するアルデヒド類が含まれているんですが、約1週間日干しして乾燥させると匂いが消えます。干して酸化させることでアルデヒド類の作用がなくなり匂いが気にならなくなるんです。
乾燥させたドクダミを、水を張った鍋に入れ沸騰しない程度の温度で30分ほど煎じていきます。そして30分後、飲んでみると、なんとハーブティーのよう!香りが爽やかなドクダミ茶が完成しました!
初めて飲んだ部員にも大好評。
雑草研究部は、観察するだけでなく雑草を調理し食べることでより深い知識を探求していたんです。