放送内容

第1485回
2019.07.21
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画「目がテンかがくの里」!今回は里山再生プロジェクト!里山のスーパーマン西野さんが、またしても素敵なものを作ってくれました!そして、木材利用の専門家、村田先生が炭焼きに初挑戦!間伐材でかがくの里がますます素敵になっちゃいます!

素敵な屋根付きスペースを作る!

 5月中旬、去年、間伐材を使って建てたあの小屋で、嬉しいサプライズが!お馴染み、里山のスーパーマン西野さんが、小屋の赤い巣箱に、鳥が出入りしていると言うんです。そこで、小屋の中からカメラで観察してみると…本当に来ました!黒いネクタイ柄のシジュウカラという野鳥です。

 エサをくわえているので、中にヒナがいるのかもしれません。そこで親鳥がいない時を見計らい、内視鏡カメラで中を覗いてみると、やっぱりたくさんのヒナがいました!すでに羽毛も生えそろい、あと数日で巣立ってしまうみたいです。

 そんな、新たなお客さんとの出会いもあったかがくの里。その裏山で、阿部さんと西野さんが、まだ整備されていない手つかず場所の間伐を行うことになりました。細いヒノキとスギが隙間なく生えて、荒れ放題になっており、なかなか手ごわそう。阿部さん、一人で間伐に挑戦。師匠、西野さんが見守る中、ヒノキを伐ります。今年、特殊伐採などさまざまな修行をした阿部さん。アドバイスなしでチェーンソーを入れていきます。師匠からもOKサインをもらい、この日は合計10本のヒノキを間伐しました!

 すると西野さんが、この間伐材を使って、あるものを造ると言いだしました。それは、雨降った時に作業が出来る、もう一つの小屋。雨用の作業小屋を造ろうと言い出したのには、実は理由がありました。さかのぼる事、去年の収穫祭前日。大雨が降り、調理科学の専門家露久保先生との下準備が大変なことに。西野さんは、簡易テントではなく、雨でもしっかり作業できる屋根のあるスペースを造ろうと提案してくれたんです。伐りたての木は水分が多く、すぐには使えないので、里に持ち帰り、しばらく乾燥させます。すると西野さん、いきなり木の皮を剥きはじめました。実は、虫の大好物は樹皮の中にある樹液。だからすぐに、皮を剥いておかないと、木が虫に食べられちゃうんです。

 今は、木が水を一番吸い上げている時期なので、皮をむくと、びちょびちょに濡れています。この状態で、使えるようになるまで、およそ3週間待ちます。翌日、西野さんは再び裏山へ。枯れたクリの木を使って、また何か作るみたいです。枯れていたら、中が腐ったりしていそうなものですが、実はクリはとても腐りにくい木。なので、家の土台や線路の枕木に使われてきたそうです。腐りにくい理由は、カビを防ぐタンニンという成分があるから。クリはタンニンをとても多く含んでいるのだそう。
 西野さん、クリの木を、里のある場所に打ち込み始めました。そこに、同じく皮をむいたクリの木を乗せ、固定。小屋から続く、オシャレなクリの木の柵が完成しました!

 そして、5月下旬。ヒノキの乾燥が終わり、いよいよ作業スペース造り開始!まず、西野さんが持ち出したのは、ガスバーナー。そして、柱にするヒノキを焼き始めました!焼くのは、土に埋めて固定する柱の根元だけ。なぜ焼くのでしょう?木を腐らせるのは木材腐朽菌という菌。土に埋める部分は、土の湿り気で腐朽菌が繁殖しやすいんです。こうして表面を焼いておくと、菌が侵入しにくくなるんだそう。

 柱の根元を焼き終えたら、重機で掘った4つの穴に焦げた部分が土に埋まるようにして立てていきます。4本とも土で固めたらOK。翌日、小屋作りでもお世話になった大工の棟梁に再び手伝ってもらい、柱を横につなぐ梁(はり)を取り付けました。すると、阿部さん、なにやら木材を渡されました。実はこれ、束(つか)という重要なパーツ。棟梁いわく、この束の上に棟(むね)が乗るのだそう。束も棟も屋根の一部を示す専門用語。棟は屋根の一番高い部分のことで。束はそれを支える部分です。

 つまり、2日目にして早くも屋根造りが始まったということです。続いて、垂木と呼ばれる斜めの骨格を全部で16本入れれば、もうだいぶ小屋の姿が見えてきました!
 そして作業3日目には、もう最終工程となる屋根を張る作業を行います。3時間の作業を終えると、キャンプ場にありそうな、立派な屋根付き作業スペースが完成。これで雨が降っても、料理できちゃいます!

 さらに西野さんは、これだけでは止まらず、小屋から迂回せずに畑に行けるようにと、間伐材のヒノキにクリの木で手すりを作り、橋を作ってくれました! しかも、下に降りる急斜面にオシャレな階段まで。かがくの里、どんどん素敵になっています!

炭づくりに挑戦!炭ができる仕組み

 今年の始め。木材利用の専門家、村田先生が間伐材を使って新たに炭焼きに挑戦したいと言い出しました。元々、薪や炭などの燃料を得るために使われていた日本の里山。かがくの里山も昔はそうだったので、炭に向いた硬い広葉樹が沢山生えています。
 というわけで、村田先生と共に炭づくりに挑戦です!そもそも炭とは、木の主成分である炭素、酸素、水素から、主に炭素だけ残したもの。でもどうやって、木を炭にするんでしょう?

 6月中旬、お試し実験として村田先生が用意したのは、細かく割った竹とアルミホイル。普通に焚き火をしてみると、全部燃えて灰になってしまいます。そもそも木を燃やすと、どうして灰になるのでしょうか?木の主成分である酸素と水素は、熱によって結び付き、水になって蒸発していきます。その時、炭素も空気中の酸素とくっついて燃えてなくなり、灰だけが残るんです。つまり、炭素だけを残して炭にするためには、燃やした時、炭素が空気中の酸素と結びつかないようにする必要があります。
 その方法が、燃料としての竹をアルミホイルでくるんで空気に触れないようにして同じような温度にしてみること。そうすると、炭になるはずだと先生は言います。焼き芋の様にアルミホイルで竹をくるんで、空気に触れないようにして、火にいれて熱を加えれば、竹の中の酸素と水素は、水蒸気や水素ガスになって蒸発し、炭素だけが残るはず。待つこと10分。中を開けてみると…確かに炭ができていました!まさに水素と酸素だけが飛び、炭素が残っている状態。灰になった竹と比べると全く違います。

 意外と簡単にできた炭づくり。いよいよ本格的な炭の大量生産を目指すのですが、たくさんの木を一気に炭にするのは非常に難しいそう。果たして上手くいくのでしょうか。

炭焼き窯で竹炭作り!

 木材利用の専門家、村田先生と取り組む炭焼きプロジェクト。まずは、炭を大量につくるための"炭焼き窯"作りに挑戦です!
 今回は、小さいサイズでの炭焼きに挑戦してみることに。小型炭焼き窯を作るのは・・・またまた西野さんに頼っちゃいました!西野さん、元は板金工なので、こんなのはお手の物。オイル缶に、サクサク穴をあけ、そこに20度くらいの角度で煙突を取り付けます。この中に、炭にしたい木材をいれます。今回は、近所に落ちていた枯れた竹。薄いから熱が均等に加わりやすく、最初の実験にはピッタリです。

 続いて穴を掘り、煙突付きオイル缶を入れます。最後に新聞紙で周りを囲み、土で埋めます。これが炭焼き窯になるのでしょうか?まず、炭にする竹の上で火を焚き、熱くします。火が落ち着いたところでフタをして、熱が缶の中に行きわたるようにします。ただし、完全密閉してしまうと酸素がなくなり、熱源となる火まで消えてしまいます。だから、フタに穴をあけ、熱源となる火が燃え続ける程度の空気は送らないといけませんが、送り込みすぎると、炭にしたい竹まで燃え尽き、灰になってしまいます。微妙なさじ加減で空気を送って、竹が燃えないよう、缶の中を500度くらいに保つ必要があるのだそうです。

 さっそく実験開始!まず、火を焚くための木を、炭にする竹の上に乗せ、火をつけます。火に接している竹の部分が、ある程度燃えてしまうのは仕方ないのだそう。火が落ち着いたところで蓋をし、火が消えないよう、煽ぎながら土で蓋も密閉します。すると、煙突から真っ白の煙が出始めました!これは、熱がうまく回ってくれている証拠。煙突内部の温度が上がっていけば、煽がなくても、空気の吸い込みが起こるようになります。
 阿部さんが必死に煽ぎ続けること30分。煙突も熱くなりそろそろ吸い込みが起こるはずですが…うまく吸い込んでくれず、逆流を起こしています。その時、この様子をみていた小屋造りなどでお世話になっている大工の棟梁が…「煙突が短すぎる。これの倍ないと引っ張っていかない」と指摘。そこで、西野さんと棟梁に手伝ってもらい、煙突を伸ばしました!すると、一気に吸い込みを始めてくれました!煙突を長くすると、移動する空気も多くなるので、引き込む力が強くなるんだそう。

 こうなれば、あとは火の番。1時間ボンヤリ待ちます。そして…缶の中の温度が350度を超えてきました。もう炭ができ始めているはず!白い煙が青くなったら、できあがりの合図なんだそう。さらに1時間後待つと、煙の色に変化が!1時間前の煙と比較してみると、確かに煙が青くなっています!

 こうなったら、煙突を取り外し、火を止めて土に埋めます。2時間放置しておくと、いよいよ中の温度は200度以下に。窯を取り出し、蓋を取り外すと…燃料として灰になったものの下には、炭になった竹がいっぱい!炭らしい乾いた音が響きます。

 さらに、灰になった燃料部分をどかすと、その下はほぼ炭になっていました!
 村田先生は今後、広葉樹を使った本格的な炭を作ってみたい、と展望を語っていました。木を使った炭づくりはさらに難しく、時間もかかり、火の調整も難しいみたいです。里の炭焼きプロジェクト、まだまだ続きます!